落石の多い林道 |
帰省ついでの登山として、かねてから気になっていた山の一つである恵那山に念願かなって登山を試みた。この恵那山は日帰り登山が困難な山という印象であったが、2001年10月に広河原ルートという日帰り可能な最短コースで登れるルートが開通されていたことをインターネットで知った。また恵那山は鍋を伏せたような形で遠くから見てそれと同定できる特徴のある山容で、幾つかの山頂から、山麓から眺めていた憧れの山だ。そして今回、やっと登る機会を得て、恵那山へ登ることになった。
トンネル通過 |
園原ICで降りて本谷川に沿って走行して約6Kmで通行規制のゲートがあり、その手前に20台程度の駐車スペースがある。ICを降りるとコンビニもなく途中、トイレ施設があるだけの山里を通り抜けて駐車スペースに到る。林道はもっと奥まで続いているが、崩落が激しくてS字カーブ手前までで通行を制限している。しかしこの6Km区間は桃の花が色とりどりに咲き、この時期はさながら桃源郷の中を走るようで素晴らしい。
急な登山道 |
駐車場に到着するとすでに数台の車が駐車しており、さすがは百名山だけのことはあると感心。この日の天候は曇り、夕方まで雨は降らないという予報に安心して仕度をし、長袖シャツにベスト、タオルを巻き首からカメラを吊るして出発する。メモ帳を忘れたのでカメラがメモ代わりだ。通行止めのゲート脇に登山者カード入れが設置されているが、いつものようにそれを無視して舗装路を登山口目指して緊張の一歩を歩みだす。S字カーブを過ぎ本谷川の上流に進んでいくと、左岸に付けられた道路の山側には落石防止用の柵が随所に設置されているが、それでも路面に落石が多い。
所要約30分でトンネルを抜け、広河原登山口に到着。ここには湧き水があり水の補給が出来る。舗装路と分かれて本谷川の河原に降り、丸太3本を固定した橋を渡り対岸へ。ここからいよいよ恵那山への本格的な登山道になる。ルートは案内標識や赤テープが要所にあって間違うことがない。と思われたが30分もジグザグの急坂を登っていると、上空からヘリによる遭難者捜索のエンジン音が響き渡る。後日の調べで荒川記久という人が4日、道に迷ったと携帯からSOS要請したとのこと。5月9日のインターネットによると8日夕刻に遺体で発見されたようです。冥福を祈ります。
曲がった木 |
残雪の県境尾根 |
余談はこれくらいにして、植林された唐松林に付けられたジグザグの急坂をゆっくりペースで登り、約1.5時間で「1576」という数字と「頂上まで100分」と書かれた標識に至る。唐松の落ち葉が敷き詰められた小さな台地上の場所で、地図上の1716m地点かと思われる。暫くすると笹原の尾根になり傾斜も緩み視界も良くなってくる。笹が所々で黄ばんで枯れていてちょっと可哀想な気もするが、広く刈り払われた登山道に感謝しながら登って行く。笹尾根上はダケカンバが多く山頂部の稜線も見え隠れして元気がでる。また振り返るとヘブンス園原スキー場の青い屋根が眼下に見える。視界がよければ中央アルプスや南アルプスの山並みが見えるだろうけれど、今日はこの視界でも上出来だろう。
笹尾根を行く |
スキー場方面 |
再びツガやモミの針葉樹の林の中に入り、高度を上げていくことになるが、林床を見ると苔むした大きな切り株を栄養にして、そこに寄生するかのように色んな樹木が共生していて、あたかも生存を掛けた骨肉の争いをしているように見える。そんな自然の逞しい様を見ながら標高をあげていく。いつの間にか登山道に残雪が出てきて、徐々に林床一面が残雪に覆われるようになる。固定ロープの張られた場所は足元が凍っていて慎重に足場を確認しながら登る。県境分岐はここからもうすぐとのことだが、気が付かないまま通過してしまった。残雪が凍って滑りやすくなった登山道に注意しながらゆっくり登って行くが、この辺りからポツリポツリ降りだした雨が本降りになってきだした。
山頂広場 |
風がないので傘を出して歩くことにする。家内は合羽を羽織る。気温は一気に冷えてきて山頂近くになって寒さに耐えられずフリースのジャンバーを羽織る。また手袋をしてやっと丁度良い状態だ。下界では半そでで丁度よかったのに、一気に季節が逆戻りしたようだ。偽ピークを目指すように西方向に登っていた県境沿いの登山道が、北西に進路を変え水平に進むようになって約10分でひょっこり恵那山の三角点山頂に到着。誰も居ない山頂には一等三角点(点名:恵那山、標高:2189.81m)が設置され、展望台がアルミ梯子を階段にして設置されている。いつものように軽く三角点の頭をタッチして、山の無事を感謝する。
恵那山頂にて |
山頂三角点 |
三角点の先には恵那神社本社があり、ここでいつものように無料で山旅の無事、健康祈願、家内安全、商売繁盛などを盛り沢山に祈願する。その先にも小さな祠(六乃宮社葛城社)が残雪に囲まれて祀られていた。山頂広場の平坦部に雪はなく晴れていればゆっくりと昼食をして寛ぐところだが、雨が降りしきる中では避難小屋まで足を延ばしてそこで昼食が一番望ましいシチュエーションだった。だが家内は往復20分をかけてまでして行きたくないと言い、山頂を早々に切り上げて大木の下で雨を凌いで昼食にすることにした。そのため折角の山頂だったが最高地点のある避難小屋まで行かず、一等三角点のあるこの山頂で恵那山登頂を納得し、急いで展望台に登って視界のない中を漠然とカメラに収める。恵那神社の社の方向奥にこんもりした樹林の高みがあり、そこが多分2191mの恵那山最高地点だろうと想像し展望台を降りる。
避難小屋方向 |
滞在時間が10分にも満たない短時間で下山したが、雨で展望がないとあっては致し方がない。下山は往路をそのまま引き返すことにして、雪に足をとられないよう気をつけながらゆっくりと降りる。登りのときは気づかなかった異様に変形した樹木や、複雑に絡み合った根っこに感嘆しながら本降りの雨になった山を下っていく。
無事下山してすっかり濡れ鼠になった衣類を着替え、昼~温泉のすべすべしたお湯に浸ってリフレッシュして新しく2008年4月に開通した飯田山本ICから中央道に入り渋滞の名古屋方向を横目に北に向かう。 沖 記
コースタイム:園原IC下車==(約6Km)==6:40恵那山広河原駐車場6:55---7:30広河原登山口(林道分れ)7:35---9:05標高1576m(1716m?)地点---10:10固定ロープ地点---11:15県境の杭(偽ピーク?)---11:25恵那山山頂(点名:恵那山、標高:2189.81m)11:35--(昼食)--13:15標高1576m(1716m?)地点---14:15広河原登山口14:30---15:00広河原駐車場15:30==(昼神温泉にて入浴@500円)==飯田山本IC乗車 |