第111号(2002年8月16日)
<グローバルスペース>
米ナスダック社のジレンマ
アメリカの店頭株式市場ナスダックを運営するナスダック・ストック・マーケット社は、鳴り物入りで参入した日本の株式市場からわずか3年ほどで撤退する情勢だ。同社は、24時間取引の世界戦略の一環としてナスダック・ジャパン社に約43%出資し大証のナスダック・ジャパン市場を実質的に運営していたが、現状では事業の採算の目処が立たなかった。同社は、自らが目指している証券取引所として米国初の上場にこの不採算性が大きな障害になると判断し、市場運営という公共性よりも自社の上場要件を優先する。
誰ひとり「俺がだました」と言わない
セキやんひとこと:企業は公器である。特に、投資家の間に立って公正中立を求められる市場は、「信なくば、立たず」で、市場自体の継続が必須の要件である。当該上場企業や投資家は、それぞれ善後策を講ずることで切り抜けることになるが、市場モデルそのものへの信頼感の回復については容易でない。
終戦記念日には、必ず伊丹万作氏の冒頭の指摘(詳細は経営講座第24回参照)を思い出す。15日の日経の社説では、太平洋戦争の敗戦と現下の経済的な閉塞状況を重ね合わせ、和辻哲郎氏の「直感的な事実にのみ信頼を置き、推理力による把捉を重んじないという民族の性向がある」や永野護氏の「ただ器用に目先の雑事をごまかしていく輩がたくさん集まって、わいわい騒ぎながら、あれよあれよという間に世界的大波乱の中に巻き込まれ、押し流されてしまった」などを引用し、理念なき小賢しさに警鐘を鳴らしている。
セキやんひとこと:この点でマスメディアの責任は重く、特にテレビは視聴率ばかり気にして軽佻浮薄な番組で軽薄な世情を助長する愚をゆめゆめ犯してはならない。そして、我々ひとり一人が、やれ軍部が悪いとか官僚のせいだとか犯人探しをするのではなく、まずは自らに直面し、自らをしっかりと見つめることが必要だとつくづく思う。この図式は、今はやりの産地詐称騒ぎにもそっくり当てはまる。
<ローカルスペース>
スーパーの24時間営業 −日経が実施した新・ビッグストア調査より−
東北地方ではイオングループの健闘ぶりが目立ち、店舗面積のシェアが一番で、坪当たり売上高でも上位20店中15店を占めた。一方のヨーカ堂や西友は、大都市圏をはじめとした人口増地域での店舗を保有し成長市場に活路を見出す作戦だ。そして、マックスバリュ新船橋では、24時間営業を実施して売上高を10%強伸ばした。
盛岡市の創業支援室の募集〆切迫る
セキやんひとこと:単に売上高で分析するのではなく、率での対比、すなわち売上高増加率10%と比して人員増加率が低く売上総利益増加率が高くなければ、事業に将来はないという認識が大事だ。例えば、16時間営業から24時間営業へ50%時間延長した結果なら、延長分の単位時間あたりコストは日中に比較すると10%÷50%=20%まで抑えなければ、付加価値アップにつながらない。勿論日中のコストとの平準化は様々な要素から考えねばならないが、24時間営業が経営合理性に合致するかは、甚だ疑問だ。
既報通り、要項はウェブ盛岡で。
セキやんひとこと:今月30日までの受付なので、その気のある方は、記入途中でも連絡乞う。
第112号(2002年8月30日)
<グローバルスペース>
米の良心?
ITC(アメリカ国際貿易委員会)は、日本など5カ国から輸入される冷延鋼板について、ダンピング被害はないとの最終決定を下した。また、米連邦国際貿易裁判所は、ITCの日本製ブリキが不当廉売されているという決定の取り消しを命じた。この中で、「ITCの結論は実体的な証拠に基づいておらず、日本企業の訴えを解決する意思も能力もないのは明らかだ」と、ITCを強烈に批判した。
秋山選手の引き際
セキやんひとこと:このところブッシュをリーダーとする政界の評価は散々だし、ストックオプションバブルにおどった一部の経営者達の軽薄さも露呈している。だが、一時保護主義が懸念されたアメリカではあるが、自由貿易を監視する機能は幾重にもなっており、世界経済のリーダーとしてのバランスを保っているようだ。
40歳の秋山幸二選手がシーズン途中で現役を引退した。バック転でホームベースに着地する姿は、もう見られない。攻走守のバランスが取れ、3割30本塁打30盗塁を達成した名選手の引退の弁は「心技体のバランスが取れたプレーができなくなった。」である。最近は腰痛に悩まされ納得できるプレーができなくなっていたようだが、そこには最後までプロとしての自分にこだわるすがすがしさを感じる。
セキやんひとこと:かたや大相撲秋場所には、貴乃花が7場所連続全休を乗り越えるべく再起をかける。自身で納得する相撲を取りきるように祈りたい。それにつけても、取り沙汰されている大手企業経営者達の引き際の悪さが対照的だ。どこかの政界でも手本にしているわけでもあるまいに・・・。
<ローカルスペース>
まちづくり機関、成果なし −日経調査より−
街づくり機関(TMO)設立済みの171市区では、「活性化がかなり進んだ」が2.3%、「活性化の兆しが見え始めた」が46.8%、「変化はない」が49.7%だった。さらに、基本計画策定済みながらTMO認定のメドが立たないのは123市区にのぼり、理由は「商工会議所の協力が得られない」「商業者の協力が得られない」などが多いという。
岩手の老舗が健闘! −帝国DBの調査から−
セキやんひとこと:一昨年我が一関街づくり塾でも成功事例として研究した長野県飯田市などが取り上げられていた。飯田まちづくりカンパニーは、飯田市や日本政策投資銀行なども出資する第3セクターだが、小回りの利く身の丈に合わせた投資計画であることが成功要因とされる。さもありなん。
創業100年以上の企業は、東北全体で803社、岩手県内には165社となっている。古いところでは、安土桃山時代から続くホテルや江戸時代初期に創業した南部鉄器製造業などがある。その中で、卸・小売の比率が62%と高いことから、北東北の物流拠点としての役割を担ってきたことがわかる。
セキやんひとこと:一方では、県内の企業倒産の半分以上を、業歴20年以上の企業が占めているというデータもある。平成7年が約34%、平成8年が51%と激増し、以後は53%、55%、54%となっている。かの宮内庁御用達で有名な羊羹の虎屋では「かわりばえがしない羊羹を作っているように見えるだろうが、毎日が創意工夫の積み重ねである。」と、常に革新を意識している。そうでなければ何百年も続かない。
第113号(2002年9月13日)
<グローバルスペース>
突出するブッシュへ
9・11から1年。このところブッシュの口撃は異状だ。世界中の市民がただ静かに念じている最中に、世界のリーダーたるべきアメリカ大統領の軽薄さが見苦しい。国連決議もなしに、特定の国をタタキさらには抹殺さえしかねない姿勢には、世界の共感など得られる筈がない。
訪朝の小泉首相へ
セキやんひとこと:毎度おなじみの重職心得箇条の7条を連想させられる。「衆人の厭服する所を心掛べし、無理押付の事あるべからず。苛察を威厳と認め、又好む所に私するは皆小量の病なり。(人は誰でも服従をいやがるものだと察して、無理矢理押しつけてはならない。うるさく立ち入ることを威厳と勘違いしたり、自分の好みで勝手に振舞ったりするのは、すべて人物の器量の小さい事から生じる誤りである)」
不審船の引き上げを尻目に、またかなり過大な期待の中で、金正日総書記との会談に臨む。ここで、重職心得箇条の10条を引用すると、「政事は大小軽重の弁を失ふべからず。緩急先後の序を誤るべからず。徐緩にても失し、火急にても過つ也、着眼を高くし、惣体を見廻し、両3年4、5年乃至10年の内何々と、意中に成算を立て、手順を逐て施行すべし。(政事においては大小軽重の区別を誤ってはならない。ゆっくりでよいこと、急いでやること、先にやること、後回しでよいことも取り違えてはならない。緩慢に過ぎれば時機を失し、急ぎ過ぎれば過ちを招く。着眼を高くし、全体を見廻し、両3年、4、5年ないし10年の内にはどうしようかと心の中で成果目標を立て、一歩一歩手順を踏んで実行せよ)」
セキやんひとこと:首相自身ご推薦の佐藤一斎イズムで、激することなく沈着冷静で粘り強い折衝を願う。
<ローカルスペース>
遠野商業開発が専務理事を公募 −報道各紙他−
8月31日閉店したマイカル系列、遠野サティの改装後の出店業者で組織する協同組合「遠野商業開発」(仮称)が専務理事を全国公募する。企業会計や流通業に精通した40歳以上を対称とし、書類審査と面接で決め、組合を設立する10月初旬に併せて採用する。遠野商工会では「共同の販売促進や店舗の管理運営の指導などを通じて遠野の再生に力を発揮してもらいたい」と期待している。
出店希望者は現在、30〜35店程度で、核テナントには地元の食品スーパーが内定。土地と建物を買い取った市が12月1日の再オープンに向けて改装工事を進めている。
セキやんひとこと:専務理事の報酬は従来から倍増したとはいえ月額30万円とのことだが、遠野市民の思いを受け止めて有能なマネージャーが赴任することを願わずにはいられない。
岩手県の現役管理職を早期退職し今年4月の選挙で初当選した本田敏秋市長は、「企業感覚を取り入れた職員の意識改革」の一環で定例庁議を早朝に1時間半繰り上げるなど、早くも本田色を出している。
第114号(2002年9月27日)
<グローバルスペース>
ガス・ツー・リキッド(GTL)
これは、採掘した天然ガスを低公害軽油(軽油の代替燃料)に転換する技術のこと。この低公害軽油は、硫黄酸化物NOXを排出せず、常温で液体であるという特徴を持つ。また、従来の軽油と比較して、排ガス中の粒子状物質PMが4割、炭化水素が6割少なく、文字通り低公害を実現する。ペルシャ湾地域で複数のプロジェクトが予定されているが、いよいよトヨタグループがイランで計画されている総事業費2000億円の事業に参入することになり、日イ両国政府も支援の方向で合意した。
CRB指数は上昇中だが
セキやんひとこと:この動きは「悪の枢軸」と言われ政治的に不安定なイラン周辺が中心だ。原油については最近米国とロシアの急接近も目立つが、世界のエネルギー地図では中東地域が依然として影響力を発揮している。このプラントでは2005年末には生産開始するというから、資源で勝負できない日本だが、次世代燃料で走行する低公害カーの開発を急ぐなど、結構ビジネスチャンスがありそうだ。
世の中デフレ一色のなか、インフレ指標であるCRB先物指数を見ると、ちょうど1年前の190ポイント台から、今は227ポイントと約15%アップしている。CRG指数は農産物が6割を占めるので、従来の常識からすれば、半年ほど先には少し物価が上昇する流れなのだが・・・。
セキやんひとこと:メーカーが地道に努力して製造原価を節減してのデフレであれば、そうなる。だが、今のデフレ要素はその程度のレベルではなく、旧東側の人々が市場経済に馴染み、名実ともにその一員となり一気に製造コストを破壊しているのが主因だから、CRB指数でも先読みできない。
<ローカルスペース>
決済窓口に動き
郵便局の民営化や銀行の窓口業務見直しなどの論議がなされている間に、すでに市場ではコンビニでの決済が急拡大している。ドコモの携帯電話通話料では1割前後に達し、個人の分での限定ではあるが、都内の電気料金では11%、水道料金では約13%に達する。セブンイレブンの1兆円をはじめ、コンビニ大手6社の今期取扱額の総額は3兆円に上る見通しだ。
住民投票で合併先選択
セキやんひとこと:どんなサービスを利用するかの決定権は、すべて顧客にある。供給者側には、わずか1%たりとも存在しない。供給者にできることは、顧客の利便を確保するという努力を積み重ねることだけだから、本来事業は市場に任せれば良い。だが逆に、市場性だけで要否を推し量ることのできない事象は、しっかりと公的なシステムとして担保し、セーフティネットとして社会的な保障をすべきなのである。
秋田県の岩城町では合併先を選ぶ住民投票を18歳以上の住民を含めて実施する。北側に隣接する秋田市か南側に隣接する本荘市か、二者択一で決する。投票率が50%に満たなければ開票しない。
セキやんひとこと:未成年の18歳以上を含めることについては、議会で賛否同数となり議長の裁定で決まったという。そんな心配をよそに、当の若者達はしっかり投票しようという向きが圧倒的に多いようだ。合併ありきの前提に違和感はあるが、おらが町について真剣に考える良い機会であるのは確かだ。
第115号(2002年10月11日)
<グローバルスペース>
ダブル受賞
東京大学名誉教授の小柴昌俊氏が素粒子ニュートリノ観測の業績が評価されノーベル物理学賞を、翌日には島津製作所研究所勤務の田中耕一氏がたんぱく質などの測定に新たな手法を開発した業績でノーベル化学賞を、それぞれ受賞した。小柴氏は学の殿堂の象徴でありスーパーカミオカンデの実績でも有名だった。一方の田中氏は東大・京大以外の出身で専攻が電気工学の学士で企業人と好対照だ。
優衣庫が中国に出店
セキやんひとこと:小柴氏の業績は当初別の目的で作った装置が数百年に一度という超新星爆発のニュートリノを偶然捕えたのがきっかけで、田中氏も試料に予定外の異物が混入したのがきっかけという。しかし並みでないのは、頭から否定せずに確認して見るという「実験屋」としての基本に徹していることが共通だ。
ユニクロが先月30日に上海の中心部に出店した現地での店名だ。上海市内に売場面積約1000uで2店舗を出したのを皮切りに、いよいよ予定通り中国市場に乗り込んだ。柳井社長は、昨秋のイギリス出店に続き、今後10年で目指している主な世界市場への進出のスタートとしている。
セキやんひとこと:次期社長の玉井氏は、国内で女性向にコンセプトシフトを仕掛けている。国内での苦戦を世界展開で挽回できるか、興味深い。
<ローカルスペース>
県内製造業従業員、昨年8%減 −岩手日報より−
県の2001年工業統計調査速報によると、岩手県内で製造業に携わる従業員は昨年1年間で前年比8%減少したことが分かった。景気低迷や中国への生産シフトなどで、閉鎖・リストラが相次いだことが要因。調査開始以来、減少幅は最大だった。昨年12月31日現在で従業員4人以上の事業所を対象に調査。01年の従業者数は10万3154人で、2000年に比べて9021人(8.0%)減少した。地域別には前年比1割以上減少した地区もある。業種別は電気が前年比4420人(15.3%減)、衣服同976人(9.8%減)、鉄鋼同696人(22.9%減)など。生産拠点を中国などに移す動きが顕著だった電気や衣服で多かった。
2538人に1軒
セキやんひとこと:製造業の苦戦は深刻だが、「仕事とは問題を解決すること」という原点に立ちかえれば、製造業のソフト化を進めることが生き残りの条件になる。今流に言えば、ソリューションの提供ということ。
岩手県内におけるコンビニの密度(総務省統計局資料より算出)だ。2331人の東京都、そして北海道に続いて全国第3位である。通常3000人に1軒が妥当といわれるから、相当な激戦区ということになる。
セキやんひとこと:業界最大手セブンイレブンが岩手での展開に慎重なのは、この辺りにもありそうだ。SEの岩手進出は約2年前で現在7店舗、同じ東北でも山形進出は約3年前で現在96店舗とその差は歴然。