「経営の腑」第81号<通算 第396号>(2013年7月19日)
管理改善思考プロセス 高橋正典著「リーダー学のすすめ」(自社出版)より
一般的にはPDCAサイクルと呼ばれ、このプロセスを身につけることなく職場や組織のリーダーたり得ない。
(中略)
リーダーの仕事は未来を扱うことで、未来を扱う最初の具体的行為が計画策定という作業である。リーダーは、このことを強く・強く認識すべきである。
リーダーが未来を扱う具体的行為である計画策定を放棄したらリーダーたる価値は全くない。組織は展望を持たずにただただ成り行きで漂うことになる。
リーダーは、Plan、Do、Check、Actionの中身を正しく理解し、使いこなし、組織に浸透させ、組織運営の軸に据えなければならない。
・Plan計画は、ゴール(目標・期間)、実施事項、実施方法、チェック方法、役割分担(担当者)、計画を社内に周知する方法、実行タイムスケジュールを決め、行動に向けた実行計画を作ることをいう。勝負所と勝負時を明確にした実効性の高い実行計画がPlanである。
・Do実行は、組織内の各所、メンバーに計画の周知を図り、役割分担に沿って教育訓練を行い、実施時間軸に従って計画した実施方法で行動することをいう。
・Check確認には、2つある。一つは実行の途中で担当者の進捗状況、出来栄えを計画段階で定めたチェック方法で確認し各所にフィードバックすることをいう。これをingチェックという。もう一つは、実行の終了後結果を分析評価して、結果を各所担当者にフィードバックすることをいう。これをendチェックという。
・Action処置(維持・修正)は、ingチェックおよびendチェックで確認した結果を評価し、結果が良好であれば維持、悪ければ改善・修正の行動をとることをいう。改善・修正内容を各所メンバーにフィードバックし、組織内で共有し次の計画活動に生かしていく。
<本書連絡先: 〒024-0053 北上市大堤西1-2-17 マネジメント・サポート・オフィス TEL:0197-67-6585>
セキやんコメント: 一倉定氏は、社長は「外部志向」「未来志向」「構造志向」であれ!、と述べている。平ったく言うと、企業「外部」のお客様に目を向け、これからの「未来」に成果が得られるような高収益「構造」を作るのが社長の仕事なのだ、との主張である。同様に、高橋氏は著書で、この手順を踏むことの大事さを説いている。
「経営の腑」第82号<通算 第397号>(2013年8月2日)
思考停止用語と思考促進用語 高橋正典著「リーダー学のすすめ」(自社出版)より
言葉には人を思考停止状態にする言葉と、思考促進状態にする言葉がある。コミュニケーション能力、対話能力の向上に当たってまずこれを認識しなければならない。
人を思考停止状態にする言葉を思考停止用語、人を思考促進状態にする言葉を思考促進用語という。思考停止(状態)とは、頭が働かない、脳の活動を委縮させる、やる気や元気を削ぎ落とす、心を折ってしまうというような状態をいう。
一方、思考促進(状態)とは、脳が伸びやかに働く、やる気や元気が湧いてくるというような状態、心が広がる状態をいう。
次のような二つの言葉がある。
@俺の言う通りやれ。誰が責任取ると思っているんだ、俺だろ。じゃ、俺の通りやれ。
A自分の考えで思い切ってやって見ろよ。責任はすべて私が取るから心配するな。
どちらの言葉が思考停止用語で、どちらの言葉が思考促進用語だろうか。どちらがリーダーに相応しい言葉なのだろうか。
思考促進用語が溢れる職場は、脳を使いながら仕事をしているのでコミュニケーションも取れ、連携・連絡・分担も良く生産性が高い。
反対に思考停止用語だらけの職場は、脳みそが停止しているので、コミュニケーションは悪い、メンバー間の情報が分断するので、自分勝手な判断が横行、自分流の繰り返し、気がつけばいつの日かマンネリ仕事、ヤッツケ仕事となり、生産性は低下して行く。
リーダーは思考促進用語が溢れる職場を作らねばならない。リーダーは思考促進用語でメンバーに接しなければならない。伝えたいことをどう表現したら思考促進的に伝わるかを常に考えるのがリーダーである。
思考停止用語を不用意に使う人はリーダー失格である。思考停止用語を不用意に使う上司は「俺は嫌な奴だ、俺についてくるな」のメッセージを知らず知らずしてメンバーに送っているようなものである。本人が知らないうちに職場から浮いた存在になっていることは確実である。こうなると、諸力の結集など絵空事である。
<本書連絡先: 〒024-0053 北上市大堤西1-2-17 マネジメント・サポート・オフィス TEL:0197-67-6585>
セキやんコメント: 言葉と同様、態度にも思考停止態度と思考促進態度があり、思考停止態度は上目線の見下した態度で、思考促進態度は相互理解の目線・尊重目線の態度である、と著者は続ける。その違いは、他人に対して敬意を表せるかどうかにある。人間が心を許し意気に感じるポイントは、リスペクトの力量かもしれない。
「経営の腑」第83号<通算 第398号>(2013年8月16日)
収益性に対する過ちと判定法 一倉定著「増収増益戦略」(社長学シリーズ第5巻)より
いくつもの会社の例をあげてきたが、それらの社長のもっている共通的な欠陥が浮かび上がってくる。
その第一は、収益性の重要指標である収益性(付加価値率や粗利益率)に関する認識が意外に低いということである。そのくせ、原価に対する関心は意外なほど強いのである――絶対につかむことのできない全部原価をである。原価計算の罪悪の大きさを、その影響力の深い根強さを、思い知らされるのである。
また、収益性の重要なことは、頭では知っていても、現状分析の甘さから、売上高の多い商品の方に、より多くの関心を示してしまう。そのために、自らの手で自らの会社の収益を低下させ、低業績に泣いている、ということである。
「現状分析の甘さ」といったが、考えてみると、そう決めつけてしまうのは、いささか酷であるという気がする。というのは、社長というものはあまりに忙しすぎて、あとからあとから発生する問題の処理に追われて、一つのことを深く突っ込んで考えているヒマがないことにもよるからである。そしてこういうことは、「社長は何をなすべきか」という設問に対する正しい答えは、誰も用意していないのである。そのくせ、社長を誤らせるような理論は、世の中に充満しているのである。それらに惑わされて、右往左往したり、関心のあり方を間違えてしまうのである。
その第二は、「カッコイイ」ことを追ってしまう、ということである。そのために、たくさんの会社がどのくらい業績を悪化させているか計り知れないものがある。官公庁、大企業、ゼネコン、デパートなどと取引することは「カッコイイ」ことである。ところが、官公庁はマアマアとして、大企業、ゼネコン、デパートは、まず絶対といっていいくらい儲けさせてはくれない。それは、力関係だけでそうなるだけでなく、たくさんの中小企業が、われもわれもと競ってこれらを得意先にしたがる。需給関係から当然のこととして「買手市場」になるために、値段を大叩きされたり、指値を呑まされたり、いろいろな名目の協賛をさせられたり、供応が多くなったりするからである。
ここで、収益性の判定法に移ろう。
(1)単位当たりの収益性の比較
売価−変動費=付加価値(または加工高、流通業の場合は粗利益) の大きさで比較すればよい。
気をつけなければならないのは、売上高に目がくらんで、収益を忘れることである。
(2)期間当たりの収益性の比較
単位当たりの付加価値×単位期間の販売数量 で比較すればよい。誠に簡単である。
1個当たりの付加価値は高くとも売れ行きが少なければ、たとえ付加価値が低くとも期間当たりの売上高が多い商品の方が、有利なことを知らなければならない。
市況が崩れたような場合には、売価と同時に注目しなければならないのは、付加価値の絶対額である。「絶対額がどれほど変わるか、それを最小限におさえるにはどうしたらいいか」ということである。
セキやんコメント: 今さらながらだが、京セラの稲盛和夫名誉会長が唱える「時間当り採算表」を改めて確認してみた。その本質は全く一倉式賃率と同じで、わずかな違いは固定費を配賦した上で部門別の差引売上としている点だけである。これは全員経営の企業文化が浸透した京セラならではの徹底ぶりといえよう。次号は、稲盛会長がこの管理会計「時間当り」を導入した理由を著書から引用紹介することにしよう。
「経営の腑」第84号<通算 第399号>(2013年8月30日)
現場が活用できる管理会計手法 稲盛和夫著「アメーバ経営」より
中小・零細企業では、社内に経理処理をおこなう人員を抱えられないなどの理由から、損益計算書などの財務諸表の作成をアウトソーシングすることが多い。売上伝票や経費の支払伝票などを1週間または1カ月分まとめて、外部の税理士や公認会計士の事務所に持って行くわけである。会計事務所では、会社ごとに伝票を全部整理して損益計算書を作成してくれる。多いところでは毎月、少ないところでも半期に一度は決算書をつくって、採算の状況を教えてくれる。だが、それでは、経営の結果として出てくる数字を「自分たちでつくる」という実感はわきにくい。
大企業では、コンピュータシステムが導入され、各現場でデータがインプットされている。そのデータが経理部門のコンピューターに伝えられ、自動的に集計され、決算がおこなわれる。だが、経理部門で集計された決算の結果は、現場にフィードバックされていないことが多い。せいぜい役員のところまで「今月はこうなりました」という結果が伝えられる程度で、現場の人たちは何も知らされていないという会社が多い。したがって、会社がどのような状態になっているか現場がまったく知らないという会社さえある。
仮に、現場の社員に経営の実態を知ってもらおうと損益計算書などの経理資料をそのまま持ち込んだとしても、現場の人たちにとっては非常に複雑でわかりにくいため、自分の仕事に直接結びついているという実感はわかないだろう。
それならば、ふつうの家で使っている家計簿のように、シンプルに各部門の収支状況をとらえることができないだろうかと思い、考案したのが「時間当り採算表」である。
初期のころは、アメーバリーダーが実績数値のみを表の中に書き入れていたが、やがて、月初に予定数字を組むようになった。現在では、それぞれのアメーバが月次単位の自分たちの活動計画を具体的な予定数字として時間当り採算表の形で表し、実際の活動によって売上や経費がどれだけ発生したのかという実績と対比しながら採算を管理している。
さらに、時間当り採算制度では、事業活動の成果を「付加価値」という尺度でとらえるようにしている。詳細は後で述べるが、この「付加価値」とは、売上金額から製品を生み出すためにかかる材料費や設備機械の償却費など、労務費を除くすべての控除額(経費)を引いたものである。自分がどれだけの付加価値を生み出したかをわかりやすくするために、単位時間当りの付加価値、つまり、総付加価値を総労働時間で割った1時間当りの付加価値額を算出している。これが、「時間当り」と呼ばれる指標である。
この「時間当り」の指標などにより、各アメーバは年次や月次などの目標を設定し、実績を管理している。つまり、自分たちの活動した結果である付加価値を月次単位で正確に把握することにより、すぐさま問題点を見つ出し、その改善に向けたアクションがすばやくとれるようにしている。
セキやんコメント: 一倉風にいえば、財務会計処理は「過去の数字の整理」であり、管理会計こそが経営者が活用すべき「未来への気づき・宝の山」である。奇しくもか必然か、稲盛会長はこれと同じことを指摘し実践してきている。本質を極めた達人の到達点は、おのずと同じだということか。
「経営の腑」第85号<通算 第400号>(2013年9月13日)
標準原価方式とアメーバ経営の違い 稲盛和夫著「アメーバ経営」より
多くの製造業の製造部門では、管理会計の方式として標準原価計算を採用している。これは、工場を管理する会計手法として、製品コストの管理、在庫の管理、製造部門の実績評価などにおいて重要な役割を果たしている。
当社と関連が深い大手電機メーカーでも、標準原価計算を採用している会社が多い。これは以前聞いた話だが、たとえば、当社のような納入業者から電子部品を買って、テレビを組み立てていく場合、経理などにいる原価計算の専門スタッフが、製品にかかる原価を計算しているのだという。
その際、どのように原価を管理するかというと、まず前期の原価を計算して、「前期はこういう原価になっているので、今期は前期の1割減を目標にして原価を下げよ」というような指示が出る。それを受けた製造は、前期に比べて1割下げた目標となる原価を設定し、その範囲内で製品をつくるように努力する。だが、製造では、目標とする原価内で製品をつくれば自らの責任を果たしたことになるので、自ら利益を生み出すといった意識はまったくない。
次に、製品が完成すると、営業部門が製造部門から製品を標準原価で受け取る。その製品の原価にマージンを乗せて売値を決めて、販売するのはすべて営業の才覚であり責任である。だが、なかには「市場競争が激しいので、原価に少し利益を乗せたぐらいで売るしかない」といって、会社全体の利益を考えずに安易に値決めをする者が出てくる。そうすると、営業経費を差し引くだけで、たちまち赤字になってしまう。そのうえ、実際に値段を決めるのは営業担当重役ではない。営業担当者が秋葉原などで調査した結果をもとに値段を決めている場合が多いという。何のことはない、営業を始めてわずかしか経っていない営業担当者が、会社の経営を決めていることになる。
私は、このような大手電機メーカーの経営の現状を聞かされ、「日本を代表するメーカーであり、優秀な社員がたくさんいるのに、実際に値決めをして会社の経営を左右しているのは一握りの営業担当者なのだ」ということに気づき、愕然としたことを覚えている。
(中略)
一方、アメーバ経営では、製品の市場価格がベースとなり、社内売買により市場価格が各アメーバに直接伝えられ、その社内売買価格をもとに生産活動がおこなわれている。さらに、製造のアメーバが独立したプロフィットセンターであるため、製品の売値で利益が出せるよう、アメーバが責任を持ってコストを引き下げようとする。つまり、与えられた標準価格で製品をつくるのではなく、市場価格のもとに、自ら創意工夫をしてコストを引き下げ、自分の利益を少しでも多く生み出すことが製造部門のアメーバの使命なのである。
アメーバ経営の製造部門では、標準原価方式のように原価のみを追求するのではなく、メーカー本来の姿である、自らの創意工夫により製品の付加価値を生み出すことに主眼が置かれている。この点からも、アメーバ経営は、従来の管理会計の思想を根底から覆す、斬新な経営システムといえる。
セキやんコメント: 稲盛会長が述べるとおり、アメーバ経営は一般的従来手法である標準原価方式の欠点を克服する手法である。しかし、中小企業では固定費の案分の精度を確保するのは現実問題として難しい。この点を解決してくれるのが、全社の総固定費を一括で基準とする一倉式賃率なのである。