8月31日 一関(栃木)−茅野−美濃戸口−赤岳鉱泉泊
美濃戸口 |
車道を進む |
低気圧が島根付近にあり、それから前線が日本列島を横断している。雨に降られるのを覚悟して、八ヶ岳へ出発する。一関組と大宮駅で合流し、一路新宿に向かうが車内放送で人身事故のため中央線が止まっているとのこと。とりあえずあずさ号を待つが、約20分遅れで出発する。最終的には30分遅れで茅野駅に到着。予定のバスは出発済み、タクシーで美濃戸口に向かう。
北沢沿いの登り |
赤岳鉱泉 |
昨年、雨男返上のKさんのせいか、心持ち薄日も射してきた。八ヶ岳は雲の中で山容は望めないが、気持ちは高ぶり明日の天気は晴れるだろうと勝手な予想。タクシーのおかげで、30分の遅れは取り戻したようだ。13:20標高約1500mの美濃戸口(みのどくち)を出発。唐松林に続く車道を軽快に進む。みのどまで車道は続くが、下草の少ない針葉樹林は、みんなの目には新鮮に映るようだ。東北の山なら既に森林限界を越えているはず、見慣れない光景に感激しながら黙々と高度を稼ぐ。
14:08みのど・赤岳山荘前に到着。周辺の小屋宿泊者は、ここまで車の乗り入れが可能のようだ。ただし、車高の高いジープタイプでしか入れない。数分の小休止後、赤岳鉱泉に向けて出発。樹林はコメツガに変わり、再び歓声を上げながら進む。道は登山道らしくなり、北沢を数回渡りながら高度を稼ぐ。トリカブト、キリンソウやカニコウモリなどが時折見られ、目に入るものは全て新鮮にうつる。標高1600m付近に来ると、ガスがかかりだし雨具着用かと迷うが結構乾いたガスのようだ。途中小休止を1回取り再び高度を稼ぐが、急に周りが明るくなり樹林帯を抜ける。キリンソウらしき群落が現れ、赤岳鉱泉(標高約2200m)に到着する。小屋は満員では無いようだが、個室を取り大の字になって横になることにする。温泉入浴の前に、とりあえずビールで乾杯のどを潤す。
コース時刻:美濃戸口13:20−14:08赤岳山荘(美濃戸)14:20−15:15北沢中間15:26−16:13赤岳鉱泉
9月1日 赤岳鉱泉−文三郎尾根−赤岳−横岳−硫黄岳−夏沢峠−箕冠山−根石山荘
赤岳鉱泉より横岳方面 |
左大同心、横岳を見上げる |
前日のガスは全くなくなり、清々しい気分で5時半朝食、6時鉱泉を行者小屋へ向けて出発する。トップは吉家氏、続き浅沼氏、小野寺氏、ラストはカメラの関係で阿部と隊列を作り、終始この状態で進む。緩いシラビソ林に続く道を、進むと小さな小川に掛かる橋に出る。少し開けて岩峰の一部を眺めながら進むと、間もなく傾斜のある登りが始まる。程なく小さな梯子が現れ、横岳方面が目の前に迫る。一息入れて再びシラビソ林に入り、中山展望台への分岐となる。ここから緩い下りが林の中に続く。やや平坦なった道を10分程進むと林が途切れ行者小屋(標高約2350m)が現れ、十字路・分岐となる。阿弥陀岳と中岳、赤岳の斜面が目の前に迫る。
行者小屋と大同心の岩峰 |
文三郎尾根を登る |
地図と道標を確認して、とりあえず文三郎尾根を目指す。小屋東側の広場からは、赤岳や横岳がよく見えて気持ちがはやる。道は林の中に入り、傾斜も増してきた。結構息も上がり辛い登りが始まっているが、安定した登山道だ。黙々登ると、阿弥陀岳と中岳鞍部に出る分岐が現れる。当初はそこを登る予定だったが、近道の文三郎尾根を登ることにする。急傾斜を進むと、間もなく森林限界を超えて見通しもやや良くなる。建築現場で見られるような格子状の鉄板で作られた長さ20mほどの階段を、3回ほどクリヤーすると視界も開け大展望が現れる。八ヶ岳連山は勿論、雲海の彼方には穂高の峰峰と槍ヶ岳が浮かんでいる。後立山連峰の一部も少し頭を出している。ここで大休止を取る。
コマクサ |
トウヤクリンドウ |
赤岳に目を移すと、少しガスが掛かりだした。まだまだ続く階段を、バテる寸前まで我慢して高度を稼ぐ。酸素がもっと欲しい・・ゼイゼイ・ハァハァしながら何とか中岳から続く尾根にたどり着く。赤岳はガスの中に入っているが、コマクサやトウヤクリンドウが咲き乱れカメラを向ける。小休止後、いよいよ核心部の赤岳の岩場に入る。早池峰の岩場より傾斜があるが、ガッシリと固定されて安定感はある。ちょっとしたフリークライミング気分で高度を稼ぐ。痩せた岩場を登り切ると、赤岳山頂(2899m)に出る。祠と山頂標識がその場を占領している感じだで、ゆっくり座り込むには少し狭い感じもする。ガスで殆ど視界はないが、数秒の切れ間から阿弥陀南稜方面が見える。直ぐ向かいの山頂小屋では、ヘリの飛来を待っている様子。視界が開けるまで待つのを断念して、展望小屋方面に降りることにする。
イブキジャコウソウ |
赤岳直下を行く |
ハイ松の実をついばむホシガラスの乱舞する中、ややガレ場状の道を慎重にくだる。振り返ると、山頂方面のガスが切れだしている。せっかくの山頂、離れるとこれだ。ガッカリしながら、少し視界の良くなった阿弥陀岳や横岳方面を眺めながら高度を下げる。ガスのせいで視界はどんどん変わる。浮き石の多くなったガレ場を慎重に下ると、展望小屋方面から大勢の若者が登ってくる。下りとは言え、すれ違いも結構大変だ。間もなく赤岳展望荘(標高約2700m)に着き、コマクサを眺めながら小休止を取る。
赤岳山頂にて |
イワギキョウ |
いよいよ、この日の難所に差し掛かる。三ツ又峰の岩峰がのし掛かるり、再びフリークライミング気分。時折イブキジャコウソウのピンクが気持ちを和らげるが、息は上がりっぱなし。中間で小休止を取りながら何とか登り切る。痩せ尾根は更に続き、横岳・奥の院付近(標高約2800m)で少し早い昼食を取る。ガスは丁度、東西の上昇気流同士で喧嘩している状態。数秒しか視界はない。カメラを諦め談笑していると、母と男の子の声が近づいてきた。近くに腰を下ろし、仲良く昼食の様子。聞けば、小学3年生と言う。よくぞこの様な岩峰を恐れず来たものだと感心する。カクカク・シカジカ四方山話に花が咲き、良く聞くと地元に住む、山の超ベテランママさんと息子さんだった。ブログ「心優しく穏やかに生きる」を見て下さい。
霧に霞む赤岳山頂小屋 |
展望荘への下り |
頼もしい親子を追うように腰を上げ、更に続く岩場に取り付く。左側が落ち込み結構スリルもある。慎重に下ると、なだらかなガレ場の道に変わり、どんどん下がる。すると再び先に行った親子が待っていた。そこにはコマクサの群落が広がり、一輪だけ(花二つ)白いコマクサを見つけたから見せようとして待っていてくれたものだった。ありがたい、一同感謝しながら写真に収める。更にガレ場状の下りが続き、硫黄岳山荘(標高約2600m)に着く。花の終わったウルップソウ等を眺めながら小休止を取る。
硫黄岳、横岳を望む |
横岳方面を振り返る |
これから登る硫黄岳は広くこんもりとしたお山状。角張った岩が一面に広がり、赤岳鉱泉側は大きくアーチ状に切れ込んでいる。大きなケルンが等間隔に並び目印となっている。それをたどるように、ジックリと高度を稼ぐ。傾斜が無くなると三度、先ほどの親子と標識を見つけて硫黄岳山頂(2760m)となる。ガスで殆ど遠くは見えないが、多数の登山者で賑わっていた。ザックを置き、早速東側の火口壁を眺めに行く。写真で見ているが、現実の景観は又すごい。上がってくるガスが切れるのを待ちながらカメラを構える。絶景に満足して小休止後、美濃戸口へ降りる親子と別れて夏沢峠に進む。
八ツの主、親子と談笑 |
硫黄岳・火口壁 |
道は、やや大きな石が転がる急傾斜。慎重に高度を下げる。見通しは良いはずだが、ガスが邪魔をする。やがて灌木帯に入り、シラビソ林を抜けると小屋が現れ少し展望が開ける。高くそびえる爆裂火口壁と小屋がマッチして良い絵のように見える。ここ、夏沢峠(約2530m)で小休止を取り、この日の最後の登りに取り付く。道は又シラビソ林に入り、緩い登りが続く。箕冠山(みかんやま)山頂部に近づくと木々の合間から東天狗岳がチラリと見える。結構、急な登りになっているようだ。明日の行程を心配しながら進むと道はやや平坦になり、林の中に分岐が現れ箕冠山(約2500m)核心部となる。立ち止まり、写真を撮って根石山荘の有る鞍部へ下る。
夏沢峠にて |
根石小屋 |
程なく灌木帯を抜け、コマクサの群落の咲く広いザレ場が現れる。小屋はこのザレ場の西側縁にあり、昔ながらの小屋で屋根に重石が散らばり同色で見失いそうに建っている。根石山荘(約2450m)は改築の様子もなく昔ながらの小屋のようだが、お風呂もあり相部屋には50名ほどが泊まれそうだ。おまけに個室も有ると言うが、この日は我ら4名だけの貸し切り状態。大部屋に布団、各一名分開けての寝床。食事は、オーナー自身の有機栽培による野菜を提供、勿論、魚類や肉類も付けられなかなか豪勢。我ら4名のみの客に、何だか無理に営業して貰った感じがして恐縮する。
コース時刻:赤岳鉱泉6:09−6:42行者小屋6:52−7:24文三郎尾根中間7:35−8:04赤岳下尾根分岐8:15−8:50赤岳9:25−9:55展望荘10:03−10:32三又峰下(中間部)10:43−11:01大権現11:13−11:20奥の院付近12:10−12:50硫黄岳山荘12:54−13:18硫黄岳13:30−14:16夏沢峠14:37−15:10箕冠山−15:17根石山荘
9月2日 根石山荘−東天狗−中山峠−中山−2300m付近−白駒池−白駒池入口駐車場(バス停)
東天狗にて |
高見石小屋前にて |
最終日の朝は、風もやや強いが濃いガスは取れる様子もない。5時半に朝食を取り、午後より日が射すとの予報を見て、6時、ガッパの着用無く根石山荘を出発する。植生保護用のロープの間を、根石岳に向かって緩い登りを進む。コマクサの花が、次から次に降りかかる雫を払いながら小刻みに震えている。最終日だが、昨年剱を経験した賞味期限切れのつまみや行動食が紛れ込んでザックは重くなっている。少し進んでも疲れがでて、息が上がってくる。体調の戻りも遅く、花をじっくり観察する余裕がない。石の転がる河原のような道を進むこと約10分、根石岳(2603m)に着く。展望は良さそうだが何も見えず、出っ張る小さな岩の道を東天狗へ向けて下る。程なく暗部の平坦部、数人の登山者の声が響く。再び登りに変わり、背の低い灌木帯を進むと小さな梯子(格子状の鉄製板橋)が現れ、程なく東天狗(約2630m)の山頂に出る。
東天狗の山頂は北八ツで一番展望が良いらしいが、残念ながら見通しは10m程でガイドブック等の写真で楽しむことにする。記念撮影のみで中山峠に向けて下る。背の低い灌木帯につづく、ゴツゴツした岩の出っ張る道を慎重に下る。濡れている岩は以外に滑りにくく、木の根や丸太の残骸のほうがよく滑る。左側はしばらく崖がつづいている様子。岩場も多く結構歩幅も狂う。平坦部に来ると、小学生の親子登山がやってきた。すれ違いに時間を費やしていると、霧に小雨が混じりだして、カッパを着ることにする。
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白駒池にて |
灌木帯はタゲカンバも多くなり、シラビソ林へと変化していく。スッポリ林に包まれると中山峠(約2460m)の十字路に着く。ガスに霞む林は、なかなか幻想的な雰囲気。ここからは完全に林の中、緩い安定した道を登りに入る。ニュウへの分岐を過ぎると道はやや平坦になり、少し進むと中山への岩の登りが現れる。シラビソ林の中に中山の標識、ここでカッパ(上着)を脱ぐ。更に少し進むと林が途切れて中山の展望台広場が現れる。相変わらずガスで視界はない。ここから高見石まで長い下りに入る。森の中につづく道は、岩がゴツゴツせり出し歩幅は不規則になる。茸類が時折現れ、中には明らかにシドリ気味のアミタケも有った。
長い下り、結構疲れ標高2300m付近で休憩を取っていると、長い登山者の列が登ってきた。すれ違いもままならぬ狭い道、結局休んだまま通り過ぎるのを待つが、後数人で・・と言うところで全員休憩の無線が入り休まれてしまった。このままでは、我らの行動が遅れると言うことで、この列の人々を除けながら下山開始する。しばらく同様の下り道を進み、小さな湿地を過ぎると間もなく高見石(約2260m)の小屋が現れる。ここから麦草峠に出る予定だが、丸山経由でも行ける。しかし、白駒池も見たいと言うことで予定通り白駒池に下ることにする。
中山峠にて |
鬱そうとした林は光も通しにくく薄暗い。木々の根本には苔が生い茂り、北八ツ特有の風景が広がる。なんだか北欧の山中を歩いているようにも思える。道は相変わらず岩がせり出し歩きにくく、結構傾斜もある。やがて傾斜もゆるみ木道が現れると、程なく白駒池(約2120m)に出る。手こぎホートで遊べる、意外と広い沼である。ここでカッパのズボンを脱ぎ、荷物の整理をして小休止。ハイカーのおばさんに聞けば、麦草峠まで行かなくても、白駒池口(登山口、2100m)にバス停が有るとのこと。少し得をした気分で池を後にする。約10分でバス停に到着、長かった八ヶ岳の縦走の終了である。全般にあまり良い展望には恵まれなかったが、みんな満足しきった表情だった。花類は意外におおく、他にハハコヨモギ、ミヤマオトコヨモギ、イワギキョウ、コゴメグサ等が咲き、駐車場脇にはタカネマツムシソウもあった。荷物を整理しながら、駐車場の一角にある案内所で時間をつぶす。
土・日のみ運行のバスは、約2時間かけて佐久平駅に進む。みんな眠ることなく、周辺の風景を楽しみながら談笑する。近づく浅間山はガスに霞むが、目新しい風景に満足の様子。駅舎で生ビールで乾杯、信州名物のそばを食べ無事の山行を喜び合う。新幹線?皆さんは指定席、我は自由席で大宮まで立ちっぱなし。新幹線のデッキで皆さんと別れて帰途につく。・・えがったぁぁ・えがったぁ!!また、いぎてぇぇ・・。 阿部 記
コース時刻:根石山荘6:02−6:34東天狗6:40−7:45中山峠7:50−8:17中山8:25−9:13(2300m付近)9:27−10:15白駒池10:37−10:48白駒バス停 |