かむろだけ
足下に小さな紅葉が残っていた
(小鏑山、1261.7m:宮城県大崎市鳴子温泉鬼首、山形県最上郡最上町)
H20.9.28


ススキの原から見る禿岳
 天気予報では北に行くほど寒波の影響で天候が優れず、先日既に岩手山は初冠雪を記録していて、その周辺一帯の秋田駒ケ岳などの山は避けることとし、紅葉には少し早いが一関市からあまり遠くない南方向の山を物色した。おのずと場所は特定されてしまい山形・宮城の県境で鳴子温泉の北にある山々を地図で物色、候補には禿岳、須金岳、火打岳、小又山など未知の山をリストしたが、最近の自分の体調を考慮し時間的にも近く楽に登れそうな山として、禿高原の西に聳える神室山塊の南東端に位置する禿岳(小鏑山)に花立峠から登ることにした。


花立峠に駐車中の車
 最近のマスコミでは地球温暖化が毎日のように報じられているが、北日本地方は寒気団が南下して飯豊山、月山、鳥海山などの高山では初冠雪が例年より二週間も早く見られるなど、自然界は人類の英知で理解できるほど単純ではないようだ。登山当日の天気も大東町を出る頃は青空が広がっていたが、北上川を渡って正面の奥羽山脈の分水嶺の山は雲が低く掛かっていた。

 この時点で早々と展望は諦め温泉を楽しみにすることにして、細倉マインパークを経て鳴子温泉へと向かった。道路は空いているが東北地方は面積が広いだけに走り甲斐があり、鳴子温泉まで予想よりずっと遠く感じた。禿高原はススキの原が一面に広がり爽やかな高原の雰囲気を醸している。高原の衝立のように岩肌を見せて前方を塞いでいる山が、どうも目指す禿岳のようだ。

 道路はリゾート地を過ぎると少し細くなるが道なりに標高をあげていくうちに、いつの間にか峠に出てしまった。花立峠の標高は約800m、先行車は4台、駐車場は路肩だが車10台は駐車できるスペースがある。まだ完全に山モードにならないうちに登山口に到着して、ちょっと肩透かしを食らった感じだ。調子が出ないまま山の仕度を整えるが、忘れ物が多くて何度もザックを開け閉めする。


ブナの実

大南蛮煙管(オオナンバンギセル)
ススキなどに寄生する植物
浜うつぼ科
ナンバンギセル属とのこと
 おまけにそんな無作法な準備中に団体バスが到着してゾロゾロと登山者が降り立ったため、団体の出発前に出かけようと焦ってしまって尚更準備にもたついてしまった。団体バスは隣町の藤沢町民ハイキングご一行様で、近隣のよしみで心なしか少し落ち着きを取り戻すことが出来た。とにかく急いで出発して登りだしたところ、足元に早速見知らぬピンク色の花が咲き終わりの花弁を残してウェルカムと呼んでいる。カメラを取り出して電源を入れるが反応が無い。良く調べると電池切れを起こしている。出発前にメモリークリアしてきたが、暖かいところで作業したこともあり10℃の気温下では容量不足で電池切れになったようだ。

 予備電池に入れ替えたけれども、出端からこんな調子では前途が思いやられる。一応それなりの写真を撮って再び登りに掛かる。禿岳の花立コース登山道は尾根に沿って県境を北上していくが、ブナ林が一合目から綺麗な景色を見せてくれる。前日の強風でナナカマドの実が登山道に沢山落ちている。葉っぱも随分飛ばされたようで、見上げる枝は冬の装いに近い。しかしまだ初秋であり、ブナの葉もほんの少し黄色味を帯び出したところだ。


荒雄岳(右端)と栗駒山(左端)
 登山道は一合目から九合目まで抜けること無く合目表示がされている。ブナ林は一合目手前から七合目過ぎまで見られた。三合目を過ぎると右手の東側が開けて見えるところがあり、禿高原が眼下に広がっている。その先には荒雄岳が「山」という字をそのまま当てはめたような容姿で、デンと鎮座している。その左手には栗駒山が山頂まで見えた。ただし栗駒山はこの一瞬だけ頂を覗かせたが、その後はずっとガスに隠されて仕舞には山そのものも消されてしまった。


イワショウブの実
 七合目を過ぎると稜線が狭くなって岩場の水平道がしばらく続く。相変わらず山頂部はガスに閉ざされたままで、時々パラパラと時雨が落ちる。右手足元は禿高原が広がり、歩行注意しながら広がる景色を堪能する。麓から見た山頂部に掛かっていたガスの領域に入り込んだ結果の事象だろうと想像できる。足元にはコガネギクが多く咲いていて、所々にオヤマリンドウが見られる。

 八合目の急坂を登りきると小さなピークになり、平坦な場所に祠が祀られた九合目に到着。祠に手を合わせて無料でいつもの願い事を祈願し、山頂を目指して気合を入れて出発。すぐに小さな下りになりそこにはイワイチョウの葉が沢山見られる。その先には小さな草原が広がっていて、イワショウブが赤い種子をつけて沢山咲き残っていた。春先に一番遅くまで雪が残る場所なのだろう。草原もまだ狐色に変色するまで秋は深まっていない。


九合目の祠の石碑
 この草原を抜けると直ぐに山頂に至る。山頂には二等三角点(点名:小鏑、標高:1261.7m)が置かれているが、何よりも大きな「禿岳山頂」と書かれた石碑が目立つ。後ろに回って石碑を見ると「昭和六十二年九月建立 鳴子町」とあった。県境の山だが地籍は本当に鳴子町だろうかと思い、国土地理院のHPで検索してみると、驚いたことに栗駒山周辺一帯は地図にある三角点の全てが地震による地殻変動の影響でか、成果状態は停止[成果異常]として朱が入れられていた。


禿岳山頂
 山頂から分岐する登山道を少しばかり入り込んでみたが、展望を得られる昼食場所に良さそうなポイントを見つけられず、山頂よりも広い九合目で休むことにしてガスで視界のない山頂を早々に辞して九合目に向かった。山頂で休憩して団体ご一行と狭い場所で鉢合せするのを避けたかったためだが、九合目に戻ってのんびり休憩していると暫くして団体ご一行がぞろぞろと登ってきた。

 山頂まで指呼の間だからさっさと登ってくれればよいのに、皆さんはこの九合目で腰を下ろしてしまった。予定外の出来事に面食らったが、とにかく一人大人しくトン汁とおにぎり、デザートに梨を戴く。団体組は全員が揃ったのを見計らって山頂に向かってくれたので、また静かな時間が戻ってきて、祠の石碑などをゆっくりカメラに収めた。


ツリバナ
 下山は登りとは目線が異なるため自然と焦点が遠くなり樹木や景色に目がいくが、今頃は樹木の枝に実る種子や果実が気に掛かる。今年のブナは当たりか外れか分からないけれど、樹木によっては沢山実を付けているものもある。変わった姿ではツリバナが赤い袋をクス玉のように裂いて、名前のごとく果実を吊るしていて人目を引く。

 花立峠に戻り、登りの時に撮りそびれた登山口周辺をカメラに収めて、帰路についた。禿高原のススキの原から眺めた禿岳は相変わらず山頂部をガスで閉ざしていた。禿高原からR108に出て直ぐのところにある轟温泉・日帰りの湯「目の湯」にて山の汗を流し、往路を戻って大東町に帰った。 沖 記

コースタイム:大東町摺沢7:00==(約110km)==9:30花立峠(禿岳登山口)駐車スペース9:45---10:35五合目---11:20禿岳山頂(1261.7m)11:25---11:28九合目(軽食)11:50---12:55花立峠駐車スペース13:10==(入浴:目の湯@400円)==16:15大東町摺沢


2000.11.4 参加者:森、菅原、阿部

奥左葉山、右月山
 栗駒国定公園の最も南に位置する神室山は、山形県と秋田県にまたがる一大山塊を作る。さらに南側には、山形県と宮城県にまたがる禿岳(かむろだけ)がある。禿岳は、カルデラ地形の中央火口丘である荒雄岳を中心とした、直径約15kmのカルデラ外輪の西のフチに位置する。標高1261.7mと低い割には大展望のきく素晴らしい山である。神室山と同じ様な山名で、区別するために”ハゲかむろ”とも呼ばれている。


花立峠から山頂を望む

2合目付近のブナ林

鳥海山

双眼鏡貸して!

5合目付近の急登

ナナカマドの実

鬼首方面

ナイフリッジ付近

 朝7時一関を出発し、鳴子と鬼首温泉郷を経由して花立峠に2時弱で到着する。10:10峠に車を置き出発する。草原の丘陵地形に続く道を登り切るとブナ林が現れ、1合目に着く。ブナ林は8合目まで続くが、3合目までは緩やかなアップ・ダウンが連続し、冬枯れのブナ林の落ち葉や小枝の影に酔いしれながら快適に進む。

 3合目から少し登りもきつくなり、小春日和に誘われ上着を脱いで進む。5合目付近に着くと鬼首側の視界も開け、雄大な下界の風景を堪能する。時折小枝の間からは、山形側の山々も見えて感激する。後で気が付いたのだが、1合目あたり10分のペースで登っていた。時間があるので8合目付近のナイフリッジで大休止をとる。

 8合目から再びきつい登りを頑張ると9合目に着く。ここにある祠が信仰の山を感じさせる。展望はまだ250度位しか利かず、やや平坦に続く道を山頂へと進む。

 5分ほどで山頂に到着。思っていた以上の大展望に一同感激しながら360度カメラを回す。眼下には最上町の家並みが箱庭のように点在し、ケーシ高峰さんの実家や冒険家の大場さんが居ると思うと、どの家がそれか探したい衝動に駆られる。

 振り向けば、北東にそびえる栗駒山、左に回り虎毛山、その奥に小安岳、続き高松岳、山伏岳、少しおいて神室山の連山、その間に鳥海山がでかい顔を出している。

 南西には月山、葉山がつづき奥には朝日連峰が見え隠れしている。雲海の彼方には飯豊連峰が霞み、左に目をやると蔵王連山や船形山が迫る。すごい!!これほど展望がきくとは思ってもいなかった。思わず他の登山者に得意げに説明をしてしまった。

 9合目に戻って昼食を取り、名残惜しみながら下山開始。登る時は気が付かなかったが、急傾斜の所は滑りやすそうで慎重に下る。

 花立峠付近にはパラグライダーが現れ「アエズデ、クダッタラ、ラグダベネーッ」などと談笑しながら快適に進む。1時間ほどで花立峠上部に着くと、先ほどのパラグライダーのみなさんが飛び立とうとしていた。ここの皆さんから説明を聞きながらパラグライダーの勇壮な飛行風景を堪能する。 下山後、中峰コース入口の車道を確認し、鬼首の大衆浴場で入浴して帰途についた。

 コースタイム:花立峠−100分−山頂、下り:70分  入浴料:560円