Sekiyan's Notebook グローカルニュース〜経営の腑

セキやん通信「経営の腑」


第76号“社長とは「社長業」をやる人”<通算 第391号>(2013年5月10日)

第77号“社長は、常に「最悪」を考えろ”<通算 第392号>(2013年5月24日)

第78号“リーダーシップの現状”<通算 第393号>(2013年6月7日)

第79号“二つの組織状態”<通算 第394号>(2013年6月21日)

第80号“管理の三つの状態”<通算 第395号>(2013年7月5日)

「経営の腑」第76号<通算 第391号>(2013年5月10日)

 社長とは「社長業」をやる人  鈴木喬著「社長は少しバカがいい。」(WAVE出版)より
 社長とは何か?
 よく聞かれるが、決まっている。
 社長とは「社長業」をやる人だ。
 ところが、「現場主義」などと言いながら、社長業そっちのけであちこち走り回っている社長さんが多い。もちろん現場主義は大切だが、それと現場の細かいことに手を突っ込むこととは違う。社長は社長であって、現場のことは担当者がやるのが道理だ。社長にしかできないことをやるから社長なんだ。
 社長の第一番の仕事は、旗印を明確にすることだ。
 会社の基本方針を掲げる。会社が向かう方向を決める。そして、「あっちへ進め!」と社員に号令をかける。いわば、火消しの纏持ちみたいなものだ。
 火事と喧嘩は江戸の花。どこかで火が出たら、火の見櫓の半鐘がジャンジャン鳴る。すると、威勢のいい火消しが我先に飛び出していく。花形は纏持ちだ。いち早く駆けつけて、他の組に遅れじと屋根に駆け上がる。そして、纏をグルングルン回し始める。
 江戸時代の消火活動は今とは違う。当時も竜吐水という放水ポンプはあったが消火できるほどのパワーが無かった。だから、火元から風下の家々を壊して延焼を防ぐ「破壊消防」が基本だった。そこで重要なのは、どの家を壊せばいいかを明確にすること、その判断をするのが纏持ちだ。纏を立てることで、「俺の組はこの家の手前までで火を止めるぜ」ってことを世間と仲間に示すわけだ。
 この判断は難しかったと思う。風向きと風力、地形や家の配置などから総合的に判断しなきゃならない。風向きはいつ変わるとも知れないから、予測を立てるしかない。おそらく、経験と勘が頼りだったろう。常に間違う可能性はある。
(中略)
 悠長に考えてる暇はない。全部木造だから、火の回りが速い。即断即決しなければ、あたり一面火の海になる。よほど腹が据わっていないとできない。命がけの仕事だ。
 纏持ちは一切、消火活動は行わない。ずっと屋根の上に立ち続ける。その間、火の粉が降りかかっていくるから、それを振り払うために纏をグルングルン回してる。
 仲間の火消し人足は、地べたで仕事をしているから周りの状況がよくわからない。頼りになるのは、屋根の上で全体の状況を見ている纏持ちの指示だけだ。
 「風向きが変わったぞ!反対側にまわれ!」「右手の火の勢いが強くなった!そっちへ回れ!」。こんな指示を出してたんだろう。これは、地べたに下りずに、見晴らしのいいところに立ち続けているからこそできることだ。
 僕は、これぞ社長業だと思う。
 本は初めから読むけど、経営とはゴールから始めるものだ。目標を定めて、そこにたどり着くために出来る限りのことをする。ゴールも決めずに、「目の前」の仕事をいくら積み重ねてもゴールにはたどり着かない。ゴールにたどり着くためには、まず最初にゴールを明示しなければならない。ところが、これができない社長さんが多い。

セキやんコメント:  同様に、一倉も「経営者とは、経営をする者である」と述べている。さらに、「社長の仕事は決定、社員の仕事は実施」と、各々の役割について象徴的に定義している。ここも鈴木会長と軌を一にする。

「経営の腑」第77号<通算 第392号>(2013年5月24日)

 社長は、常に「最悪」を考えろ  鈴木喬著「社長は少しバカがいい。」(WAVE出版)より
・備えもなしにホラを吹くのは、本物のバカ
 僕は用心深い。
 悪く言えば、臆病だ。常に、最悪に事態を考えている。
 表向きはふざけたことも言ってるが、その裏で「根暗」にあれこれ考えている。
 (中略)
 すべてはリスクと隣あわせだ。それに備えて何もしないのは、社長として無為無策の誹りを受けて当然。備えもせずにホラ吹いてれば、本物のバカになってしまう。
・「いくら得する?」より「いくら損する?」
 新商品の発売はいつだって博打だ。
 (中略)
 いくらマーケティングをしたところで、誰も未来のことを教えてはくれはしないのだ。
 だから、僕はこう聞く。「コケたら、いくら損するんだ?」
 まず、最悪の事態を考えるのが、判断の第一歩だからだ。そして、「それ、宣伝費は入ってんのか?」「人件費はどうなんだ?」などと、担当者が示す損失予測を徹底的に叩く。
 失敗したときのリカバリー策についても検討する。こうして、あらゆる側面からリスクを綿密に算出する。話はそれからだ。
・「最悪」に備えるから、笑ってられる
 僕はずいぶんと無茶をしていると思われているようだが、実際には細心の注意を払って会社を経営している。無謀なことはしない。わりと小心者なんだ。だけど、いい経営をしている社長さんを見てると、ほとんどがそうだと思う。後先考えずに博打をやっていたら、会社なんてすぐに潰れてしまう。
 ただし、石橋を叩くのが社長の仕事ではない。
 頑丈な石橋をつくって、社員に思い切り仕事をさせるのが社長の本筋だ。
 失敗すれば、PLの見栄えは悪くなる。だけど、あくまでPLは年度決算。極論すれば、毎年の利益が上がろうが下がろうが大した問題ではない。大事なのはBSだ。これまでの「溜まり」であるBSが健全でさえあれば、多少のことで会社が潰れることはない。そして、会社さえ潰れなければ、挽回のチャンスは訪れる。
 失敗したからといって、いちいち社員を責めたりもしない。あんまり間抜けなことをしたら怒鳴ることもあるが、社長がしかめっ面してウジウジ言ってたら、みんなイヤになってしまう。士気も下がれば、アイデアも出なくなる。
 「ご愛嬌だよ。そのうち、いいこともあるぜ」。社長は、そう言ってケラケラ笑ってるくらいがいい。
 そのためには、常に「最悪の事態」を考える。そして、万全の準備をするということだ。

セキやんコメント:   一倉も「最初から大きく儲けることより、万一の場合に損失を最小限に止めるという態度こそ大切である」と述べている。世界の3Mでさえ、そのモットーは「make a little,sell a little,make a little more」だ。

「経営の腑」第78号<通算 第393号>(2013年6月7日)

 リーダーシップの現状  高橋正典著「リーダー学のすすめ」(自社出版)より
 リーダーの本来業務、なすべき仕事は未来を扱い切り拓くこと、描いた未来を実現するために今何を行うべきか決定を行うことである。これがおざなりになっている。
 漫然と受動的に未来を迎えようとしているようにしか見えない。今のままで良しとしているようにしか見えない。リーダーシップが機能していない。
 リーダーがリーダーたる仕事、主体的に未来を拓き、未来を築く仕事をしていない。
 これが閉塞、停滞の原因、失われた20年の真因である。
 ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた80年代の経済絶頂期、80年代の成功は70年代の戦略の成果であるのだが、80年代のリーダーは自分達が打った手の成果と勘違いした。そして有頂天になった。成果の大原則である、現在の成果は過去の戦略・施策の結果であることを忘れて、先輩の手柄を自分の手柄とした。その上、90年代や次世代のための戦略形成を怠った。その結果、90年代以降は展望なき短期的利益志向のリストラの連続となり縮小均衡に陥った。
 失われた20年はリーダーシップ劣化の20年ともいえる。まずはリーダー像について真摯に考え、議論し、組織自体が「目指すべき在るべき理想のリーダ像」を取り戻すこと、再構築することから始めなければならない。
 能力もなく見た目だけそれらしく振舞うリーダーを似非リーダーと呼ぶ。似非リーダーには次のような特徴がある。リーダー諸氏には胸に手を当て考えて欲しい。
  ・躊躇なく結論を出さなければならないのに出せない。
  ・今の成果は今の戦略・施策の結果と思っている。
  ・リーダーの役割、リーダーの本来業務の認識が希薄、あるいは無い。
  ・思考プロセスが血肉的習慣・反射的習慣として身についていない。
  ・人間や組織についての本質を認識していない。
  ・それでもリーダーの地位に就きたいと思っている。
 こうしたリーダーは次のような状況を作ってしまう。問題解決に自信がないので売上未達成というような設定型の問題(売上目標を設定することで生じる問題)に目をつぶる。
 発生型の問題の解決は前例に求め、参考となる前例が無い場合は先送りする。最悪の場合は問題が起こっていなかったと隠ぺいし、問題なしの順調とする。
 (中略)
 組織の不幸の始まりはリーダーに相応しくない人がリーダーの地位に就いた瞬間に始まる。これは古今東西の真理である。

 <本書連絡先: 〒024-0053 北上市大堤西1-2-17 マネジメント・サポート・オフィス TEL:0197-67-6585>

セキやんコメント: 著者とは中小企業大学校用務などで、かれこれ10数年お付き合い頂いている。本著は昨年からの療養期間を活用しての力作である。今回引用部分は、一倉の「経営者は、@未来志向、A構造志向、B外部(顧客・市場)志向であれ!」と相通じる。そしてなにより、リーダーの姿勢に着目している点に共感する。

「経営の腑」第79号<通算 第394号>(2013年6月21日)

 二つの組織状態  高橋正典著「リーダー学のすすめ」(自社出版)より
 組織には二つの状態がある。一つは「革新軌道にある状態」、もう一つはその対極の「不作為の状態」である。
 「革新軌道に在る状態」とは、望ましい状態(理想、ビジョン、志、目標)の実現に向けて、なすべきことが明確化され、次々と実行され、問題も積極的に提起・共有され、解決に向けた行動がスピーディーにとられている組織状態をいう。的確なことがスピード感をもって実施されている。
 革新軌道に身を置いている状態が、組織の正常な状態・健全な状態である。これ以外の状態は、異常・不健全な状態である。
 「不作為の状態」とは、実行は不可欠だといいながら出来ない理由をあれこれ探し出し、行動を先送りし、結局行動しないでしまう、或いは問題はわかっているが面倒なので問題を隠ぺいしたり事実をねつ造したりする、問題は解っているが報告すると上司が怒るので黙っておこう、というような組織状態をいう。停滞感・後手後手感が漂う状態である。こういう状態は異常・不健全な状態であり、あってはならない状態である。
 不作為の組織は、慢性不振に陥りやがて消滅の道をたどる。不作為の状態はリーダーの最大の敵である。不作為の罠にはまってはならない。
 リーダーは、愚痴・ボヤキ・嘆き・言い訳・断定・決めつけ・思考停止用語・思考停止的態度が多い、理想について対話が無い、誰も責任を引き受けない、人のせいにする、環境を嘆くなど、不作為の予兆・兆候(下記参照)を見逃してはならない。
 不作為の兆候
  ・幹部に思考停止注)用語・思考停止的態度が多い。
    注)思考停止=頭が働かない、脳の活動を委縮させる、やる気や元気をそぎ落とす、心を折ってしまう
  ・愚痴・ボヤキ・嘆き・言い訳・決めつけが多い。
  ・問題の隠ぺい・実行の先送り・責任の押し付け合いがみられる。
  ・やり方・方法にではなく、人に原因を求め、人を替えることで問題解決としている。
  ・躊躇なく結論を出さなければならないのに結論を出せない。
  ・決定権を持った人が集まって協議しても決まらない。
  ・環境を嘆く。問題の原因を組織運営の方法に求めず、環境のせいにする。
  ・理想とか、志、ビジョンについて対話が無い。

 <本書連絡先: 〒024-0053 北上市大堤西1-2-17 マネジメント・サポート・オフィス TEL:0197-67-6585>

セキやんコメント: 地域企業と長く関わってきた著者は、リーダーの持つべき人間や組織に関する認識について、深い洞察力をもって改めて整理された。その中でも多くの組織が陥っている「不作為の状態」について警鐘を鳴らしている。さらに、著者が理想とする管理の状態を、次回「管理の三つの状態」から引用・説明する。

「経営の腑」第80号<通算 第395号>(2013年7月5日)

 管理の三つの状態  高橋正典著「リーダー学のすすめ」(自社出版)より

 組織(職場)には三つの管理状態がある。一つは「無管理の状態」、二つ目は「上司管理の状態」、もう一つを「自主管理の状態」という。

 「無管理の状態」とは、目標や意図が無いまたは目標や意図に沿って行動がとられていない状態、誰もPDCA【注】を回していない、烏合の衆の状態で最も寿命の短い組織である。
 「上司管理の状態」とは、上司だけが目標や意図を理解し上司だけがPDCAを回している状態、上司が指示しないと気がつかない、あれこれ指示・命令しないと動きが起きない状態、上司(管理者)に依存した状態をいう。この状態で満足してしまって成長が止まっている組織は非常に多い。理由は、次の「自主管理の状態」を知らないが故である。
 「自主管理の状態」とは、メンバー全員が目的や意図を理解し、目的達成に向けてPDCAを回し改善に結びつけている。メンバーは気づいたことをオープンに話し、メンバーの方から提案や行動が湧き上がる状態、メンバーが自主的に行動する状態をいう。

 リーダーが目指し作るべき状態は、「自主管理の状態」である。上司が指摘したり、あれこれ指示・命令する「上司管理の状態」で、テキパキ指示を出して指図している自分を「私はリーダーシップを発揮している」などと、勘違いしてはならない。
 リーダーは「上司管理」の上には、目指すべき「自主管理」の状態があることを知らなければならない。自主管理の状態を認識しているリーダー、組織は残念ながらまだ少数派である。

 【注】著者は、Plan計画〜Do実行〜Check確認〜Action処置(維持・修正)のマネジメントサイクル・管理サイクルを、管理改善思考プロセスと呼び、定めた目標を確実に実現するための組織運営上の重要な思考プロセスと位置づけている。

 <本書連絡先: 〒024-0053 北上市大堤西1-2-17 マネジメント・サポート・オフィス TEL:0197-67-6585>

セキやんコメント: 多くの中小企業では、何とかして「無管理の状態」から「上司管理の状態」に這い上がろうとしているが、それも儘ならない有様だ。よしんば、上司管理の状態になったとしても、無管理の状態に戻らないよう歯止めをかけるのが精いっぱいのようだ。しかし、著者は「目指すは、更なる高み!」と叱咤激励している。

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