Sekiyan's Notebook グローカルニュース〜経営の腑

セキやん通信「経営の腑」


「経営の腑」第437号<通算752号>(2025年12月5日)

 事業経営の雑音を排す 〜事実情報に立脚して〜
  出典:岩手日報「いわての風」寄稿記事(第36回目 2016年12月11日)

 ここ5〜6年携わった各企業の個別支援では、もっぱら「一倉定」方式を実践し大いに手応えを感じています。
 一倉氏の教えの本質は「事実情報に立脚した経営判断の実践こそが、事業経営の健全化と継続につながる」というのが私の解釈です。
 そして、事業経営は「お客さまの要求を満たすこと」で、「まずはお客さまの要求を把握することがすべての始まり」としています。
 そのお客さま情報を正しく得るために「経営者自らのお客さま訪問」励行を繰り返し説いています。これは、事実情報の中でも、わが社に対する市場の定性的評価を把握する確実な方法です。
 その上で、もう一方の定量的評価の把握策として二つの方法を挙げています。
 一つ目は、売上高年計という簡単なグラフを用いて、売上実績から「お客さまの評価」を確認します。このグラフを一見すればお客さまの評価の傾向が瞬時に分かり、市場の把握に悩んでいる経営者にとっては、まさに福音の強力経営ツールです。
 定量的事実把握の二つ目の道具は、管理会計による正しい「収益性判断のモノサシ」です。これについても本欄で繰り返し述べていますが、一般に普及している全部原価計算方式では、正しい収益性判断はできません(配賦方式の恣意性に混乱の真因があります)ので、わが社の管理会計への組み替えが必須です。これではじめて真の収益性判断指標が手に入り、高収益経営への道筋が見えてきます。
 この定量的な二つの事実情報「お客さまの評価」と「正しい収益性」こそが、高収益のよりどころです。
 なぜなら、高収益体質は「お客さまが支持してくれて儲かるものに、経営資源をたくさん使う」ことでしか実現しないからです。
 経営資源には限りがありますから、「売れ行きが悪く、儲からないもの」に使う資源は減らさなければならず、その判断は「お客さま・市場の評価」と「収益性」が分かってこそ的確になされます。逆に言えば、「闇仕合」というように、市場の評価も収益性も分からない中で、むやみに刀を振り回すことに恐ろしさを感じざるを得ません。
 いみじくも、一倉氏は生前「私が関与した数千社の社長の中で、自分の会社の状況を正しく把握していたのは、たった一人しかいなかった」と述べていますが、私の20年近い経営者との付き合いの中でも、経営状況を的確に把握している経営者は非常に少ないことを痛感しています。
 こうした中、経営者の皆さまと関わると、事実情報と素直に向き合う方は、間違いなく目を見張るような業績の変革を成し遂げます。
 一方、「そうした考えもあるね」程度の受け止め方の経営者は、当然ながら成果は出ません。これが唯一無二の「儲けの鉄則」であることに気づかず、闇仕合を続け地域の名誉職などに明け暮れているような経営者を「ゆでガエル症候群」といい、経営者がそれで破綻するのは自業自得ですが、まじめに働く従業員は報われません。
 これは経営者自身の責任でもありますが、実は周囲の雑音に惑わされている要素が大きく、その意味では被害者といえるかもしれません。この要素の一つである似非コンサルについて、一倉氏は「経営現場でコンサルタントに対する不信の念が蔓延している。それは経営とは何かを知らずに自分の専門分野のテクニックを振り回して押しつけているからである」と著しており、私も同感です。
 事実情報を的確に把握するという本質に則ったやり方で業績を抜本改革した関与先の社長さん方からは、例外なく「今まで、なんと余計なことをやっていたのか!」との感想をいただきます。
 いかがでしょう。社長さん、素直にそしてシンプルに事実と向き合いませんか?大事な従業員のためにも…

出典:岩手日報「いわての風」(2016年12月11日)寄稿記事へのリンク

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