Sekiyan's Notebook
グローカルニュース〜経営の腑
セキやん通信「経営の腑」
「経営の腑」第419号<通算734号>(2025年3月28日)
戦略の誤りは戦術でカバーできない 〜問われる社長の度量〜
出典:岩手日報「いわての風」寄稿記事(第18回目 2011年2月20日)
啄木の「はたらけど/はたらけど猶わが生活楽にならざり/ぢつと手を見る」に共感する向きは少なくない。
そんな中、もう20年以上も昔のことが鮮明に思い出される。
当時中小企業の事業所責任者として、国内業界最大手のメーカーと共同でプロジェクトを頻繁に進めた。先方のメンバーは上場企業のエリートたちだったが、実務能力については、地方の高卒が多いわが方の社員もまったく遜色はなかった。
ところが、当方社員が得ている給料と、かのエリートたちのそれとは雲泥の差があるという事実に、分かってはいたものの、あらためてがくぜんとしたものだった。
そんなことが重なり、その原因はどこにあるかを追求し始めた。そして「戦略の誤りは、戦術でカバーできない」ということに気づいた。そして、役員として戦略面の見直しを社長に進言した結果、事業所責任者の小職の年俸をはるかに上回る報酬を社員に出せる体質に改善するに至った。
まさに、中小企業の戦略面の脆弱さ、それゆえに中小企業者の勤勉さが報われない努力におとしめられているという事実と向き合い、戦略を見直し実践した結果だ。
当時の状態を大げさにいえば、太平洋戦争という勝ち目のない戦争に突入した戦略上の誤りは、いかに優秀な兵士や高等戦術をもってしても、不利な状況を覆せずに取り返しのつかない代償を払うことになった、あの歴史的事実と重なる。
平常の上場企業や役所などの大組織では、程度の低い経営者でも規模の効果で補完されることから、ある程度信ぴょう性の高い戦略のもと、構成員は自らの役割の範囲で業務を全うすることと自分に配分される利益は相関するという安心感のもとにあるので、こうした問題意識は持ちにくい。
片や、混迷する中小企業の多くは、戦略の定まらない中で戦争しているようなもので、社長のピント外れ?の号令で社員を戦死の危険にさらしている例も見られ、自然と社員は切実な問題として体感せざるを得ない。
たとえば、どう工夫しても採算の合わない仕事を、社員が爪に火をともして一生懸命対応しているようなケースだ。これを続ける限り、延々と赤字が積み上がっていくだけで、企業にも社員にも希望も未来もない。
戦略責任者である社長がなすべきは、いかに事業を継続するか、そのためにどう適正な経済的成果を確保するのか、それにはどんな商品やサービスをどこに提供すればいいか、という戦略部分を決定することである。
真面目に励む社員に報いるには、社員に戦術力の向上を要求する前に、まずは社長自ら的確な売り先を決め適正な値決めを実行することだ。
わが県民性として「もうけ方が下手」といわれるが、当地の経営者にとって、これは決して美徳ではなくむしろ屈辱ととらえるべきだ。
少なくとも、自社の創意工夫の結果で獲得する「顧客の要求を満たした報酬金」は、「暴利」とは全く異質なことくらいは、経営のイロハと心得たい。
現に、直近期における社員1人当たり年間経常利益額は某上場企業が9千万円を超える一方、中小企業では黒字企業全国平均でも50万円台だ。
ここ十数年、「来る者拒まず、去る者追わず」で地域企業経営の応援をしてきたが、戦略を吟味する勇気と、直言を受け入れる謙虚さを社長が持つか否かがキモで、これをよりどころにおおかた使命を果たしてきた。
厳しさを増す経営環境は戦術面の手練手管で乗り切れないのは明白だ。それゆえ、社長のこの姿勢が担保できなければお互い時間の無駄になるので、冷たいようだが一切関与しないことに決めている。
出典:岩手日報「いわての風」(2011年2月20日)寄稿記事へのリンク
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