Sekiyan's Notebook グローカルニュース〜経営の腑

セキやん通信「経営の腑」


第156号“何通りもつくってみる”<通算471号>(2015年11月27日)

第157号“基本計画の実現性をチェックする”<通算472号>(2015年12月4日)

第158号“実証作業の具体的な手順”<通算473号>(2015年12月11日)

第159号“簡単な加減乗除でできる仕組み”<通算474号>(2015年12月18日)

第160号“社長は社員の生活向上に責任を持つ人”<通算475号>(2015年12月25日)

「経営の腑」第156号<通算471号>(2015年11月27日)

 何通りもつくってみる  佐藤誠一著「野望と先見の社長学」(1994年刊)より
 付加価値配分の絶対額を書き入れれば、長期計画の運営基本計画はほぼできたことになる。残りの空欄は単純な足し算と引き算で埋めていけばいい。それで一通り完成である。
 少なくともこの段階までは、長期計画は考えていたよりもはるかに簡単だということが、ご理解いただけたのではなかろうか。
 はじめて長期計画に取り組む場合は、付加価値の配分に社長のポリシーをいかに反映させていくかということで、考えの整理に多少時間をとられるかもしれない。だが、ほかならぬ自分の野望の実現と自分の会社の将来がかかった問題だ。そのくらいの時間を割いても、どうということはないだろう。むしろ、夢を描くことに時間を費やすのだから、社長にとって、これは楽しい時間といっていい。
 大ざっぱでいいから、社長として、とりあえず将来へ向けての経営ビジョンをまとめてみることだ。そして、付加価値配分の目標を数字にしてみる。今書いたように、初心者は多少これに時間がかかるかもしれないが、それでも半日もあれば十分だろう。
 このとき、計算はすべて社長自らが電卓を片手にやっていただきたい。
 実際に電卓をたたいていくと、数字のもつ意味が脳裏に響いてくるからだ。ほんのわずかなパーセントの違いが、絶対額に直した場合にどれだけの差になって出てくるかを直接肌で感じることは、経営者としては極めて大事だ。他人の計算した結果としての数字を見るのではなく、自分で電卓をたたき、次々に弾き出されてくる数字を実際に目にすると、社長の頭に意外なほど事業の臨場感を与えるのである。
 最初は多少の苦労をしながらでも、一通りつくってみると、次はもっと短時間で計画が立てられるようになる。慣れてくれば、20分くらいでできるようになるだろう。最善の長期計画を立案していくには、さまざまなケースを想定し、条件を変えた計画を面倒がらずに何通りもつくってみることだ。
 たとえば、最初に社員配分を35%と決めてみたが、現状をよく考えれば37%のほうが妥当なのではないか、と考え直すこともあろう。そのときは社員配分を37%にした計画をつくってみる。あるいは、安全を考えて売上総利益を少し下げすぎたと思ったら、修正した計画を考えてみる。何通りもの計画をシミュレーションしてみることが、後に計画の実現性をチェックする段階で生きてくるのである。

セキやんコメント:  自分が汗して作った資料には自らの魂が入るが、他人の整理した資料は「眺める」だけだ。経営計画策定は、社長にとっての最優先事項なのだから、それに費やすエネルギーは無駄や非効率とは次元が異なることを肝に銘じたい。

「経営の腑」第157号<通算472号>(2015年12月4日)

 基本計画の実現性をチェックする  佐藤誠一著「野望と先見の社長学」(1994年刊)より
 社長の夢の実現計画が、運営基本計画という形に一応まとめられたら、次にその実現の可能性を、経営の三要素である「ひと」「もの」「かね」の面からチェックしていかなければならない。
 人件費の裏づけ、設備投資の裏づけ、運転資金の裏づけ、金融計画の裏づけなどをチェックせず、5年後の売上や利益を設定しても、それだけではまだ本当の意味での長期計画とはいわない。絵に描いた餅が、ちょっぴりリアリティを帯びてきたといったところだろうか。
 これを本物に近づけるには、社長自らが、いろいろな側面から計画の実現性をチェックしてみることだ。そうすることによって、社長の夢や野望がさらに磨かれ、より具体性を帯び、一層明確な確固たる経営ビジョンとなっていく。
 たとえば「ひと」の面から見ても、社員が満足してやる気を出してくれるような給料や賞与を支給していけるか、社長がデカい顔のできる分配になっているか、他の付加価値配分先とのバランスはどうか、その他、人員の問題、働く環境の問題、人材育成の問題など、チェックしなければならないポイントはたくさんある。
 「もの」の面からいっても、将来の業績拡大に向け、設備投資を活発にしたり新たな店舗展開を図ったりしていくのに、この分配で本当にやれるのか、在庫計画はこれでいいのか、資金への影響はどうなのかなどをチェックしなければならない。
 さらに「かね」の面からいえば、自己資金でどれだけやれるか、資金はショートしないか、資金調達をどうするか、融資を受けた場合、会社の収益性や安全性にどう影響するか、税金への備えはどうかなど、チェックするべき点は多い。
 ほかならぬ自分の事業の基本計画である。部分的にではなく全体的に、ポイントをついて的確に、複雑にではなく単純に、基本計画の実現性をチェックしていく。それを社長自らの手でチェックすることが大事なのだ。
 そのために用いるのが、次に述べる@〜Fの計画作成に必要な七つの表である。社長は、これらの表を用い、手順に沿って基本計画の実現性を検証していくのである。これをわたしは「実証作業」と呼んでいる。

セキやんコメント:  いうまでもなく、事業経営というものは全体最適だ。部分的に良くても、それが全体にどのように反映し、どういった効果をもたらすのかが分からなければ意味がない。つまり、闇の中で刀を振り回す「闇試合」の愚を犯さぬよう、部分最適は全体との兼ね合いで判断しなければならないということだ。

「経営の腑」第158号<通算473号>(2015年12月11日)

 実証作業の具体的な手順  佐藤誠一著「野望と先見の社長学」(1994年刊)より
 実証作業の手順を示した部分だけ箇条書きにしてまとめると、次の@〜Fのようになる。
@人件費計画
 運営基本計画の中で、配分のパーセンテージの最も高いのが人件費である。しかも一人当たりの人件費は今後確実に増えつづける。これが狂えば長期計画そのものが狂ってしまうほどの最重要項目だ。5年後も現在のパーセンテージで収まるのか収まらないのか。収めるとしたら新規採用を含めた要員体制をどうするのか。給与水準は社員に対して社長としての役割を果たしたといえるものになっているかどうか。まず「ひと」の面から検証する。
A設備投資計画
 社長の経営ビジョンを実現させるためには、設備の拡充にも前向きに取り組まなければならない。だが資金には限界がある。経営の安全面も考慮に入れながら、もっと生産性が高く効率のいい設備に重点を移していく必要があるが、それをどのくらいの範囲に収めるか。「かね」と「もの」の両面から検証を加える。
B運転資金計画
 基本計画を実行に移していくには、そのための運転資金が要る。いわゆる「資金繰り」だが、それは十分か。短期の資金計画を検証する必要がある。それには、売掛金の回収、買掛債務の支払い、手持ち資金、在庫などについての定石を社長は把握していなければならない。
C税金計画
 税金計算には守らなければならないいくつかのルールがある。社長は大体これを勘に頼りがちだ。基本計画の数値どおりになるかどうか、資金面の補足的なチェックだが、これは経理の担当者にやらせてもいい。
D資金運用計画
 資金をいかに有効に使うかというのが資金運用計画である。それには、バランスシートの右側(資金の調達)と左側(資金の使途)の調和が、無駄なくうまく取れていなければならない。それがどうなっているかの実証作業が必要だ。これにも社長として知っていなければならない経営の定石がある。
E金融計画
 必要な資金は金融機関から調達しなければならないこともある。その場合の金利に対する対策は万全か。借入増加に対する固定預金は大丈夫か。野望だけで突っ走ると、多くはここでつまずき、とんでもない結果を招くことになる。バブル時代の教訓を生かし、十分なチェックが必要だ。
F財務計画
 以上の実証作業を経て、その結果を一枚のバランスシートにまとめたのがこの財務計画である。ここまできて、社長の経営ビジョンは具体的な資金の裏づけを得ることになる。
 ・・・以上が、実証作業の具体的な手順である。
 作業の各段階で用いるそれぞれの表が、実証作業を経て七枚の資料ができて、はじめて会社としての長期計画となるわけである。

セキやんコメント:  実証作業に真剣に取り組むほど、期に突入した途端になすべきことが具体化する。社長の準備が万端だから、社員にもその意図が浸透し、結果として業績に大成果となって表れるのだ。

「経営の腑」第159号<通算474号>(2015年12月18日)

 簡単な加減乗除でできる仕組み  佐藤誠一著「野望と先見の社長学」(1994年刊)より
 はじめて取り組まれる人には、これらの一連の実証作業が一見、いかにも難しそうに見え、億劫で面倒な作業に思われるかもしれない。
 だが、どうだろうか。たとえばわたしは、先にも述べたように、旧制の中学校しか出ていない。バランスシートのどちらが貸方で借方なのか、今もって分からない人間である。そのわたしにさえ簡単にできるのだ。社長は経理でも会計士でもないのだから、専門知識は必要ない。必要なのは、経営の定石と、電卓を使った加減乗除の計算能力ぐらいだろう。だが、それで十分なのである。今述べた七枚の資料にしても、それだけの能力さえあれば十分に実証作業ができるように様式が整えられている。仕組みも簡単だ。
 それでも、数字を見るとジンマシンが出るくらい計算が苦手だとおっしゃるなら、税金計算や金利計算などは一部、経理の担当者に手伝ってもらってもいい。
 だが、基本はあくまでも自分で実証することである。コンピューターも使うべきではない。社長の野望をより具体化していくには、電卓を片手に数字を弾き出していくことだ。それは決して時代遅れなのではない。さまざまな経営判断を加えることによって微妙に変化していく数字を、自分の目で確かめていく。そのことによって、経理や事務の人間には分からない経営発想の偏りや隘路、あるいは新たなビジョンの発展が眼前に浮かんで見えてくる。次の経営判断や対応策は、そこから生まれるのである。
 こうして生まれた新たな判断や対応策は、以前のそれよりも確実に次元の高いものとなっている。それが大事なのである。
 それでは、次章から実証作業について具体的に取り上げていこう。
※セキやん注:次号からは、実証作業の中の主として“考え方”について取り上げます。具体的手順にご興味のある方は、原典を参考に別途お取り組みください。

セキやんコメント:  一貫して述べているのは、管理会計の考え方だ。そもそも管理会計とは「我が社が、どうやったらもっと儲けられるかのヒントを得る」ことが目的だから、一般論ではなく自社方式でなければならない。つまり、「これが、我が社の憲法」と決められるまで、社長自身がトコトン納得することが大事なのだ。

「経営の腑」第160号<通算475号>(2015年12月25日)

 社長は社員の生活向上に責任を持つ人  佐藤誠一著「野望と先見の社長学」(1994年刊)より
 「おたくの会社は、社員の待遇もいいし素晴らしい経営をされている」と言われて、腹を立てる社長はいない。
 大昔ならいざ知らず、今の時代に、社員を安給料でこき使って、利益が増えたと喜ぶ社長は、ほとんどいないはずだ。社員の待遇を今よりもっと良くしてやりたいと、よほどのヘソ曲がりの社長でない限り、だれもが思っている。
 ところが現実には、「思うような利益が上がらないから、社員には申し訳ないが、ほどほどの給料で我慢してもらっている。まあ貧乏会社にはロクな社員しか集まりませんがね」などと嘆かれる社長も少なくない。しかしこれは逆にいえば、自分は一人前の経営者なんだが、社員が半人前だから利益が上がらない、だから冷遇もやむを得ない、という言い訳である。
 これでは社長としての、社員への役割意識はゼロであって、社員どころか外部の人にまでバカにされても仕方ない。本書のはじめに、社員から尊敬されない社長ほど惨めな存在はない、と申し上げたが、お気の毒に、とうなずくしかないのだ。
 社長は、社員の生活向上について、責任をもたなければならない。
 こう申し上げると、「社員の生活向上について責任をもたない経営者など、今時いませんよ」と多くの経営者から反論がでてきそうだ。実際あるセミナーで、結構な年配の方から次のような抗議が寄せられた。
 「十分な給料を払ってやりたいのは山々だが、出したくても出せないから、ここにきて勉強している。社員には、儲かったらうんと上げてやるからな、悪いようにはしないからな、と常々言い聞かせています。責任逃れはしていない。それもこれも一緒に、無能経営者呼ばわりしないでほしい」と。
 伺ってみると、事業を続けて20年以上のベテラン社長であった。創業間もなくのころならともかく、20年間も「悪いようにはしない」と言い続けて、「良くなっていない」とすれば、いくら責任逃れをしていないと言ってもだめである。社長として社員に対する役割を果たしていない、と言わざるをえない。単に情緒的に「悪いようにしない」と言っているだけで、具体的に良くしなければ、社長の役割を果たせないのである。

セキやんコメント:  良く見かけるが、何年間も「どうやったら儲かるかを勉強するため、経営者サークルに通っている」社長も同じで、その間ずっと社員の待遇を上げられない矛盾に陥っている。大変申し訳ないが、これも明らかに社長としての役割を果たさずに、経営者の傷の舐め合いに逃げている典型だ。

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