創業者の心得 五箇条

起業世話人  関 洋一

一、事業とは顧客創り活動である

よく「企業の目的は、利潤の追求である」といわれるが、利潤は事業経営の条件ではあるが、目的ではない。

その証拠に、不祥事が続く大手企業の懺悔の記者会見では、「儲け主義に走ってしまい、消費者が基点だということを忘れてしまった」と異口同音に反省の弁が語られる。利益の追求に走り過ぎると、利益の大本である消費者の利便・メリットが二の次になる。そうすると、当然ながら、顧客が離れてしまい、結果的に利益の獲得などはあり得ない。

だから、「お客様を創ること」こそが、優先度一番の事業目的とされるべきなのである。

 

二、顧客および真の支援者を大事にする

当初思いがけない助成金を貰ったり、強烈なセミナー講師に訳もなく動機付けられたり、行政の手厚い支援を受けたりしている場合には、特に注意すべし。

単に役割から支援されているだけなのに、自分のすべてを肯定されたように勘違いすることがある。この場合、一旦つまずくと潮が引いたように多くの人達が去っていく。

だから、顧客(自腹を切って、事業を認めてくれている人達)とスーパー支援者(役割を超えた部分でサポートしてくれる人達)をしっかり把握し、心から感謝し礼を尽くすこと。

 

三、経営資源は有限であることを忘れない

顧客満足を追求するといっても、全人類のニーズを一企業がすべて充足させることはできない。なぜなら、人間の欲求は無限であるのに対して、企業が使える資源には限りがあるからだ。文字通り、無限を有限で包括することはできない。

とりわけ、零細・中小規模の企業は、自らの守備範囲を明確に絞り込み、その限られたところに徹底的に持てる経営資源を投入することが、唯一企業戦争に生き残る方法である。

 

四、入りと出の多寡を誤らない

収入より支出の方が少なければ、必ず元手が残る。そのためには収入を多くし支出を少なくすることだが、要は、日々支出を上回る収入を確保せねばならぬということだ。

企業の財務の基本は、日々の収支にあり、デコボコの不安定部分を乗りきるための次善の策として資金繰りがある。日々の収支が順調であれば、基本的に資金繰りは不要である。

収入より支出の多い企業が、資金繰りだけで長続きさせた例はない。

 

五、何か一つ成功を体感する

どんな小さなことでも良いが、成功を経験すること。成功するためには、人一倍の努力が必要である。もし、まぐれ当たりで成功したとしても、それは自分が心底納得できるものにはなり得ないし、長続きもしない。成功体験は、一皮剥けたという実感と必ず一緒にやってくるものだ。自らが実感とともに積み上げ納得したものだけが、自信となり信念へ昇華する。