「経営の腑」第396号<通算711号>(2024年5月10日)
第三章 クレーム処理に誠意を尽くす 社長の販売学(一倉定著) 産能大学出版部1991年刊より
1.商社が仕入品の責任を持って(機械部品の商社)
納入部品にクレームが出た→即刻駆けつけてお詫びをし、直ちにクレーム処理のために、仕入れ先のメーカーと掛け合って立派に直してしまった
自分のところで作ったものでない品物を、自らの責任として立派に処理し、事後に増注
2.潔い弁償金(ラミネート製造業)
アフリカのワイン工場向けの包装紙クレームで500万円の弁償金要求を言い訳なしで飲んだ→手柄となった先方担当役員は喜んで、新規案件(売上2億円で粗利8千万円)を発注
エビ、鯛。たとえこちらに非がなくても、クレームに反発してみても何の益も生まない
3.心の株主(レストラン)
お客様のクレームは直ちに社長に報告される→社長は即刻お客様のところへ出向き謝る→クレームのハガキは台紙に貼って回覧→必要に応じて書き込む→店長は全員に徹底させる
クレームをいただいたお客様は“心の株主”として毎年12月には忘年会で親睦を図る
4.クレームと同時に駆けつける(牛のモツ納入業者)
納入先のスーパーからのクレームに駆けつけたら、もう1社が納入したものでその会社の担当が来ていなかった→その後、特別に1社仕入れで独占となった
クレームをつけた業者が言い訳やチャランポランな無責任な行為をすると怒るが、誠意を持って対処し、責任ある態度をとると、かえってその会社を信頼するものなのだ
5.お客様が感激してしまう(塩ビホースの専門メーカー)
徹夜で検査し、不良品をすべて除去。原因は材料を納めたメーカーの手違いで二級品が納品されていたことだったが、そのメーカーが客先にお詫びに行くことを止め、さらに感激
6.責任の範囲を明確にしたが・・・(商社)
クレームは自分の責任範囲ではない←責任明確化は企業の凶器である
「自分の責任として決められていないことは責任を持つ必要はない」と反応
規定や決めごとの弊害→決められていないことは誰もやろうとしないか何をやっても構わない
会社で必要なものは「責任」ではなく「責任感」であり「常識」である。それはあくまでお客様に対する責任感である
7.正しいクレーム処理とは
(1)クレーム処理は、すべての業務に最優先しなければならない→具体的な対応手順構築
(2)絶対に言い訳をしてはならない
(3)クレーム処理には、費用と時間はいっさい無視し、ただひたすら、お客様の満足だけを考える
(4)クレーム自体の責任はいっさい問わない。クレーム不報告の責任を厳しく追及する
*クレーム処理に誠意を尽くすことこそ、社長として絶対に必要なことである。
これこそ、お客様に対する社長の誠意である。クレーム処理にこそ、社長の正しい姿勢が問われるのである。
セキやんコメント: ある意味「クレームはチャンス」である。まともなクレーム処理を怠っている同業者の中で、社長が正しい姿勢で「クレーム」と向き合うだけで、圧倒的な差別化になるからだ。
「経営の腑」第397号<通算712号>(2024年5月24日)
第四章 我社の内部資料「売上」を読む 社長の販売学(一倉定著) 産能大学出版部1991年刊よりP>
1.売上高ABC分析表
(1)売上高の大きな順に (2)必ず全部表に載せる (3)千円単位の売上高のみとする。情報は種類が多いほど理解しがたくなる (4)個別とは総売上を100%とした場合の個々の売上金額の比率 (5)累計とは、売上高順位の上位からの累計比率。全部は必要なし。ベストテン、80%、95%、98%、99%のところで、その他は空欄
ABC分析表の検討
(1)1社または1商品への依存は危険だ。ナンバーワンであっても総売上に対して30%以下が安全
(2)下位5%の部分は、全数の約50%が平均的で、そのほとんどが限界的である。成長の見込のない5%の部分にエネルギーの20〜30%かけている。この部分を切り捨てて、ここにかけていた努力をもっと効率の良い活動に投入することである(95%の原理)
(3)下位5%の中にも、まだ取引が浅かったり希望が持てる取引先や商品が混じっていることがあるので、社名や商品名を全部網羅したリストが必要なのである
(4)上位の会社や商品ほど生産が間に合わなかったり在庫が切れていたりしているので、上位の増強をすると業績は抜本的に改善する
(5)商品別売上高ABC分析表は、得意先が問屋または小売店の場合には、売れ筋情報として提供すると、意外なほど喜ばれる
(6)メーカーの社長は、我社の売上高ABC分析表を持って、小売店舗を廻ってみると、売れ筋商品ほどフェース切れが多く、売上げ不振または死に筋商品ほどフェースに並んでいることを発見する筈である。補充発注がいかに上手くいってないか骨身に染みるほどよく分かる。この状態の解決が売上増大に直結するのは言うまでもない。→何も四ない「訪問しない」「値引きしない」「配送しない」「掛け売りしない」
2.売上年計表
(1)商品又は得意先は、売上高の80%が理想だが、あまり多くなる場合には上位10〜15位
(2)月は必ず1月からでなくても良い。現実的には決算期に合わせると良い
(3)各年度の月別売上を千円単位で記入
(4)年計(移動累計ともいう)は季節変動を除いて裸の数字を見るもので1カ年間の数字を1ヶ月ずつ移動して累計する
(5)この表は毎月記入していくので、少なくても来期分くらいは記入できるように作る
売上年計グラフ
(1)総売上年計グラフはすべての年計グラフに書き入れる
(2)個々の年計グラフ、たとえば主要得意先別年計グラフは得意先だけを記入し、商品別や損益科目の年計を入れてはならない。見にくくなるだけである
(3)主要得意先年計グラフは、全社で1枚。この中にベストテンくらいを記入する
(4)目盛りをどう決めるかは、見やすさ、使いやすさを左右する決め手である→第1に、タテ目盛りは必ず「0」から出発する。第2に、横軸の1年間の目盛りの2〜3倍を総売上の金額にする。第3に、総売上の目盛りが左側の単位を使っていたら、その10分の1を右目盛りとし個々の売上金額の目盛りとする
3.売場効率分析
(1)小売店舗の絶対的制約条件は「売場面積は限られている」ということである
(2)単位陳列長あたりの多い仕入れ先に対しては、陳列長を増やして売上金額順の商品名の情報を出して貰い、まだ仕入れていないものを上位から順に仕入れに加え、陳列長当たりの売上金額が少ないものは陳列長縮小または切り捨てを行なう
セキやんコメント: 売上高はわが社に対する定量的な「お客様の評価」だから、上記の指標だけで十分だ。
「経営の腑」第398号<通算713号>(2024年6月7日)
第五章 価格政策を持て 社長の販売学(一倉定著) 産能大学出版部1991年刊より
1.価格政策は机上論か実践論か(染工場)
盲腸(あっても役に立たない)社長と何も専務→損益分岐点以下なら受注するな
価格政策とは、生き残るための最低価格を設定し、そのための目標、方向付け、活動方針などを決めて社長が陣頭指揮に立って指揮すること
2.指導をすればやってくれる
目標価格(利益率目標)を示す→営業マンの反発→売れなければ売ってこなくても良いと言う→ちゃんと売ってくる
3.売価は原価から決まるのではない(熱半導体メーカー)
商品価格というのは、原価に対する正当性ではなくて、機能に対しての正当性でなければならない
4.流通業者は高マージンを望んでいる
流通業者の立場を考えないメーカーは決して少なくない
ディーラーに高マージンで、急成長
5.価格基準を設定する
日本人は明文化されたものには従順である←価格基準表
価格基準を下回る場合には、必ず社長の事前承認→社長がすべての価格を把握できる
これだけで、会社の価格体系はかなりの自由度を持ちながら整然たるものとなる
第六章 蛇口作戦 社長の販売学(一倉定著) 産能大学出版部1991年刊より
1.複写機が売れないというが(事務機・事務用品・文房具の納入業者)
新規と買替が半々→買替客の半数を逃している
訪問の目的は顧客確保である→訪問は、定期訪問でなければならない
1年半後には突然変異的な驚くような成果が出る
2.定期訪問基準
定期訪問基準表・・・個々の得意先の格付け。3ヶ月ごとに見直す
月間定期訪問計画表・・・必ず1ヶ月でなければならない。営業は戦闘であってピクニックではない
3.蛇口作戦のいろいろ
(1)同行訪問 (2)小売店出向作戦 (3)蜂蜜作戦 (4)一本釣り作戦
4.蛇口作戦で赤字脱出(襖メーカー)
手間はかかるが、3割高の特寸に活路←試作品の同行販売
5.蛇口作戦こそ販売の本道
問屋の内部では、1%の原理に達しない商品は誰も面倒見てくれない
いつ、いかなる時でも、メーカーは自らの商品は自ら売るのが本当の姿である
問屋の販売網を使って小売店に行き、小売店の店頭を借りて自ら売る
問屋に払うマージンは、販売網利用料であり小売店の売場借用料(ショバ代)である
セキやんコメント: 第五章では自社の収益構造と顧客の要求を踏まえた価格政策のキモ、第六章では販売の本質を踏まえた訪問の実践方法が述べられている。これらは、机上の空論ではなく、現場での実践から生まれた知恵である。したがって、当然ながら結果が出るのだ。
「経営の腑」第399号<通算714号>(2024年6月21日)
第七章 市場戦略を持て 社長の販売学(一倉定著) 産能大学出版部1991年刊より
1.過当競争などは存在しない
お互い相手のことを知らずに、ただメチャクチャに刀を振り回しているだけの“闇仕合”
競争関係にある会社の年商額他のデータを収集しなければ実態が見えない
2.市場占有率と限界生産者
市場占有率がある程度を越えて低くなると、もはや生き残ることができない→限界生産者
限界生産者(マージナルサプライヤー)は、不況や経済変動の影響をまっ先に受ける
3.占有率の持つ特性
(1)独占的占有率:70%以上…断然たる強みを持ち、他社の追随はほとんど不可能である。敵は内部にある
(2)主導的占有率:40%以上…業界のリーダーシップを握れる。従来通りで、占有率は自然に上がっていく
(3)不安定な一流:25%以上…地位は不安定、占有率が上がってきた場合と下がってきた場合の対応は異なる
(4)過渡的占有率:25〜10%…とにもかくにも営業活動の強化。セールスマンの増強と全社でのお客様訪問
(5)限界的占有率:10%以下…いいも悪いもない。とにかく、社長の死に物狂いのお客様訪問以外ない。2〜3年続く
4.ランチェスター法則
(1)第一法則:一騎打ちの法則。敵の強いところには近寄るな
(2)第二法則:集中効果の法則。飛び道具の戦いでは、一人あたりの危険度はその人数の二乗に逆比例するディーラーに高マージンで、急成長
5.ランチェスター戦略の定義
(一騎打ちの法則に従い)市場を細分化し、優先順位を決め、これに従って一つひとつのテリトリーまたはチャネルに、(集中効果の法則により)敵に勝る戦力を投入することで、その地域またはチャネルの占有率を高めていく
第八章 ランチェスター戦略を推進せよ 社長の販売学(一倉定著) 産能大学出版部1991年刊より
1.地域特性を知れ
名刺メイシに書かれた営業所の所在地は、非常に重要な意味を持っている
2.三点戦略(薬のヒグチ)
2等辺三角形で店舗展開し、空白圏は時間が埋めてくれる
3.1日2回訪問(赤福)
近鉄の駅→線での店舗展開。セールスマンの移動時間をおさえサービス時間を多くする
4.市街地戦略(家庭用掃除具メーカー)
半径2kmに絞り、多頻度全戸訪問
5.東北地方制覇の端緒を拓く(衣料品問屋)
特定品種における商品力は、アイテム数の二乗に比例する
何もかも揃えようとすると、何もかも揃えることができなくなる。商品、地域を絞り込む
セキやんコメント: 一倉は、弱者にも強者にも活用可能なランチェスター戦略を「市場を細分化し、優先順位を決め、これに従ってひとつ一つのテリトリーまたはチャンネルに、敵に優る戦力を投入することにより、その地域またはチャンネルの占有率を高めていく戦略」と定義している。小が大を破る基本は、個別撃破である。
「経営の腑」第400号<通算715号>(2024年7月5日)
第九章 支援体制を整備する(1) 社長の販売学(一倉定著) 産能大学出版部1991年刊より
1.セールスマンを充実させる(建材販売業者)
テリトリーを選定し、具体的な訪問回数を算出し、必要な人員数をはじき出す。利益計画や人件費枠とすり合わせて、可能な限り増員する
売上ノルマや歩合制をとるな→修理依頼やクレーム処理を放置するなど、市場戦略の方針から逸脱する
商品知識の教育はダメ→ルートセールスの多くの場合、お客様の方がずっと詳しい。商品説明書や説明ビデオを用いるのがお客様に対する正しい態度である。それで間に合わない場合は、責任者から後日文書による回答をする
2.供給体制を整備する(製造業)
製造業者は最高売上高月の2倍または平均月商の3倍の供給体制をどう実現するかを考えるべきである
占有率を上げるには、繁忙期やピーク時に十分な在庫または供給力を持つことによって、他社の間に合わない分を奪ってしまうことだ。…閑散期の備蓄戦略
3.在庫政策
在庫政策とは市場戦略推進のためのものだ。従来の在庫管理のような内向きの在庫回転率を重視していたら、戦いに不利な状況を自らつくることになってしまう。「いかなる状況下においても、時とところを問わず、品切れを起こさず納期を守るための在庫を確保する」
在庫基準:上位より金額累計50%の品物は最低限2カ月以上、できれば3カ月を考えるべきである。(もちろん季節商品は除く)
在庫増による金利負担:年利6%として1カ月当たり0.5%、在庫増1,000万円につき1カ月5万円。この金利を賄う売上増は、益率10%で50万円、30%ならたった17万円にすぎない。在庫増による売上増を考えず、金利増だけを考える愚を犯している会社は多い。こういう会社は、売上減少という犠牲の上に手に入れた“在庫回転率向上”を喜び、それの数十倍いや数百倍にも及ぶ収益減少を忘れている
4.柔軟な製造体制
納期の3か月前に内示を貰う(修正、変更OK)
飛び込み注文の要求権は営業部長、それに見合う仕事量の納期遅延権は製造部門にある
5.管理盲信を戒める (次号に再掲)
コスト、能率、効率、生産性、回転率、円滑化というような、伝統的なマネジメントの思想は、すべてお客様の要求に反しないという条件のもとでのみ正しいのである
自分がお客様の立場だったら、どうしてもらいたいか、がすべてである
市場の変化に対応して変わらなければ生きていけない企業の組織理論に、変化を阻止するという特性を持った市場なき組織の理論を導入してしまったことが、現代の企業組織に矛盾と混乱を生み出し続けている
セキやんコメント: このところ企業様の会議の席上、金融機関出身者と同席することが良くある。変転する市場やお客様が相手の事業経営なのに、この手合いは上から目線のあるべき論で静止的にモノを言うから、中小企業内ではほとんど浮いてしまっている。間接人員は、直接人員の地味なサポート役が務めなのに・・・