Sekiyan's Notebook グローカルニュース〜経営の腑

セキやん通信「経営の腑」


第66号“クレーム処理に万全を尽くせ”<通算 第381号>(2012年12月21日)

第67号“訪問回数の増加が売上増へ”<通算 第382号>(2013年1月4日)

第68号“商品開発の手順を決める”<通算 第383号>(2013年1月18日)

第69号“商品収益性はこうして”<通算 第384号>(2013年2月1日)

第70号“勘定あって銭足らず”<通算 第385号>(2013年2月15日)

「経営の腑」第66号<通算 第381号>(2012年12月21日)

 クレーム処理に万全を尽くせ 一倉定著「販売戦略・市場戦略」(社長学シリーズ第3巻)より
 クレームというものは、それをどう処置するかで会社の信用を落としもすれば、反対に高めもするものなのである。「顧客あっての企業」である限り、顧客の満足を得ることこそ企業の任務である。そして、クレームは顧客の不満なのだ。だとすれば、クレーム解決は、何をおいてもやらなければならないものである。
 たとえ、そのクレームが顧客の側に原因があろうと、それを突いてみても何の得にもならない。顧客の機嫌を損ずるだけでなく、場合によったら相手を怒らせて取引停止を食らうかもしれないのだ。如何なることがあろうとも、顧客の手落ちや誤りを指摘してはならないのである。
 反対に、明らかに自社の方が悪い場合には、今度は弁解である。いくらそうなった事情や原因を説明しても、お客様は満足してくれない。お客様の欲しいのは弁解ではなくてクレームの解決なのだ。
 クレームに対する正しい態度は謝罪と迅速な解決である。それ以外は一切不要である。
 クレームに対する社長の正しい姿勢にもとづき、正しい処置をすることこそ、我社の信用を高めるのだ。そのための正しい指導こそ大切なのである。
 まず第一にしなければならないのは、「クレームが発生した時に、責任者を叱ってはならない」ということである。クレームを叱ったら、社員は社長に対してクレームを報告せずに、自分達だけでもみ消そうとするようになる。
 うまくもみ消せば問題は起こらないが、これがうまくいかずに、もたもたしていると、お客様は「誠意がない」ととってしまう。社長が知らないところで、知らないうちに信用を落とすことになりかねないのである。
 誰しもわざわざクレームがつくように仕事をしているわけではない。みんな一生懸命やっているのだ。叱ることはやめるべきである。大切なことはクレームを叱るのではなくて、クレームを解決することであり、クレームによる我社の信用低下を防ぐことなのである。
 「お客様のクレームは直ちに報告せよ。クレーム自体の責任は追及しないが、クレームを報告しなかったことに対しては責任をとらせるし、支持されたクレーム対策をとらない場合の責任は追及する」という指導こそ本当なのである。
 お客様からのクレームは、それが出先であったなら電話で、会社に直接きたクレームは受けた者に直ちに上司に報告させる。そして、必ずこれをクレーム報告書(メモ程度のものでよい)を二部複写で、直属上司と社長にそれぞれ提出させるようにすべきである。
 報告を受けた上司と社長は、直ちにお客様に電話で謝罪し、対策を約束し、実行するのである。
 第二には、「クレームは他のすべての業務に優先する」ことである。お客様の立場に立てば、これが正しい態度であることが誰にも分かる。ところが、現実にはこの逆になってしまって、「おっくうだから後回しにする」「仕事の合い間を見てやる」というのが多い。心しなければならないのである。
 第三には、「クレーム処理は金銭的損得は度外視する」ことであり、事業部門や部門採算制のもとでは、「クレーム処理の費用は当該部門の負担ではなく、本社負担とする」くらいにしなければならないのである。

セキやんコメント:  一倉が指摘する通り、「クレーム処理は手続に関するものではなく、社長の姿勢に関するもの」だから、社長が陣頭指揮するのは当然だ。そうした対応をされて、悪い気がする顧客はいない。そこから一転、「災い転じて福となす」に結びついて行く例は枚挙にいとまがない。

「経営の腑」第67号<通算 第382号>(2013年1月4日)

 訪問回数の増加が売上増へ 一倉定著「市場戦略・市場戦争」(社長学シリーズ第8巻)より
 集中効果の法則を戦略方針に基づいて実現するものが、“定期訪問基準表”に基づく全社的な活動なのである。社長は、自らの意図とこの基準表の意味するところをよくよく役員以下セールスマンに至るまで徹底させるための繰り返し繰り返しの説明と説得を行なわなくてはならないのである。
 特にベテランセールスマンは、長年やってきた自らの訪問法が正しいと信じているだけに、説得には根気を要するのである。根負けをしたら市場戦に負けてしまうことを心得ていてもらいたいのである。とにかく、強制的に実施を要求しなければならない。その結果は、社長の要求なるが故に、総べて社長の責任であることをよく納得させなければならない。
 社員というものは、いつも結果の責任を上司から追及され続けている(これは全くの誤りであり、その誤りの責任は100%社長にある)だけに、自分のやり方に干渉されることを嫌い、変えようとはしないからである。
 セールスマンを説得できなければ、市場戦略は最後のところで崩れてしまうことを忘れないでもらいたい。
 この基準表は、3か月ごとに見直す必要がある。やってみると色々なことが分かってくる。それにつれて基準表も修正しなければならない点が出てくる。基準表だけでなく、訪問先の格付にも修正しなければならないことも起こる。要は実情とその変化に合わせて基準や格付を変えることである。そして基準が実情に合わなくなったら、基準を修正してその通り行うということである。「基準が実情に合わなくなったから基準通りやらない」というのは間違った考え方である。というのは、これでは各人が勝手な行動を取ることになって、まさに“烏合の衆”である。基準通りやってこそ基準の善し悪しが分かる。善し悪しが分からないのでは基準の直しようがない。もしも基準が悪いのであれば、その通りやれば悪い結果が生じ、基準が悪い――そしてどこが悪いかが明らかになる。悪いところが分かれば、どう直したらいいかが分かるのだ。だから基準の直しようがあり、その結果として基準がより優れたものになる。この繰り返しで基準がだんだん善くなっていくのである。
 基準書の特記事項の「役員・非営業管理職の訪問基準は方針書による」という一項について説明しよう。
 これらの人々は営業関係者ではないからといってお客様の訪問をしなくてもよいのではない。
 H社にお伺いした時に、社長以下役員も非営業部門の管理職は全然お客様訪問をしなかった。私はそれらの人々にお客様訪問をさせるべきだと勧告した。お客様を訪問しないのでは、お客様の要求が分からないから、どうしても我社の立場が優先してしまう。これは極めて危険なのである。役員会ではお客様の要求が分からずに、とんでもない誤った決定をするに決まっているのである。
 私の勧告に従って、社長は早速お客様訪問を行なって自らの誤りを悟ったが、役員のお客様訪問については営業部門からクレームがついた。「お客様のところへ行って大きな態度をとるのでお客様の感情を害してしまう。訪問をやめて貰いたい」というものだった。お客様とは問屋と小売店のことであるが、問屋は我社の家来だと思っていたからである。そして、H社は販売不振に泣いていたのである。
 それから2年、H社長にお目にかかった時には、H社は業績を回復しており、しかもライバルとの格差を大幅に広げていた。役員会の様子をお伺いしてみると、最近の役員会は、役員のお客様訪問の効果で、極めて活発で適切な意見の出る役員会に変わっているということだった。

セキやんコメント:  営業の行動計画は、各営業マンが勝手につくるものではない。我社の命運をも左右するものだから、営業方針に従い全社で立案し忠実に実施されるべき戦略的なものなのである。

「経営の腑」第68号<通算 第383号>(2013年1月18日)

 商品開発の手順を決める 一倉定著「新事業・新商品開発」(社長学シリーズ第4巻)より
 Y社は金属の表面処理剤のメーカーである。Y社の新商品開発は、対象が主力商品である脱脂剤と脱錆剤に絞られている。そのために、Y社の新商品開発は、方針というよりは商品開発の条件を設定している。
 それは、
  (1)当社の資源(人、物、金、時間)が活用でき、全社的に拡販可能で、マーケットの占有率の大きくなるもの
  (2)開発費は売上高の0.5〜0.6%(研究員一人当たり1日1万円)
  (3)マーケットニーズによるシンデレラ商品で、会社の社運をかけるものは、(1)、(2)にかかわらず推進する。
 というものである。
 そして、新商品の開発手順とチェック項目を明確に決めている。それは次のようなものである。
 1.マーケットニーズ
  ・市場調査、刊行物調査  ・トップ、ミドルの得意先訪問よりの情報  ・営業員の情報  ・技術員の研究過程からの技術的発見
 2.新商品候補のストック
 3.新商品開発テーマの決定
  ・市場または顧客の大きさ  ・性能と特徴…顧客の要望から、マスタベーションはダメ   ・価格…顧客のメリットと当社の利潤の両面  ・プロジェクトチームの編成  ・研究方針…製造原価の目標をはじめから決める時と研究過程から決めるもの  ・予算と期限  ・中間チェックの間隔
 4.開発研究
  ・開発マニュアル  ・基礎研究  ・計画書作成(内容と日程)  ・中間チェック…討議とあわせて実施  ・テーブルテスト
 5.モニターテスト
  ・テスト先の決定  ・データの作成  ・最終確認…使用説明書の確認
 6.発売計画
  ・名称…顧客が覚えやすく、社内整理が楽で簡単なもの  ・価格  ・発売時期  ・宣伝
 このように、チェック項目を決めておくことは賢明である。こうしておけば手落ちが防げるからである。
 よくある例は、品物はできたが箱の手配もれで、みすみす発売時期を遅らせた、というようなことである。とかく品物にだけ関心がいってしまって、発売の必要なカタログ、価格表、梱包などの手配もれが発生することは、しばしばであるからだ。
 明文化しておくことは、このようなミスを防ぐために有効な手段である。一度決めておけば、どの新商品にも適用できるのであるから、面倒がらずに必ず明文化をすべきである。

セキやんコメント:  ルールを決めて継続するうちに、それが会社の文化となっていく。そうすれば、社長がいちいち瑣末なことに口出しする必要もないし、担当社員も実務そのものに専念できるようになる。これは何も商品開発に限らず、企業体としてのすべてに当てはまる。ルールを明文化し、徹底することから始まる。

「経営の腑」第69号<通算 第384号>(2013年2月1日)

 商品収益性はこうして 一倉定著「増収増益戦略」(社長学シリーズ第5巻)より
 まず始めに再確認しておきたいのは、「商品別の総原価は計算できない。できるのは商品別の収益である」ということである。
 なぜこんなことを確認するかというと、ある時の「増収増益戦略セミナー」で2日間にわたって話をし、「商品別原価は計算できない。できるのは商品別収益である」という話をした。セミナーが終わってから、私の手許に来た質問書に、「商品別原価がつかめなくて困っている。どうしたらつかめるか」というのがあった。私はガックリきた。この人は2日間いったい何を聞いていたのかと腹立たしくさえなった。
 しかし、考えてみるとムリもないかも知れない。「どうしても原価が知りたい」という思いでセミナーに出てみたが、自分の考えていることは何も聞かせてもらえなかったのだ。そこで「原価が知りたい」という質問書になったらしいのである。“原価病”にとりつかれると、こうなってしまうから注意しなくてはならない。私が「再確認しておきたい云々…」とはこうしたわけである。
 再確認が済んだら本題に入ろう。商品別収益分析表がそれである。これは単位当たりの計算であるが、期間あたりの実績でも、フォームは同じである。ただ単位当たりを期間当たりに変えればそれで良い。
 付加価値と工数が分かれば賃率は計算できる。賃率とは、むろん実際賃率のことである。ランク付けには、健康商品以下、必要賃率や損益分岐点賃率と比較した評価を記入する。
 方針の欄には「販売強化」「値上げ」「値下げ」「成り行き」「切捨て」などというように、具体的な行動方針を記入するもよし、目標売上でもよし、「高級化」「改良」「品種増加」「小型化」「軽量化」というように、商品それ自体に関するものでもよし、自由自在に社長自身の「こうしたい」という意思を書きこめばよい。
 作成は1年に1回程度で間に合う。その中間では、設計変更や売価変更というようなことがあった商品だけ書き替えればよい。材料費の相場が変わったりすることは、少々のことはあまり神経質に考えなくてもよい。
 ということは、この収益分析表は正確な賃率を知ることではなくて、商品の収益力を知るためのものだからである。収益力は、材料費の多少の変動くらいでは、さしたる変化はないからだ。正確さに目が行くと、個々の商品の小さな変動ばかりが気になって、将来性の有無とか方針の検討や変更というような重要なことに関心が向かず、コストダウンを真っ先に考えてしまうようになり易いのである。一般に、製造業の社長というものは、販売戦略や売価よりも、変動費節減や工数短縮に焦点を合わせてしまう危険が多いのである。
 この収益分析表の検討で大切なことは、関心の第一を「健康」ランクの商品におくことである。これらの商品の売上増大の機会を見つけ出して実現することこそ、最も早く収益を増大させる道だからである。
 それをせずに、「出血」ランクに真っ先に関心を集めてしまうのは誤りである。このクラスの商品は、その殆どが老齢化して、収益性の向上は望めず、将来性もないものだからである。
 「健康」ランクの売上増大にしろ、「出血」ランクの切捨てにしろ、最も効果的に誤りなく行うためには、社長が外に出てお客様の要望を的確につかみとり、競合他社の動きをよくとらえることが、絶対的な条件である。社長が外に出ずに“穴熊”となり、セールスマンの報告を頼りにしているかぎり、正しい決定はできないのだ。

セキやんコメント:  原価管理でなく収益管理で「儲かる」商品を把握すること、そのためには社長自身の地頭を変動損益計算による管理会計に変えることである。それとあわせて、顧客のナマの声に常に触れていれば、自ずと社長の仕事である「高収益構造の確保」が自然と出来ていくものだ。

「経営の腑」第70号<通算 第385号>(2013年2月15日)

 勘定あって銭足らず 一倉定著「社長の条件」(社長学シリーズ第7巻)より
 「先日経理士から出された決算書をみると、先期は思いのほか利益が出ている。しかし、私にはどうしてもそんなに利益が出ているとは思えない。もしも、そんなに利益が出ているのなら、もっと資金繰りが楽になっているはずだ」という、C社社長の素朴な質問である。しかし、社長がこれでは困るのだ。損益と資金運用の関係を何も知らない。よくこれで社長が務まるものだと妙なところで感心してしまう。
 そこで、決算報告書を、先期と先々期分と借りて、社長の目の前で、比較貸借対照表をつくってみせた。正式のフォームではなく、財産の部と借金の部という表現を使ってだ。一倉流である。この表を見せながら説明をする。利益というのは残った金ではない。会計期間中の財産の増減と借金の増減との差額であること、残った金は、現金と当座預金だけである、ということを。
 ところで、あなたのところは、財産はこれだけ増えているが、その内容を見ると、売掛金がこれだけ増えている。つまり「貸し売り」がこれだけ増えているから、その分だけ現金は不足する。また定期預金の増加分だけ手許の現金が減っているのだ。その他、受取手形、在庫、固定資産など財産項目について、その増加の内容を説明する。
 次は借金の部だ。あなたのところは、これだけ借入金が減っている。それだけ借金を返したから、つまり、借金が減った分だけ現金も減っているのだ。……そして、その他の借金項目についても、噛んで含めるように説明して、結局、あなたのところは、財産がこれだけ増え、借金はそれより少ししか増えていない。その差が利益なのだ。利益とはそういうものなのだ、と。やっと分かって貰ったのである。説明する方も汗だくだ。
 社長が分かったからといって、問題が解決したわけではない。資金計画を立てて経営するようになって、はじめてこの問題が解決するのだ。しかし、この社長が決して例外ではないのである。

セキやんコメント:  「勘定あって銭足らず」は、資金繰り関連でよく使われるフレーズだ。それは、企業会計では、収益も費用も現金の入金時ではなく販売(実現主義)したり費消(発生主義)したりした時点で計上されることから、利益金額と資金余裕の時差の説明に使われる。しかし、ここでのケースは、PLとBSの関連性の理解不足からくる社長の違和感だ。いずれ、社長の関心が、単期のPLと同じくらいBSにも寄せられるようになってはじめて財務体質強化に向けた行動が具体化する。

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