Sekiyan's Notebook グローカルニュース〜経営の腑

セキやん通信「経営の腑」


第166号“手元現金はいくらあればよいか”<通算481号>(2016年2月5日)

第167号“当初の計画とのズレを修正する”<通算482号>(2016年2月12日)

第168号“税金面からの実証作業”<通算483号>(2016年2月19日)

第169号“損益計算書とバランスシートをつなぐもの(1)”<通算484号>(2016年2月26日)

第170号“損益計算書とバランスシートをつなぐもの(2)”<通算485号>(2016年3月4日)

「経営の腑」第166号<通算481号>(2016年2月5日)

 手元現金はいくらあればよいか  佐藤誠一著「野望と先見の社長学」(1994年刊)より
 手元に無駄な現金をおいて借金するぐらいバカなことはないだろう。
 ところが、手元現預金がどのくらいあればよいか、はっきりとした方針を持っている会社は、案外少ない。
 本書の第三章で、「現金比率は30%以上」と述べたが、これは企業の安全性を分析するうえでの指標であった。つまり万一のためには、流動資産の中でも最も早く「おかね」になる現金・預金が流動負債の3割以上欲しいということであった。ここで同じことを繰り返したいのではない。
 「会社のお札に二色の色を塗れ」ということを言いたいのである。どういうことかというと、金利を稼がなくていいお札と、たとえ一日でもいいから金利を稼がなければならないお札に、会社の現預金を色分けして管理せよということである。わたしは、バランスシートの現金・預金の中で金利を稼がなくてもいいものは、「手元現預金」として区別しているほどだ。
 普段、何のために現金を会社に置いてあるのかを、お考えいただきたい。大体まとまって現金が大きく出る日は、せいぜい月に3日程度ではないだろうか。給料が日払いなんて会社は皆無だろう。手形を毎日落としている会社だってない。公共料金も事務消耗品も月払いだ。出張旅費交通費ですら、新幹線は回数券支給の会社が増えてきた。接待も月払いが多い。会社で毎日現金を用意しておく必要のあるものといえば、接待雑費と少額の交通費程度ではなかろうか。
 このことは、小売業やサービス業などのいわゆる日銭商売の場合に、特に注意すべきである。R社というある地方のレストランチェーンであったことである。R社の社長は、売上が現金で支払いは掛け、という有利な条件で、10日分も2週間分もの現金を当座に入れたままで、無頓着な会社であった。そこでわたしは、「手元現金はせめて1週間分にしなさい、わたしの会社では1日分でも十分なんだから」と社長に申し上げたことがある。
 「先生それは無理だ、メーカーとウチの商売とは違うんです。先生も言うことが細かい」となかなか言うことを聞かなかった。しかし年商40億円を超えるようになって、「1週間で1億円になる、500万円の金利をみすみす捨てていたのか」と、遅まきながら気づいたのであった。当座預金には金利がつかないことすら忘れている経営者が、世間には案外多いものである。
 金利を稼がなくてもいいおかねは、たとえば、「手元現預金または当座預金は月商の何日分とする」とか、「当座預金は5000万円を限度とする」というように、社長として明確なルールを決めることである。これを経理担当者に任せっぱなしにしていると、小まめに口座を移し替える面倒を、えてして省きがちとなる。運転資金については、このようなきめ細かいルールも案外大事である。それは同時に、経理担当者の躾にもつながることなのだ。

セキやんコメント:  借入金利には敏感な一方、こうした日々の金利管理には無頓着な社長が圧倒的多数だ。金利は事実情報なので、簡単な計算をすればその差異はすぐ分かる。必要以上に神経質になる必要はないが、大きな方針を決めるだけで、尻抜け管理から脱却できる。

「経営の腑」第167号<通算482号>(2016年2月12日)

 当初の計画とのズレを修正する  佐藤誠一著「野望と先見の社長学」(1994年刊)より
 本書の前半では、「付加価値配分目標計画」に社長のビジョンを気軽に入れて運営基本計画に落とし、社長の夢を数字にしてみた。そして、その運営基本計画を基に、人件費・設備投資・運転資金の実現性を見てきたわけである。
 読者の会社の運営基本計画でもそうだろうと思うが、実地にこれらの実証作業を行ってみれば、ある計画は人件費に矛盾を生じ、ある計画は設備でつまずき、あるいは資金が収まらなかったりというように、どうしても計画とのズレが出てくるものだ。もとより、最初からぴたりと収まる計画を期待するほうが無理なのである。そこで、生じたズレは当然のごとく修正していかなければならない。
 モデル会社のD精機のケースでいえば、人件費計画と設備投資計画の数字に変更が必要であった。人件費と償却費の数字が変わったのだから、利益も違ってくる。当然、運転資金計画も違ってくる。そこで、当初の「運営基本計画」(PDF形式)の修正が必要となる。
 第19表(PDF形式)はこれらの数値修正のための様式である。これを用いて。まず初年度の修正をやってみよう(第一次修正)。
 人件費は、当初5億1200万円であったものが、5億2000万円必要となった。したがって、この数字は修正しなければならない。減価償却費は、たまたま当初の計画数値8500万円どおりであった。
 その他の、たとえば、先行投資や一般経費については、当初の数字でやるんだ、と社長が決めればいいことだから、はじめから実証の必要はない。役員報酬も、オレは6300万円しかとらないといえば、それで済んでしまうことだ。
 そうすると、当初10億1500万円の営業経費は、人件費で増加分の800万円増えることになる。当然利益が800万円減り、事業税引当前の利益(仮営業利益)は2億9100万円となる。したがって、税引前利益も1億6200万円になる、ということが計算できる。
 利益が変わると税金額が変わってくることになる。さらに、税金が変われば資金繰りも変わり、資金繰りが変わることによって、金融費用も変わってくる。そこで、税金と金利についても修正を加えていかなければならないわけだが、まず税金から見ていくことにしよう。(次号へ続く)

セキやんコメント:  計画数値のズレは、社長の意思で修正可能なものと数値同士の相関関係に影響を受け、社長の意思が直接及ばないものとがある。このあたりの理解が、計画策定の根拠の保持には不可欠だ。そして、我が社の管理会計の完成度にも直結することになる。

「経営の腑」第168号<通算483号>(2016年2月19日)

 税金面からの実証作業  佐藤誠一著「野望と先見の社長学」(1994年刊)より
 社長のポリシーを入れようにも、入れようのないのが税金の計算である。しかも細かい。だから本来、本項でとりあげる実証作業は経理に任せてよい仕事だ。
 しかし社長が運営基本方針を出したとき、全く見当外れな税金計算をしておいて、利益はこれだけ出るはずだなどといって、「だから素人は困る」などというのもまずい話である。そこで、実際は経理の担当に指示するにしても、社長として最低限これだけは知っておいていただきたい税金の計算法について、実証作業に入る前にあえて説明しておくことにしよう。
 一つは、税金は当期の税引前利益に直接かかるわけではない、という点についてである。先に第5章で、税金には経費として認められる事業税と、認められない地方税・法人税等の二種類があると述べたが、当期の経費として認められるのは、実は当期の事業税ではなく、前期の事業税なのである。
 税務署は、当期の税引前利益のうち、当期に立てた事業税引当金は経費として認めてくれない。つまり、当期の事業税引当金は課税の対象になる。いわゆる課税利益に含まれるわけである。課税利益に含まれるのだから、これは税引前利益に加算して考えなければならない。一方、前期事業税は当期の経費として認められるのだから、これを当期税引前利益から差し引く必要がある。したがって、当期の課税利益は、当期税引前利益に当期事業税引当金を足し、そこから前期事業税引当金(実際には事業税支払額なので若干異なる)を引いた金額ということになる。これが当期の課税利益である。このルールをまず頭に入れておいていただきたい。
 あとは、この課税利益に対して、先にも述べたように事業税が約13%、法人税・地方税等の納税充当金が約50%になる、ということを最低限の知識としてもっているだけでいい。厳密にいえば、事業税も地方税もその地方によって違うし、法人税も同族会社と非同族会社とでは異なってくる。さらに同族も、同族の非同族と同族の同族に区別され、扱いが違ってくる。それに、社内留保の額によっても税金は変わってくるし、また接待費の超過額はすべて課税の対象となるなど、いろいろ細かい課税のルールがあり、経理サイドからいえば今あげた最低限の知識だけでは正確ということにはならないが、社長はそこまで知る必要はない。
 ・当期の税引前利益に当期事業税引当金を足し、そこから前期事業税引当金を引いた金額が課税利益
 ・それに対する事業税が約13%、地方税・法人税等の納税充当金が50%
というルールを知っているだけで、社長の税金計算の知識としては十分である。
 (注)もう一つ、予定納税として前年度の納税額の半分を翌年の下期に納めるという税金の納め方に関するルールがあるが、これについては後に「資金運用計画」を検討するときに説明することにしたい。

セキやんコメント:   「正確なこと」と「実際役に立つこと」は違う。数字で正確さが求められるのは設計図や経理処理に関するものであり、経営判断には上位2桁程度で十分である。売上目標値3億4986万2305円の下3桁以下に何の意味があるというのだろうか。3億5千万円の方がわかり易いし、何の問題もない。

「経営の腑」第169号<通算484号>(2016年2月26日)

 損益計算書とバランスシートをつなぐもの(1)  佐藤誠一著「野望と先見の社長学」(1994年刊)より
 この表は、D精機の「資金運用計画」である。
 今後5年間、運営基本計画で毎年どのようにお金が動いていくか、各年度の資金の流れを一覧表にしたものだ。この計画ができなければ、資金の裏づけができず、せっかくの長期計画も絵に描いた餅になってしまう。それほど重要な表である。
 一見すると、固定資金運用とか運転資金運用といった難しそうなことばが出ていたりして、経理や会計士でないと分からない、社長には不要の専門的な表に思われるかもしれないが、実はさにあらず。この表は、社長の夢の実現プロセスを資金面から具体的に示すものなのだ。したがって、難しそうなことばの表現にこだわらず、またとらわれず、気楽に見ていただきたい。
 表の一番上に「当期税引前利益」の欄がある。会社経営というのは、売上を発生させて売上総利益、すなわち付加価値を生む。そこからさまざまな経費を差し引いていくと、当期税引前利益が残る。これが運用資金の一つの源になる。なぜ純利益でないのかと言えば、税金の支払い時期がずれてくるので税引前利益の数値を使うのである。表の一番上にこの欄があるのはそのためである。
 ところが、経費には実際お金を支払わない経費もある。たとえば「減価償却費」である。減価償却費というのは、別にどこに支払うというものではない。将来、設備が陳腐化していくことに備えて引当を立てるというだけの、いわば資金支出のない経費である。事業税もそうだ。先に述べたように、当期の事業税引当は翌期支払えばいいものだから、これも資金の支出のない経費である。また、将来の安全のために社長として毎年2%ぐらいの配分を考えようということから立てられる引当金もある。引当金導入というのがそれだ。これも実際にお金を支払うわけではない。将来何が起こるか分からないことへの引当金として予算に組み入れられたものである。
 これらは経費として落としているけれども、実際に資金は支出されていない。要するに、税引前利益と、この資金支出のない経費の2つを足したものが、資金の一番大事な源になるわけである。これを資金の源泉というのはそういう意味だ。その他、増資も、長期借入金も、必要に応じて当然資金となる。したがって、これらの4つが、この1年間の資金繰りの源泉になるわけである。
 結果として、この表に書かれている数字が、会社としての1年間のお金の動きを大きく示すことになる。書かれている事柄は非常に経理的な事項のようだが、難しいことは何もない。当期税引前利益をまず書き入れ、それに資金の支出のない経費を足し、増資をするか長期借入金を増やすかどうかを決め、それらの金額のトータルが、その年度の資金の源泉の合計になる。それをまず頭に入れておいていただきたい。(どういう場合に増資や長期借入金を増やすかについては後でふれる)

セキやんコメント:   単年度の損益計算書の赤字・黒字で一喜一憂している経営者は多い。しかし、経営者としての成績を本当に評価するのは貸借対照表である。なぜなら、継続してきた経営の優劣がそのまま表れるからである。したがって、将来的にどのようなバランスシートにしていくかという意識が大事になるのだ。

「経営の腑」第170号<通算485号>(2016年3月4日)

 損益計算書とバランスシートをつなぐもの(2)  佐藤誠一著「野望と先見の社長学」(1994年刊)より
 一方、資金の使途として、一つは税金の支払いがあるが、これは先に簡単な計算をして出した数値をここに書き入れ、それに配当金や固定資産投資で決められた金額を入れると資金の使途の小計が出る。資金の源泉と資金の使途は同額にならなければならない。そこでこれを同額にすると、固定資金の余裕がいくらになるかが分かる。
 この「固定資金余裕」が、今度は運転資金運用のための資金の源泉の一つになる。そこで、社長として決めた運転資金の増加があといくらいるのか、あるいはそれに対して買掛債務の増加がいくら図られるのか、ここでも資金の源泉と資金の使途のバランスを合わせていくと、金利を稼ぐ運用預金増加の金額が出てくる。
 こうして1枚の表に数字を集約してみると、まるで川の流れを鳥瞰するごとく、1年間の資金の流れが見えてくるのだ。
 ここで大事なことは、資金の源泉と資金の使途の両方のバランスが合うことである。それが経理の計算の基本といっていい。固定資金運用の場合でも運転資金運用の場合でも、資金の源泉と資金の使途の合計の数字が合うことが経理の鉄則なのである。
 こうして見てくると分かるように、この表はバランスシート上の変化を示している。1年間の事業活動の結果、期首と期末でバランスシートがどう変わるかを示すものだ。運営基本計画に沿ってお金がどう動いていくかを一覧にした表が、結局は、このようにバランスシートの変化となってあらわれる。ということは、資金運用計画こそ、運営基本計画という目標損益計算書とバランスシートをつなぐ、大事なパイプの役割を果たすものだということができよう。
 この「パイプ役」ということが理解できれば、運転資金運用はバランスシートの流動資産と流動負債の変化を予知させ、固定資金運用は固定資産・投資と固定負債・引当金・資本の変化に結びつくことが容易に理解願えると思う。すなわち原則として、固定資金の余裕がマイナスになるということは、流動比率の低下につながるということだ。だから固定資金の余裕がマイナスにならないように増資や長期借入金の導入を考えるべきなのである。
 バランスシートには、これまでの会社の歴史や経営判断のすべてが数字で鏡のごとく反映されている。同時にそれは、現在の会社の体質や体力のすべてをあらわしている。そのことは、本書ですでに何度も強調したことだが、こうして運営基本計画とバランスシートがつながることによって、さらに社長の将来の夢もまた、バランスシートに集約されていくことになる。
 これまでの作業を振り返ってみれば、社長の夢の実現に向けて、利益計画を立てる前にまず付加価値配分目標をつくり、利益の配分に対する社長のポリシーを設定した。そしてそれを基に、損益計算書の形式で運営基本計画を作成した。さらにその実現性を実証しつつ、資金運用計画を立てる段階まで到達した。この資金運用計画は、これからの作業を通して運営基本計画をバランスシートにつないでくれるものなのである。
 資金運用計画によって、会社全体の資金の流れを大きくつかむことは、社長にとっては非常に重要だ。

セキやんコメント:   まずは気楽に社長の夢を描き、それを数字にする。そして、それを現状からチェックする。この一連の流れを、付加価値配分目標策定〜運営基本計画の実証・修正〜資金運用計画での検証、を通して推進するというのが、佐藤誠一流の長期計画作成法だ。

「経営の腑」最新号へ戻る



目次へ