裏岩手

H19.6.16

     大深岳(1541.42m:岩手県八幡平市)源太ヶ岳(1545m)

 このところ里では温暖化の影響でか真夏日が続き、急激な暑さに身体がついていけない。そこで少し高山的要素を求めて裏岩手縦走路の山を登ることにした。

 天候は前日の雨から回復する予報だったが、奥羽山脈の山並みはまだ天候が安定せず雲に隠れている。徐々に天候は回復すると信じて東北道を北上し、八幡平市のコンビニで食料を調達して松川温泉に向かう。樹海ライン入口の分岐には数台の車が占有していたため、ゲートの中に入った駐車スペースに停車する。


岩手山

三ツ石方面

大深岳方面

サンカヨウ
 山の支度をして長靴を履いて出発する。今日は先行する登山者も居り熊に怯えることなく安心して山に入ることが出来、純粋に山を楽しめそうだ。登山口から直ぐに林道に変わり発電所脇を入ると再び山道に変わる。しかし敷き詰められた小石が長靴にはストレスを感じるが、それだけ整備された登山道だと思えば有難い。

 登山道と平行してゴム水道管が露出して設置されている。足元にはズダヤクシュ、ユキザサ、マイズルソウの白い花がどれも満開だ。頭上はブナ、ダケカンバ、サワグルミなどが多い。ひんやりした森の中を汗をかかない程度で登っていく。

 丸森川に掛かる橋を渡る頃からシラネアオイが目立ってくる。サンカヨウも咲いている。それまでザックにしまっていたカメラを取り出して、いつでも撮影できる態勢に整える。早速見頃になった花を見つけてカメラを構える。写真を撮り出すと一気に歩く速度が遅くなってしまうが、これを楽しみで登るのだから仕方が無い。


シラネアオイ
 水場を過ぎたところで珍しい白から紫色へグラデーションの掛かったシラネアオイが登山道脇に咲いていた。白花は何度か見たが2色は初めて見る色合いだった。何とかカメラに収めて一安心する。この辺から足元は所々でぬかるみ長靴が威力を発揮するようになる。またミツバオウレンやオオバキスミレが多くなり植物分布も変化してくる。

 コースタイムより随分早く源太ヶ岳分岐に到着。ここは直登せずに右折して大深山荘に向かうと直ぐに湿原が現れる。シラネアオイが写真を撮ってくれといわんばかりに大きな花株を揃えている。そんな花株が次から次へと出てくるので、仕舞いには品定めをしっかりしてから写すようになる。贅沢な悩みだ。湿原はまだ雪融けの最中で花は無く、曇り空で日が射さないため風が肌寒く感じる。腕まくりしたシャツを戻し、木道がまばらに設置された湿原をのんびりと進む。湿原の花はイワイチョウが多そうだ。ワタスゲが少し花を咲かせている。コバイケイソウ、イワカガミの開花はまだまだ先のようだ。


大深岳稜線

大深避難小屋

八幡平方面
 水場の手前で「左:大深山荘、右:水場」と表示されており、左のルートに入ったところ藪がひどくなり途中で引き返した。水場を経由して避難小屋まで木道も設置された地図に無い道があり、そのルートで避難小屋に到る。綺麗な避難小屋で少し休憩して簡単に昼食を済まし、大深岳を目指して縦走路を登っていく。

 この頃になってやっと太陽が顔を出すようになり、気温も上昇してくる。源太ヶ岳との分岐から大深岳まで快適なプロムナードで、三ツ石山が美しい姿で稜線を延ばしているのが見える。二等三角点の設置された大深岳山頂はだだっ広くて視界が無いため、縦走路を南に更に進んで展望の利くところで一休みする。秋田駒ケ岳が大きい。その右に田沢湖の湖面が少し見える。西北西には森吉山が目立っていて、これら2山もまた東北の名山だと納得する。

 縦走路を戻り分岐を右に源太ヶ岳に向かう。大深岳から源太ヶ岳に到るルートはハイマツの尾根でアップダウンも少なく展望がすこぶる良い。正面に岩手山を望みながら右手には裏岩手縦走路の山並みが松川の谷を隔ててまだらに雪を残して美しい稜線を惜しみなく見せてくれる。また左手方向は八幡平の山並みが水平に広がっている。暖かい陽射しの下で爽やかな涼風と低いハイマツの中を源太ヶ岳まで20分余りの短い距離だが、アルペン的な気分を味わうことが出来て嬉しかった。このルート一番の景色と空気を感じることが出来た。

 源太ヶ岳山頂は南側が切れ落ちて、岩稜にはミヤマキンポウゲの黄色い花が難しい所に咲いている。裏岩手縦走路の山々を俯瞰する最高の展望所とも言えるこの山から見る景色は見飽きることが無い。松川温泉の向こうに聳える岩手山は終日山頂部が隠されたままだったが、他の山々は360度の展望で深田久弥の名言「飽かず眺めた」を実践した。

 大展望を楽しんだ後は厳しい下山が待っていた。「初夏まで雪渓が残るお花畑」とガイドブックにある大雪渓は傾斜が急で、長靴のかかとをしっかり踏み込んで慎重に下る。滑落しないよう神経を集中して無事雪渓を通過、草付まで降りて緊張の糸が切れたとたんに滑って尻餅をついてしっかり濡れてしまった。気を取り直して慎重に歩き、無事に難所を乗り越えて登山道に戻る。登山道は雪融け水で川になっていたがそこに到るまでは胃が痛くなるような緊張を強いられた。

 分岐に戻るとホッとするが、雪解け水が登山道を朝よりも水量を増して流れていた。足場を拾いながらゆっくり下っていく。登山道沿いには沢山のネマガリダケがあり、抜いた二人の登山者も道草をしながらであった。自分も途中で道草をしたが、一箇所で瞬く間に今夜の肴分を確保できた。

 駐車場に戻り濡れた衣類を着替えて松川温泉で山の汗を流した。開放的な露天風呂と内風呂を梯子して硫黄臭を身体に付着させたまま東北道を南下して大東に戻る。  沖 記
 
コースタイム:摺沢6:35==(約145Km)==8:55大深岳登山口9:05---9:40丸森川---10:08水場---10:35分岐点---11:45大深山荘避難小屋(昼食)12:05---12:25大深岳(1541.4m)12:40---13:05源太ヶ岳(1545m)13:10---13:25分岐点---13:45水場---14:35大深岳登山口(入浴:松川荘@500円)15:35==(約145Km)==18:15摺沢