Sekiyan's Notebook グローカルニュース〜経営の腑

セキやん通信「経営の腑」


第141号“社長としてのBS二つのおさえどころ”<通算456号>(2015年8月14日)

第142号“社長流のBSにつくりかえる”<通算457号>(2015年8月21日)

第143号“次の主力事業や商品を追加する”<通算458号>(2015年8月28日)

第144号“経営分析数値をどうとらえるべきか”<通算459号>(2015年9月4日)

第145号“気楽に社長の夢を描いてみる”<通算460号>(2015年9月11日)

「経営の腑」第141号<通算456号>(2015年8月14日)

 社長としてのBS二つのおさえどころ  佐藤誠一著「野望と先見の社長学」(1994年刊)より
 自社の体質・体力を知ることなく長期計画をつくっても意味がない。
 前章までに、わたしは「長期計画は企業の実態、現状を把握することから始まる」と述べた。企業の体質が、良い状態なのか悪い状態なのか、問題点はどこにあるかなどを知ることが、長期計画作成の第一の基本なのだ。
 ところが、多くの社長はこの肝心の実態を正確にとらえていない。
 たとえば、周囲を少し見回しただけでも、将来の経営を非常に難しくするような資金の調達を不用意にしている会社が意外に多いのが目につく。社長に方針がないために必要以上の在庫を抱えて、事業の収益力を大きくマイナスさせているのに気づいてないとか、資金が固定化されすぎて、万一のときにどうなるのか心配になるバランスシートにお目にかかるのは珍しくない。こういう経営体質は絶対に直していかなければならないのだが、肝心の社長が気づいてないのでは何をかいわんやということになる。目先の利益を増やすことよりもはるかに大事なことだ。
 そこで社長として、過去のバランスシートから次の二つのポイントだけは、ぜひとも確実に押さえておいていただきたい。
 一つは、前にもふれたとおり、わが社は儲かる体質なのか、儲からない体質なのか、その要因は何か、「わが社の収益を上げる実力」を社長として正確に知ることである。
 もう一つは、万一のときにどの程度の抵抗力があるか、わずかの不渡りをくらってもおかしくなるような虚弱体質なのか、ちょっとのことでは動じない体質なのか、「わが社の安全性」についても、その実態を社長として正確に押さえておかなければならない。
 この収益性と安全性の二つのポイントが、将来の計画策定の前提となるのだ。(中略)
 繰り返していう。将来は過去の延長上にある。現在は過去の鑑だ。それが軌道修正を加えられつつ将来へと引き継がれていく。現在のマイナスは直ちに明日プラスに転化できない。それは必ずどこかに無理が出る。車は急激に曲がれないし、急ハンドルは事故のもとだ。長い歴史の中でつくられてきたマイナスは、一定の時間をかけて修正していくしかないのである。社長として最も大事な仕事のひとつは、将来に向けて計画的に企業の収益性と安全性の二つの体質を具体的に改善していくことだ。バランスシートは、その根拠をなる重要なツールなのである。

セキやんコメント:  管理会計への組み替えで、PL上の課題を明確に把握し対策を打つ。その的確な対策により収益性が向上する。そして、安全性確保のために目標BSを作成し、それに向けPL上でPDCAを廻していく。そして、経営自体が楽しくなり、更なる高みに上がっていく。こうなれば、経営者冥利に尽きる。

「経営の腑」第142号<通算457号>(2015年8月21日)

 社長流のBSにつくりかえる  佐藤誠一著「野望と先見の社長学」(1994年刊)より
 バランスシートの右側を見る場合、社長にとって必要なのは、買掛金とか支払手形といった細かな科目ではない。必要なのは、どこから資金を調達しているかという調達先、すなわち信用調達、金融調達、引当調達、自己調達の4つと、その合計である。
 そうだとしたら、この4つの要素をベースにしてバランスシートを単純なフォーマットにつくりかえ、社長として読みやすいバランスシートにしておけば便利である。経営者としてのバランスシートを自分でつくってみるのである。そして、4つのそれぞれの構成比が何%か、それが年度別にどう変わってきているかといったことが分かるような資料にしておく。それを見ながら、資金の調達先が正しいか、あるいは経営の内容が良くなったか悪くなったか、どのような手を打っていったらいいのかを常に考えられるようにしておく。
 これが経営者としてのバランスシートである。このように、知恵を絞って自分が使いやすいバランスシートにつくり直しておけば、バランスシートのもっている意味がよく分かるし、経営者としての発想も浮かんでくるようになるものなのである。
 次にバランスシートの左側を見てみよう。(中略)
 調達したお金の使い道をあらわしているのがバランスシートの左側なのである。
 つまり、バランスシートの右側には資金の調達が書いてあるのに対し、左側にはその調達した資金の使い道が書いてある。だからバランスシートは右側の合計と左側の合計があっているのであって、合わなければ困るのだ。
 このことは同時に、バランスシートの左側の数字を小さくすれば、右側の数字も小さくなるということを示していよう。バランスシートの左側を有効に減らせば、右側の資金調達も減ってくる。売掛金を減らせばそれだけ資金調達は減ってくるし、在庫を減らせばその分資金調達がいらなくなる。
 要するに、バランスシートの左側をいかに少なくしていくかということが、企業をスリム化し、贅肉を落とし、身軽な体質にしていく一番大きな要因となるのである。本来、企業経営というものは、どれだけのお金を投資して、いくらの収益を上げるかということにかかっている。そのためには、バランスシートの左側の資産内容をよく見て、無駄な要素を削り、スリム化をはかって、金利のかかる金融調達を減らす。それで自然と利益は上がっていく。

セキやんコメント:   BSというものを、財務会計的に単に事務的に眺めていてはいけない。社長の目線は、BSをいかに経営に生かし、わが社の財務体質を強化し安全性や収益性を向上させるかというところにおかなければならない。そして、その姿勢が、経営を分かりやすくすることに直結する。

「経営の腑」第143号<通算458号>(2015年8月28日)

 次の主力事業や商品を追加する  佐藤誠一著「野望と先見の社長学」(1994年刊)より
 もしこれまでと同じ商品やサービス、マーケットのままで、将来も商売を続けるというのであれば、競争のなかで利幅を増やすことは至難の業だ。まあ不可能に近いのではないか。
 結局、長期にわたって利幅を高く維持しようとすれば、これまでより利幅のとれる新しい商品を見つけるか、利幅がどんどん減少する商品を見切るか、あるいは少しでも高い値段で売れる新しいマーケットを開拓するしかないのだ。
 そこで、これまで何度も強調してきたことであるが、「高付加価値を目指して将来の方向づけをする」ことが大事になることは言うまでもない。時の流れを読んで良くなるものを増やし、悪くなるものを除く、この当たり前のことが最も重要で、しかも難しい。
 商品、サービス、マーケットの絶え間のない強化によって、次の主力となる事業や商品を追加し、新たな成長マーケットへ進出することは、事業のまさに原点だ。もちろん衰退業界にあっては大胆なまでの業種転換も必要となることがある。高付加価値のとれるものを求めて、あらゆるツテを使い、試行錯誤を重ね、何としてでも売上を伸ばす策を講じ、利幅を広げる商品やマーケットを開拓しなければ、会社の将来はないのである。数字の操作ではどうにもならないことなのだ。このことは、前章までにもいろいろな実例を挙げて説明したとおりである。社長の最大の役割が会社の方向づけにあると強調したゆえんだ。
 もちろん多くの読者にとって、このことは十分に心得ているはずであろう。しかし、そうそう簡単にうまくいくことではない。利幅のとれるものが容易に見つかることを前提に、長期計画を立てるわけにはいかないのだ。新たな方向づけが功を奏して大幅な利益率の改善を実際に見るまでは、利幅すなわち粗利率は年々減っていくものと考えるべきである。もし予想していたより早く利幅のとれる商品やマーケットが手に入れば、そのときに改めて、さらにその分大きく儲かるような計画を立て直すべきである。それが現実的な考え方だ。
 従来のままでは利幅が減っていくから、何としてでも利幅のとれる方向づけに知恵を絞り、手を打って、同時に、これからは利幅は必ず減るものとして実現可能な計画を立てる。
 それが社長としてのとるべき姿勢だ。
 そうなると、総資本の回転率を上げることが、儲かる体質づくりの重要な実務の着眼点ということになる。
 調達資金の効率つまり「総資本回転率」は、売上高を分子に、総資本を分母に算出される。ということは、売上を増やすか総資本を減らすことに目をつけることだ。

セキやんコメント:   経営をシンプルに考えるには、経営を数字で押さえることが大事だ。それではじめて、その数字を動かす経営の要素がつかめ、具体的な対策を講じることができるからだ。

「経営の腑」第144号<通算459号>(2015年9月4日)

 経営分析数値をどうとらえるべきか  佐藤誠一著「野望と先見の社長学」(1994年刊)より
 まず現金比率だが、「現金比率=30%以上」というのは、早い話が、手形のジャンプを依頼するに当って、とりあえず負債額の30%以上の現金を持って行けば相手が納得してくれるだろうという数値である。要するに、流動負債に対して少なくても常時30%以上の現預金を持っていないと企業経営は安全ではない、ということを示す数値であり、企業の安全性を見るうえでの重要な指標となる数値なのである。
 次に当座比率である。仕入先に対し、とりあえず負債額の30%の現金を渡し、残りの支払いを一時待ってもらった。だが、それだけでは相手は納得しない。そこで売掛金などを回収し、支払うお金が負債額の70%以上に達すれば、相手が了承してくれるだろうというのが、「当座比率=70%以上」の意味である。
 つまり、流動負債に対し、流動資産から棚卸在庫を引いた残りが、常時70%以上ないと企業経営は安全とはいえない。70%以上というのは、そのバロメーターとなる数値である。
 では、「流動比率=125%以上」というのは、どういう意味だろうか。
 流動比率とは、流動負債で流動資産を割ったものだ。流動資産には当然、棚卸在庫も含まれる。この棚卸が往々にしてくせものなのである。要するに、棚卸には評価が伴う。たとえば、ある会社が不渡手形を発行して倒産しそうになった。在庫品を処分する。となると、世の中は冷たいもので、いい機会だから叩いて買い取ろうという気持ちが人には起きる。それが普通であって、かわいそうだから高く買ってやろうなどという人は、まずいない。そうなると在庫が仮に1億円あっても、いざ処分する時には1億円では売れないのである。在庫は、そのように評価される。流動資産にはそういう在庫も入っているわけだから、それを流動負債で割った流動比率は、必ず100%以上なければならない。できれば125%以上が望ましい、というのが「流動比率=125%以上」の意味である。それ以下では、企業の体質は安全とはいえない。
 以上に述べてきた安全性分析における3つの指標、すなわち現金比率、当座比率、流動比率が、なぜ大事かお分かりいただけたと思う。

セキやんコメント:    「計算が正確なこと」と「実務で役に立つこと」は、全く別問題だと良く言われるが、上記のように実務に基づいた根拠なら、少々荒っぽい数値であっても効能は大である。まさに、経営分析数値を活かす上で極めて大事なキモだ。

「経営の腑」第145号<通算460号>(2015年9月11日)

 気楽に社長の夢を描いてみる  佐藤誠一著「野望と先見の社長学」(1994年刊)より
 わたしは、「経営ビジョン」とは「計算された未来構想」でなければならないと考えている。
 「計算された」という意味は、実現の可能性をあらゆる角度から数字でチェックされているということだ。単なる社長の夢や野望の段階では、「経営ビジョン」とは呼べないのである。そこで、社長の野望や夢というものと「経営ビジョン」とのつながりについて考えてみよう。
 長期計画の経営ビジョンは、社長の野望や夢があってはじめて生まれてくるものなのである。ところが、いざ自分の野望や夢を、具体的に経営ビジョンとして文章や数字で表現しようとすると、難行苦行してしまう社長が多い。それは、次の2つの勘違いを思わず犯してしまうからである。
 ひとつは、いわゆる「経営ビジョン」を考えるときに、自分の夢と重ね合わせて本音で考えずに、どうしても会社としてどうあるべきか建前論で考えてしまうことだ。
 大事なことは、「社長として俺はこうしたい」という、社長個人の本音を見つめることだ。あくまで個人として、自分の将来、会社や商売の行く末を自分としてはどうしたいのか、思うように描いてみることが肝心なのである。会社としてどうだこうだというのは、会社のスタッフが考えることであって、社長の発想ではない。スタートから自分の本音を無視して、いくらきれいごとを考えても、本気で突っ込んだものが生まれてくるわけがない。社長があくまで本音で、自分の人生をかけても悔いのない野望や夢を思い描き、自分の人生についてもう一度深く考えてみることからスタートすべきなのだ。
 自由勝手に自分の人生の夢を描くのだから、楽しくないはずはない。経営とは本来楽しくなければならない。難行苦行になってはいけないのである。
 二つ目の勘違いは、最初から完全な経営ビジョンを作文しようとすることである。
 まず気楽に考えてみることだ。どこかに矛盾があってもかまわない。あとで現実と照らし合わせながら本当にできるかできないかチェックしていけばよいことだ。自分の夢を描くだけなら気楽に取り組めるだろう。
 自分の夢を思い切り描いてみる。その後で、前章までに説明してきた「社長の役割意識」と「数字の約束ごと」から実際にやれるかどうかを検証していくのだ。夢と現実の間で試行錯誤する。そこから社長の具体的な「経営ビジョン」が生まれてくるものだ。その手順を忘れてはいけない。いきなりスタートから、見よう見まねで借り物のビジョンを作文することはないのである。
 ともあれ、長期計画は決して難しいものではない。簡単にできて楽しいものだということを前提に、自分の夢をまず大ざっぱに計画に移し替えてみることだ。問題点があれば、また考え直していく。長期計画は、何も一度つくったら終わりというものではない。肩を張らずに気楽に取り組んでいくことが実に大事なのでもある。

セキやんコメント:    本音で気楽に考えることの大切さを述べているが、まさに我が意を得たりだ。人間の頑張りは、「建前」ではなく「本音」から生まれる。だから、事業の拠り所を「本音のWHY」と名付け、重要視する我が持論と同じだ。そして、本音を貫くには自然体が一番だということにも、やがて気が付くはずだ。

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