八幡平


H22.8.8

     八幡平 (1613.34m:岩手県八幡平市字八幡平)    登山者:沖

コースタイム:大東町摺沢6:40==(約160Km)==9:05八幡平山頂駐車場9:30---9:50八幡平山頂(1613.34m)9:55---10:00八幡沼---10:30源太森10:35---11:10八幡平山頂駐車場11:15==(約6Km)==11:25蒸ノ湯温泉11:30---11:45大沼分岐---12:05長沼12:30---12:55蒸ノ湯温泉13:30==(約160Km)==16:00大東町摺沢

 アパートにじっと引きこもっていても仕方がないので、避暑をかねて高原散策をしようと、楽に歩ける八幡平に一人で出かけた。この時期は、ひょっとしたらもうリンドウが見られるかもしれないと密かな期待を胸に大東町を出発。車はお盆渋滞の影響もなく快調に走行できて、水沢・松尾八幡平IC間を高速道割引利用で費用と時間稼ぎをし、トイレ休憩も含めて2時間半ほどで八幡平山頂駐車場に到着。しかしアスピーテラインと樹海ラインの三叉路にある見返峠有料駐車場は避けて、少し手前の無料駐車場に車を止めて、そこからけち臭く車道を歩いて見返峠に向かう。


八幡平山頂の三角点

八幡沼
 やっぱり高原の空気は期待通り爽やかで、下界で感じる纏わりつくような湿っぽさがないのが何よりもうれしい。見返峠からコンクリートの階段を登っていって最初の分岐を左にとって鏡沼、メガネ沼を右手に見るルートで八幡平山頂を目指す。とは言っても八幡平山頂までコンクリートで固められた観光地の遊歩道であり、20分も歩けば山頂に到着できる。しかし山頂に到着しても周囲と高さに差異があるわけでもなく、山頂を示す大きな標識と展望台があるだけだ。その展望台へ登る階段の足元に小さく二等三角点(点名:八幡平、標高:1613.34m)が埋設されている。観光客の多い山頂でいつもの呪文は唱えられないが、深田百名山の頂でもあることから、三角点の頭に軽くタッチして山頂到着の儀式だけ済ました。しかし何の実感もわかない簡単な山頂到着だった。

 約40年前に蒸ノ湯温泉から歩いて登ってきたときも、やっと山頂についてほっとしようとしたら、目の前に着物を着たご婦人たちが大勢たむろしていてガックリした記憶があるが、とにかくこの山頂で感動した覚えは一度もない。今日は展望台を降りたときに写真を頼まれたので要請に応えていると、ついでにシャッターを押してあげますといわれて、標柱の前でついでの記念撮影に収まる。なんとなく居心地が悪いので、早々に山頂を後にしてガマ沼に向かう。


イワショウブ

タチギボウシ
 この日の八幡平は観光客も中高年登山者も比較的少なめで、静かな山歩きとなった。いつも人ごみが絶えないガマ沼と八幡沼の隣接した展望台が、この日は一組だけ記念写真を撮っているだけだった。それも終わって私と逆方向に向かったので、広大な湿原をゆっくり写真を撮りながら散策することができた。

 八幡沼にトウゲブキを前景にしたりニッコウキスゲをあしらってみたりして、まず八幡沼の全景をカメラに収める。避難小屋から湿原に向かって木道を伝っていくと、タチギボウシが湿原の主役になっている。草むらの中にイワショウブも咲いている。大きく立ち枯れたコバイケイソウが目立つ。所々にリンドウがつぼみを膨らませている。高原の風が何とも言えず心地よく、やっぱり来て良かったと勝手に顔がほころんでくる。


源太森にて
 八幡沼を離れて源太森に向かう。八幡平を眺めるなら源太森が一番だ。松川の向こうに見える岩手山の颯爽とした眺めや高度感を味わうなら茶臼岳が一番だが、オオシラビソの森と湿地を一望するのであればこの源太森に限る。その源太森へ簡単に登って景色を堪能する。指導員の方がいて同じようなことを登ってきた登山者たちに説明している。私も指導員の方に仕事を頼んで源太森の頂で記念写真を撮ってもらった。


蒸ノ湯温泉
 その後、往路を引き返して途中から八幡沼の南側を経て見返峠に戻った。そのまま駐車場に戻り、車を動かして蒸ノ湯温泉に向かう。蒸ノ湯温泉近くの湿地も気になる存在だったので、そこを散策して、温泉に浸って、のんびりとしてから帰宅する予定だ。蒸ノ湯温泉に車を駐車して、露天風呂の噴煙上げる裸地地帯を通り抜けて長沼へと向かう。温泉卵を茹でている宿の人から音のするものを持参するように注意を受けたが、気をつけていってらっしゃいと快く見送られて気分をよくして緊張気味に森の中に入る。

 大沼からの道と合流すると、その先にすぐ大谷地が見えてきた。湿地の縁に巨大化したミズバショウの葉が一面に踏み倒されている。ミズバショウの芯の部分は熊が好んで食べると聞いたことがあるが、どうもミズバショウは熊の餌として倒されたようだ。そのミズバショウの後方にタチギボウシが群生して咲いている。


長沼
 湿地の縁を巻くように登山道が延びていて、そこからブナ林の中に入り込んでいくと20分ほどで長沼に到着した。静かな森の中にポツンと湖面を光らせていた。池の右半分はヒツジグサとネムロコウホネに覆われて今が盛りと白い花と黄色い花が湖面に彩を添えていた。残る半分は湖面が神秘的に光り輝いていた。静寂に包まれたブナの森の中の池は人気がなく、一人で長く居るのは耐え難いほどだ。


大谷地
 ここで遅い昼食をしたが、暫くすると蚊が集まってきて静寂を破られた。蚊からすると久々の餌がやってきたと言った所で、たった一つの標的に一斉に集中砲火を浴びせられた。急いで団扇を出したものの、多勢に無勢で成す術なく、ここは逃げるが勝ちと早々に退散してきた。長沼も大谷地も静かで人っ気がなく、落ち着いた良いところだった。

 すっかり蚊に刺されて下山し、そのまま蒸ノ湯温泉で山の汗を流した。40年ほど前に泊まった時はオンドル式の鄙びた北東北の湯治場そのものだったが、いまはオンドルそのものが小さな掘っ立て小屋に変わっていて昔日の面影は残っていない。でも温泉そのものは良いお湯で気持ちよかった。

 帰路は見返峠まで往路を引き返したが、急にガスが濃くなってフォグランプを点灯しワイパーを動かしながらの走行に変わった。見返峠から樹海ラインに進路を変更したが、少し高度を下げて籐七温泉まで来るとガスはほとんど消えて走り易くなった。樹海ラインを一気に下って松川温泉を経て、松川渓谷の橋を渡る。その後はナビに苦情を言われつつルートを見失ったナビを無視して、目の前に展開する新しい直線路をどこまでも走行する。未知なる道は焼走り国際交流村まで通じていた。新たに完成したバイパスルートを快適に走行して、西根ICから高速道路に入り大東町に戻った。 沖 記

2006.8.27

   八幡平  秋晴れの天気に誘われて楽して歩ける八幡平を散策してきました。


タチギボウシ

モッコ岳方面を望む

エゾオヤマリンドウ
 34年ぶりに訪れた八幡平は記憶に残っているのは玉川温泉から焼山を経て後生掛温泉、蒸ノ湯温泉を経てやっとの思いで山頂に着くと、そこには着物を着たおばちゃん達がいたこと、その時の山頂は当時と変わらず石畳の遊歩道と展望台があったこと、八幡沼のほとりにあった陵雲荘は赤い屋根だったが、今は三代目として新しく建替えられていたことぐらいが記憶と繋がる差異だろうか。

 八幡平は車で登れる山とは言え、頂上まで車で行ってしまっては下るだけの山になってしまうので、黒谷地入口に駐車してそこから八幡平山頂を目指すことにする。また余力があれば茶臼岳にも足を伸ばそうとの計画だ。

 いつものように水沢ICから高速道路を北上し西根ICで降り、八幡平の道路標識に導かれて難なくアスピーテラインに入り、快適なドライブを楽しむ。茶臼岳登山口には10台以上の車が駐車してあり、登山者が登る準備をしていたり、登り出したりしている。自分はその先の黒谷地入口まで行くが、そこは2台だけ駐車してあった。寂しい気持ちで駐車していると、もう一台来て一緒に支度をして登りだす。


八幡沼

早めの記念撮影・沖氏
 その車の夫婦連れから支度中に、今の時期はリンドウが綺麗だと教わる。その言葉の通り、車道から登山道に入ると木道の両脇にはアザミとリンドウが咲いている。またミヤマアキノキリンソウも咲いている。早速カメラを構えるが日差しが強くて写真にならない。少し歩くと「熊の泉」と書かれた3条の筒から甘露水が出ている。冷たくて美味しい水だ。

 木道をそのまま進むと茶臼岳からの道と合流するが、そこには立派な舞台のような展望台があり湿原を眺めながら食事を楽しむ場所となっている。時間が早いのでそのまま八幡平山頂へ向けて進む。登山道はよく整備されていて歩きやすい。緩やかな登りをゆっくり登る。今日はオホーツク海の高気圧が東北北部を覆っているため秋を思わせるような爽やかな湿気の少ないひんやりした空気に包まれているので、汗をかくような状況にはない。快い気候に恵まれて気分はハイで、木曾駒ケ岳に登った時のようなベストに近い展望に恵まれている。

 オオシラビソの林を抜けて草地に出ると北に八甲田連峰や岩木山が霞んで見える。モミジカラマツやタカネトウウチソウ、タカネヤハズハハコが多くなってくる。アカモノを見るようになると八幡沼も近い。イワショウブの赤い実やリンドウ、タチギボウシの紫が湿原に広がる。ウメバチソウの白い花も沢山咲いている。八幡沼周辺は広大な湿地になっていてリンドウが主役だ。もう少しすると草原が狐色になって秋の気配が濃厚になってくるが、いまはそれを少し感じさせるようなほんのりと草紅葉になりかかっている。


岩手山

奥・秋田駒ヶ岳
 八幡平は深田久弥の日本百名山にも選ばれているが、その文章を借りると「・・・八幡平の真価は、高原逍遙にあるだろう。一枚の大きな平坦な原ではなく、緩い傾斜を持った高低のある高原で、気持ちのいい岱を一つ横切るとみごとな原始林へ入ったり、一つの丘を越すと、思いがけなく沼があったりして、その変化のある風景が面白い。・・・」とあり、私も沼や草原、森を逍遙しながら変化する景色を楽しむことにする。

 とは言うもののやはり八幡沼を中心に美しい景色が広がっており、その先に二等三角点の八幡平最高地点がある。いつものように三角点の頭にタッチして、展望台に登ってみるがここから得られる展望より源太森から見るほうが断然良い。高原を逍遙しながら食事場所を探す。見返峠は展望の良いところで、八幡平から南側が遮るものも無く遠くまで見通せる。モッコ岳の左に秋田駒ケ岳が見える。諸桧岳、険阻森、大深岳に繋がる稜線は平坦で目立ったピークは無く、松川源流域の山々は平坦で美しい森が広がっている。そして岩手山は他を圧倒して高く大きい。

 八幡沼のほとりで美しい景色を見ながら昼食をする。やっぱり屋外で食べると美味しい。しかも景色が良いから尚更美味しい。リッチな気分で食事を済まして、再び高原を逍遙しながら黒谷地に戻る。そして茶臼岳に向かい、少しは山らしい登りをして山頂に至る。山頂手前には立派な避難小屋が新築されていた。小屋から一投足で二等三角点のある茶臼岳山頂に到着する。ここからの展望は素晴らしく、足元が切れ落ちて眼下に松川をはさんで岩手山がいっそう高く見える。大満足の展望を十分に楽しんで下山。

 下りはやはり早く、あっという間に駐車場まで来てしまった。帰路は籐七温泉を経由して松川温泉に降りて、山の汗を流し高速道路を経て帰宅する。  沖 記

コースタイム:大東町6:30==(約160Km)==9:00黒谷地湿原入口9:15---9:30黒谷地湿原9:35---10:00安比岳分岐10:35---10:45陵雲荘10:48---11:00八幡平山頂(1613.3m)11:05---11:30見返峠11:35---11:45八幡沼(昼食)12:05---12:30源太森(1595m)12:35---13:05黒谷地湿原---13:30茶臼岳(1578.3m)13:50---14:50黒谷地入口15:05===松川温泉(入浴@500円)===18:20大東町