Sekiyan's Notebook グローカルニュース〜経営の腑

セキやん通信「経営の腑」


第61号“品質を徹底的に追究せよ”<通算 第376号>(2012年10月12日)

第62号“生産性変化率格差”<通算 第377号>(2012年10月26日)

第63号“不用意な開発を戒める”<通算 第378号>(2012年11月9日)

第64号“水の中にたらしたインクの色”<通算 第379号>(2012年11月23日)

第65号“ABC分析表の検討”<通算 第380号>(2012年12月7日)

「経営の腑」第61号<通算 第376号>(2012年10月12日)

 品質を徹底的に追究せよ 一倉定著「新事業・新商品開発」(社長学シリーズ第4巻)より
 新商品開発に絶対欠かせない条件が“品質”であることを肝に銘じておく必要がある。品質に対する正しい態度をもつことが基本条件となるのである。
 ところが、この品質マインドが崩されるおそれのあるのが、“コスト意識”である。
 ある会社の新商品検討会での担当者の説明に「このラチェットは材質的にやや問題がありますが、これ以上のものを使うとコストが高くなりますので…」という説明があった。私はビックリしたり、あきれたり、怒ったりした。「商品というものは、品質と性能が絶対条件と考えなければいけない。コストは次の問題である。だから、試作品ではまずコストを考えずに、考えられる最高の品質を追究するのが正しい態度である。そして期待した品質が得られた後に、今度はコスト低減に取り組むのだ。そのコスト低減も、あくまでも『品質を落とさない』ということを大前提にしなければならない。それは可能なのだということは、私の過去の数多くの経験によって実証されている」と、その心得違いを諭したのである。
 会議が終わってから社長をつるしあげた。「さきほどの会議で、開発担当者に品質に関する正しい態度を教えたが、実はあれは社長に対して言ったことである。品質に対する正しい態度を持たずに何の事業、何の新商品か。お客様の要求に正しく応えられない会社は永久にウダツが上がらないのだ。立派な会社にしたいならば、まず社長が姿勢を正すことである。
 そして、その正しい姿勢に基づく正しい指導をしなければならない。その正しい指導とは、
 一切のコストを無視して、まず完璧な商品をつくれ。具体的には、これこれの要件を満たすものでなければならない(要件は厳しいものを列挙すること)、というものである。そして、まず完璧と思われるものをつくりあげる。それを虐待試験と実際使用テストを併用する(必ずデータをとる必要がある)。悪いところは直して、再び虐待試験と実地使用をする、という繰り返しで、徹底的に品質を追究することである。厳しいテストに耐えて、初めて商品として売り出す資格ができるのである。
 こうなってから初めてコストを考える、という二段構えでなくてはならない」と。

セキやんコメント:  業績低迷の製造会社の多くには、品質が安定しないという共通点がある。品質の安定には様々な課題が隠れているので、品質が安定して不良が減るということは生産課題が解決されていくということに他ならない。だから、品質が安定すれば、グングン生産量が上がり業績も向上することになる。

「経営の腑」第62号<通算 第377号>(2012年10月26日)

 生産性変化率格差  一倉定著「社長の条件」(社長学シリーズ第7巻)より
 ある生産財メーカーである。ごたぶんにもれず激しい競争にしのぎを削っていた。主材料である鋳物が大幅に値上がりしてゆくだけでなく、賃金は上昇し、運賃が上がり、諸経費は増大してゆく。このままでは赤字転落は目に見えている。いったいどうしたらいいのか。
 私は「値上げをしなさい。それ以外に当面の方策はない。といって、一社だけではダメだ。業界で話し合って協定するのだ」と勧告した。その理由は次の通りである。
 多量生産品ならば、設備投資や方法改善によって大幅に生産性を高めることができる。このような「生産性変化率」の大きな業態であれば、これによって増大する資金・経費を吸収して、売価を上げずにやっていける(これとても永久ではない)。
 しかし、生産財のような生産量の少ないものは。設備や方法改善による効果は、多量生産品に比較すればはるかに小さい。つまり、「生産性変化率」の小さい業態なのである。だから、賃金などの上昇を生産性上昇で吸収することはできない相談なのだ。値上げする以外に方法はない。それを業者がお互いに張り合って競争していたら、共倒れになる。早く協定して値上げをしなさい。それをやるのが経営者の務めだ、というわけである。
 社長は立ちあがった。同業者に呼びかけたら一社の反対もない。たちまち話がまとまってしまっただけでなく、社長は同業者から感謝され、大いに男を上げたのである。
 生産性変化格差は、どうにもならないのだ。そして、インフレがある限り、賃金上昇がある限り、生産性変化率の小さな分野では値上げをするかつぶれるか、さもなければ転進するか、いずれかの道を取る以外に方法はないのだ。
 生産性変化率格差の実態を知り、それに対応する手を打たなければ、会社はつぶれてしまう。そして、それをやるかやらないかを決めるのが社長の役目なのだ。
 国際紛争・世界経済・自由化の嵐・技術革新・後進国の台頭・人口の変化と消費者変化・流通革命…企業を取り巻く環境はめまぐるしく変わる。そして、それらの変化が直接間接に、緩急とりまぜて企業に影響を及ぼす。もしも変化への対応を誤ったら、会社はたちまちピンチに陥る。
 社長こそ、その変化を見極め、それに対応する戦略を決定する人なのである。社長が企業の内部にばかり目を向けていたら、その会社はつぶれてしまうのである。

セキやんコメント:  これは今から34年前の1978年に著されたものだ。当時はインフレ基調で今はデフレ基調と時代状況は異なるが、生産性変化率に対する社長の認識は不変だ。デフレ下の少量多品種に対応する経営者の責任として「値下げしない(利益確保)か、転進するか」に真剣に取り組まなければならない。

「経営の腑」第63号<通算 第378号>(2012年11月9日)

 不用意な開発を戒める  一倉定著「社長の条件」(社長学シリーズ第4巻)より
 たくさんの会社で、不用意な開発が多すぎる。それが、単なるムダで済まずに、会社をピンチに追いやるようなことになったら大変である。
 新商品、新事業というものは、物の本に書いてあるほど簡単なものではない。それらの本は、成功した事例の最も華やかな面だけを抜き出して書いているのである。
 現実の開発というものは、長期間にわたる、苦しく地道な努力が必要である。しかも、その選択を誤ると、それらの苦心や投資が総て水の泡となってしまうのである。
 また、たとえどのように優れた商品が開発されようと、販売法が間違っていれば、これまた成功は覚束ないのである。
 だから、開発とはどんなことであり、何をしなければならないか、何をしてはいけないかについての、正しい知識を身につけていなければならないのである。
 それらの知識を身につけた上で、社長自ら開発方針を決定し、自ら開発テーマを選定し、その推進を自ら指揮し、自らの市場観測による分析から販売戦略と市場戦略を決定し、自ら陣頭に立って売らなければならないのである。
 そのようなことを、社長自らやろうとせずに、社員まかせで成功する筈がないのである。
 もしも、社員に任せてもよいようなものなら、そうしたものは初めから「我社の将来の収益」など期待できないと知るべきである。
 私にいわせれば「我社の将来の収益を得るための活動こそ、社長の最も重要な役割である」ということになる。
 「今日の収益」をあげることは社員に任せ、「明日の収益」をあげることを社長が行なうのが本当であるにもかかわらず、「今日の収益」は社長が取り組み、「明日の収益」を社員に任せているという社長も、決して少なくないのである。本末転倒も甚だしい。
 もしも、社員に我社の将来を築くための商品を開発し、販売戦略を立てて推進し、優れた成果を実現できる人材がいるならば、その人材こそ社長としての資格十分であるから、その人材を社長に抜擢し、自らは会長になることである。
 自ら我社の将来を築けないならば、そうすることが最も賢明な策だからである。

セキやんコメント:  我社の将来の収益を確保できるような社員はいない。もし居たとすれば、さっさと独立して自分で事業を始めているはずだ。また、そうしたことを社長が考えること自体が問題だ。それは、社員の給料で社長の働きを要求するということであり、これを称して「搾取」といい、ひとでなしのやることだ。

「経営の腑」第64号<通算 第379号>(2012年11月23日)

 水の中にたらしたインクの色 一倉定著「市場戦略・市場戦争」(社長学シリーズ第8巻)より
 いま、一滴のインクを水の中にたらしたとしよう。
 それがプールに満たされた水の中だったら、インクの色は全くつかない。いや、洗濯機の槽どころか、洗面器の中でも色がつかないか、ついてもごく淡いものだ。
 ところが、茶碗の中の水だったらハッキリ色がつく、盃の中の水だったらさらに濃くなる。
 このインクの色の濃さが占有率の大きさだと思ったらよい。
(中略)
 多くの社長のおかす誤りのまず第一は、カバレッジ(カバーをしている率…問屋・小売店の何%をカバーしているかということ)を最も重視して占有率に関心を示さないことである。輸出ならば総べての国に輸出すること、国内ならば総べての県、総べての都市に売上げ実績をつけることが売上げ増大の道だと頭から思い込んでいることである。問屋では、自らの商圏の中のすべての小売店に売上げ実績をつけることこそ売上げ増大の必須条件だと思っている。まずは、大きな国、大都市、大会社に売上げ実績をつけることを考える。
 それらに対して少しでも売上げ実績がつくと、「これで一安心」と思い込んでしまい、そこで占有率を高めることよりも、まだ進出していない国や都市、未取引の会社への売上げ実績をつけることに関心の重点を移してしまうのである。
 占有率など、どこ吹く風である。あとは漠然と「売上げをもっとあげたい」という願望だけで、販売部門にドライブをかけることだけしかやらないのである。
 第二の誤りは、進出している地域のうち、最も売上額の小さな国・都市・得意先の売上げをもっと上げなければならないと思い込んでいることである。何故このように考えるかというと「他よりも売上げが少ない。だから他所並みには上がる筈だ」ということらしい。何とも困ったことである。売上げの少ないところは、我社の事情――遠距離だとか、人手が足りないなどで販売活動ができないからである。もしもその地域の売上げをあげるために人員を投入したら、その分だけ従来の地域への投入人員が減って、そちらの売上げが落ちるのだ
 この点を全く考えずに営業部門にハッパをかけるのは誤りである。
 たとえ、営業人員を増加してこの地域への人員投入が可能になったとしても、そこは空白地域ではないから既存の業者が頑張っている。その業者に戦いを挑んでも、ことは簡単には運ばないのだ。
 そんなことをするよりも、そこに新規投入する人員を我社の既存の地域に新規投入する方が、遥かに大きな成果をあげられるのだ。この点をこれまた全く考えないのである。
 以上のような誤りを犯すのは、市場占有率こそ企業の存亡に関する重大事だということを認識していないからである。社長たるものは、「ただムチャクチャに売上げ増大を焦っても成果は上がらない。正しい市場戦略を持ってこそ戦果をあげられるのだ」ということを肝に銘じて、自ら取り組まなければならないのである。
 その市場戦略を立てるために必要な占有率に関する知識を持っていなければならない。この知識のあると無いとでは、その戦略に天地雲泥の差ができてしまう。

セキやんコメント:   「あそこも知ってる、ここもやってる」というのが、カバレッジ志向社長のパターンだ。そうではなく、「ここは、当社のショバだ!」をしっかり確保する占有率志向こそが大事なのだ。

「経営の腑」第65号<通算 第380号>(2012年12月7日)

 ABC分析表の検討 一倉定著「経営戦略」(社長学シリーズ第1巻)より
 分析表の検討は偏りを読み、この影響がどこにどのような現象を起こしているかを知り、手を打つことである。ごく一般的で基礎的な事柄をあげれば、
  1.一社または一商品で、総売上げに対する比率が高すぎれば危険である。如何なる商品であろうと会社であろうと、何としてもその比率を下げるべきである。これは、他の得意先または商品の売上げを伸ばすか、新商品または新事業を加えるかである。
   ナンバーワンであっても総売上げに対する比率は30%以下が安全である。
  2.下位5%の部分は、得意先数の約50%、商品アイテム数の50%が平均的である。これらは、その殆どが限界的である。
   商品または得意先の半数で売上高の95%を占めていて、あとは成長の見込みも収益性向上の見込みもない商品または得意先だとは、何とも非効率なことではないか。たった5%の収益の部分に、営業活動の20〜30%をかけているのが一般的である。
   だから、この部分を切捨て、ここにかけていた努力を、もっと効率の良い活動に投入することである。
   以上の点の認識を、私が過去においてお手伝いした会社の大半が持っていなかったのである。
   この点の認識を持ってもらうために、私は“ABC分析”という考え方を“95%の原理”という表現をとって強調しているわけである。
  3.下位5%の中にも、まだ取引が浅くて将来に希望が持てる、まだ小さいが魅力的な会社で成長力がある、というような会社が混じっている場合もある。こういう会社は切捨てずに将来的に期待することも大切である。こういうことは、以下その他何社では検討できない。また、切捨てはリストを作成して徹底を計ることが大切だが、この場合にも社名をすべて載せているABC分析表が役立つのである。商品についても同様。だから、すべてリストアップしなければならないのである。
  4.上位の会社または商品ほど、生産が間に合わなかったり、在庫が切れたりして、お客様にご迷惑をかけたり、売り損ないを起したりするものである。上位品の思い切った在庫増大を行なうと、売上げはたちまち上昇するケースに私はシバシバ出会っているのである。
  5.商品別売上高ABC分析表は、得意先が問屋または小売店の場合には、売れ筋情報として提供すると、意外なほど喜ばれるものである。
  6.メーカーの社長は、我社の商品の売上高ABC分析表を持って、小売店舗を廻って見ると、売れ筋商品程フェース品切れが多く、売上不振または死に筋商品程フェースに並んでいることを発見する筈である。リピート・オーダー(補充発注)がいかにうまくいっていないかが骨身にしみる程よく分かる。この状態の解決が売上増大に通じることはいうまでもないのである。
 以上のようなことは、大方の社長の“意外な新発見”であることを、私はイヤという程見せつけられている。

セキやんコメント:  経営資源は有限だから、その限られた資源を「儲からないもの」から「儲かるもの」にシフトする導きこそが、社長の最大の役割である。日常仕事への口出しは野暮で、経営者としてヘボである。

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