Sekiyan's Notebook グローカルニュース〜経営の腑

セキやん通信「経営の腑」


第151号“付加価値配分目標の立て方 前編”<通算466号>(2015年10月23日)

第152号“付加価値配分目標の立て方 後編”<通算467号>(2015年10月30日)

第153号“運営基本計画”<通算468号>(2015年11月6日)

第154号“付加価値率は年々下がると心得る”<通算469号>(2015年11月13日)

第155号“各科目の絶対額を算出する”<通算470号>(2015年11月20日)

「経営の腑」第151号<通算466号>(2015年10月23日)

 付加価値配分目標の立て方 前編  佐藤誠一著「野望と先見の社長学」(1994年刊)より
 社長が計画作成に当たって最初にやるべきことは、まず会社の過去の実績を数字で知ることだ。
@過去3期分の配分実績を記入する
 まず、自社の損益計算書の中から付加価値の10配分先に相当する科目を探し出し、そこに書かれている数字の比率を計算し、過去3期分にわたって定型表の該当する欄に書き入れていく。こうすることで直前3期、直前2期、直前期と、過去3期分の付加価値の配分比率の実績がはっきり社長の目に見えるかたちになっていくのである。
 「金融配分が思ったより急に増えている」「安全配分を無視している」「蓄積配分を大事にしすぎて、再生産配分にその分のしわ寄せがきてしまった」等というように、過去の比率を一見するだけで、損益計算書から読み取ることができなかった過去の経営手法の欠点に改めて気づくに違いない。それらの一つひとつの気づきが、将来の打つ手をより実現性の高いものへと磨いていくのである。
 経営というものは、短所が分かれば時間をかけても直していく、長所は積極的に伸ばしていく。ただそれだけの連続であり、決して難しいものではない。一番困ることは、長所にも短所にも気がつかないことなのだ。
A5年後の配分目標を決める
 次に社長は、表に書き入れられた過去3期分の数値をにらみながら、5年後の各配分について社長としてのとりあえずの方針を決め、ラフでもいいから、それを数字にして表の「5年度」という欄に書き入れていく。
 たとえば、もっと社員に厚くしたいという方針に決めたら、社員配分比率を高くしたり、何とか借金体質を改善しようという方針を立てたら、金融配分への比率を低くしていくといったように、社長のポリシーを反映させながら、意図的に配分比率を設定してみるのである。これらの意図的な設定は、事務や経理担当には考えも及ばない領域なのだ。会社の中で、社長にしかできないことなのである。実現可能かどうかは、後で検討すればいい。この段階では、とにかく社長の5年後の夢を大ざっぱでいいから数字に直して書き入れてみることだ。
 ただし、夢とはいえ、実務家としての社長が描く夢であるからには、あまりにも現実離れした数字でも困る。実現可能な夢を描くというのが、社長としての夢の描き方というのもだろう。そのためにこそ過去3期分の配分比率を書き入れたのである。したがって、過去の数字とよく相談しながら社長の夢を書き入れていく。
 こうして、社長のポリシーが具体的なビジョンとして数字に翻訳され、表の「5年度」の欄に書き入れられていくわけだが、これで作業が終わったわけではない。空欄のままになっている「初年度」から「4年度」までの欄を数字で埋めていく仕事がまだ残っている。(次号に続く)

セキやんコメント:  社長の意図を数字に表現することの重要性を説いている。社長の意図は社長の心の中にあり、社員には分からない。社長の意図を数値化してはじめて社長自らも明確に再認識し、社員と目指す方向を一致させるスタート地点に立てる。

「経営の腑」第152号<通算467号>(2015年10月30日)

 付加価値配分目標の立て方 後編  佐藤誠一著「野望と先見の社長学」(1994年刊)より
B初年度から4年度までの配分目標を仮設定する
 5年後の社長の方針を決めれば、あとは現状の数字とのギャップを、案分して割り振っていくだけでいい。この作業は簡単だ。
 たとえば、金融配分への比率が現状で10%として、これを5年後には2%まで下げていきたいという方針であれば、差の8%を5年分で割った1.6%ずつ、初年度から下げていくのである。そうすると、初年度8.4%、2年度6.8%、3年度5.2%、4年度3.6%となり、5年度には目標の2%になっていく、これだけの作業である。
 もちろん、必ず均等に1.6%ずつ下げていかなくてもいい。年度によって多少の増減が出てくる場合もあろう。そのへんは社長の勘で決めていく。ラフでいいのだ。
 これでともかく、現状をふまえ5年後の夢を描き、その夢と現実を結んでいくことによって、各年度のそれぞれの配分率が決まり、5年後の社長の夢の実現までにどのようなプロセスをふまえていくかというターゲットが決まったことになる。社長の野望の青写真は、これで一応描けたことになるわけだ。
 実際にこのとおり実現できるかどうかは、この段階ではまだわからない。これを第5章以下で説明する「運営基本計画」に落とし、人の面、設備の面、資金の面から実現性をチェックする必要がある。
 その実際については、第5章以下で詳しく説明することにして、次に、モデル会社2社のケーススタディをとおして、付加価値配分計画の立て方を、もっと実務的に突っ込んで説明しておこう。

セキやんコメント:   「社長の勘で決めていい。ラフでいいのだ」と述べられているが、一倉氏にも「正確なことと、役に立つことは違う」という決めゼリフがある。目的を忘れずに打ち込めば、なぜか活路が見出せるのが、経営実務だ。大事なことは、目的と手段を取り違えないことだ。

「経営の腑」第153号<通算468号>(2015年11月6日)

 運営基本計画  佐藤誠一著「野望と先見の社長学」(1994年刊)より
 第9表は、わたしが「運営基本計画」(PDF形式) と呼んでいる表である。
 ご覧いただいてお分かりのように、この表の様式は一般的な利益計画と大体同じである。したがって、一見するなり、「こんな表なら、わが社でもとっくに作っている」とおっしゃる読者も多いに違いない。損益計算書の項目をそのまま引き移して作った様式なのだから、それもそのはずで、項目だけを見れば、典型的な従来の利益計画とどこが違うということになろう。
 では、なぜ「運営基本計画」として、これを他の一般の利益計画と区別するかといえば、賢明な読者は、前章までの説明ですぐにお察しいただけよう。
 そこに明らかに経営発想の違いがあるからだ。社長は、いきなり「売上計画」や「利益計画」から入ってはいけない。その前の段階で、まず「付加価値配分目標計画」を作成しなければならない。何度も説明したように、社長としての自分の役割を果たすために、付加価値の配分を考え、社長としてのポリシーを「付加価値配分目標計画」として固めることが前提なのである。
 もっとも付加価値配分目標の数値は、あくまでも構成比であって、この段階では社長のポリシーを比率であらわしただけである。しかもそれが実現可能かどうかは、付加価値の配分比率だけでは分からない。そこでその比率をもとにして、運営基本計画の営業利益、事業税引当、営業外損益、特別損益、差引内部留保などの各項目欄を具体的な金額目標にして記入しなければならない。
 そのためには、将来の売上高と付加価値率の推移を予測して、付加価値がどうなるのかを算出しなければならない。これから5年先、10年先までの年度別付加価値の額が決まれば、それに比率を掛けることによって、自動的に各科目の金額目標が容易に設定できることになる。そうすることで、運営基本計画に書き入れられた数字はすべて、社長の役割意識やポリシーを反映した数字ということになっていく。
 つまりこの手順こそが、長期計画成功の重要なノウハウのひとつといえる。そこに経理のつくる計画と社長がつくる計画との根本的な違いが出てこよう。これが運営基本計画と呼んで、従来の利益計画と区別する最大の理由だ。
 すなわち「運営基本計画」作成の手順としては、
 @5年先までの売上高推移を予測し、
 A付加価値(売上高総利益)の推移を予測し、
 Bそれに配分目標比率を掛け、各科目の金額を算出していくことになる。

セキやんコメント:   一倉氏のいう「経営は逆算」と同様で、社長の意思の下に我が社が生きるための条件を踏まえ、獲得すべき付加価値を見出すというプロセスだ。ここにあるのは、トップのゆるぎない信念であり主体性で、成り行き任せの経営とは対極にある。

「経営の腑」第154号<通算469号>(2015年11月13日)

 付加価値率は年々下がると心得る  佐藤誠一著「野望と先見の社長学」(1994年刊)より
 付加価値率(売上総利益率)を予測する実務ポイントは、年々下がる可能性が高いということを前提に計画することである。
 まず、ご自分の会社の付加価値率を過去3年間にわたってチェックしてみていただきたい。3年間の付加価値率の推移を見て、もしこれが上がっていたら、むしろ稀な会社といったほうがいいだろう。一般には、売上の拡大に伴って年々少しずつ下がってきているのが普通なのである。
 あるいは、極端に付加価値率が上がったり、逆に極端に下がったりしている会社もあるかもしれない。そういう場合は、必ず社長の心に思い当たる大きな原因があるはずだ。そうした大きな原因がなければ、急激な変化は起こりえないというのが経営の原則である。
 自社の過去を振り返ってみれば、たとえばある商品が大ヒットして、売上や利益率が改善されたといったような、ラッキーな経験をおもちの社長は多いと思う。同じようなことが、将来にも起こるかもしれない。たとえば3年後に新規事業が当たって、売上や利益が飛躍的に伸びる。そういうことも十分に考えられよう。世の中には、このような幸運なケースが少なくはない。だが、そういう幸運は、必ず訪れてくるという保証は何もない。訪れてくるかもしれないが、訪れてこないかもしれない。むしろ訪れてこない確率の方が高いだろう。だとしたら、幸運を当てにしたような甘い計画は立てるべきではない。
 第4章でも述べたことだが、そもそも長期計画というものは、何かの場合の危険率を見込み、内輪に抑えておくべきものなのだ。ある程度低めに抑えた計画を立て、実行に移した段階で計画以上の結果が出たら、それこそ儲けものというのが、実務家としての社長が考えるべき計画であり、経営の鉄則なのだ。
 そうでなくても、これからは売上の伸びも利益の伸びもあまり期待できない時代に入ると覚悟すべきだ。
 したがって、今後5年間の売上総利益率を予測する場合も、付加価値率は若干下がる傾向にあるということを考慮に入れ、その伸び率をやや低めに抑えて想定したほうがいい。それが経営の定石というものであり、今では大方の了解事項なのではなかろうか。
 もちろん、だからといって伸び率を抑えすぎ、付加価値率をどんどん下げていったら、今度は会社の経営が成り立たなくなってしまう。社長としては、多少のジレンマを感じつつ、過去の数字と相談しながら、伸び率の低下を最小限度に抑えるよう工夫しなければならないだろう。
 こうして想定された売上総利益率(付加価値率)を、運営基本計画の該当欄に記入していく。売上高と売上総利益率さえ決まれば、売上総利益の算出は簡単だ。売上総利益率を、先に算出した売上高に掛ければ、売上総利益が出る。そこで各年度ごとに売上総利益を弾き出し、これを項目欄に書き入れていく。

セキやんコメント:  一倉流では、商品分析マトリックスにおいて「昨日の商品」「今日の商品」「明日の商品」と分類し、商品・サービスは時間とともに必ず陳腐化・斜陽化すると説明している。商品のライフサイクルを持ち出すまでもなく、時間とともに商品の収益性が低下するのは、経営の定石である。

「経営の腑」第155号<通算470号>(2015年11月20日)

 各科目の絶対額を算出する  佐藤誠一著「野望と先見の社長学」(1994年刊)より
 次に、付加価値配分目標計画に書き入れた配分比率を転記する。
 そして売上総利益に配分比率を掛けると、自動的に各科目の絶対額が算出できることになる。それらの数値を運営基本計画の該当科目欄にすべて転記していく。
 たとえば5年度の売上総利益が10億円で、人件費への配分比率が35%であれば、10億円×0.35=3億5千万円がその年度の人件費であるというように、自動的に算出されていく。
 ここではじめて、社長の配分のポリシーが具体的な金額となるのだ。
 この3億5千万円という人件費は、現状から5年後には多分これくらいになるだろうといった、あやふやな判断から弾き出された金額ではない。社員への配分を35%にするという、配分に対する社長のポリシーが先にあり、その基本方針から結果として3億5千万円という金額が導き出されてきた。これが大事なのである。
 付加価値配分の過去3年間の比率は、損益計算書から拾い上げた。その数字をにらみながら今後5年間の配分比率を決め、付加価値配分目標計画を立てた。そこに書き入れられた今後5年間の配分比率を、今度は損益計算書の項目を並べてつくった運営基本計画の表に落とし込んでいく。
 ご面倒でも、もう一度第五図(PDF形式)をご覧いただきたい。最初は、この図の矢印の方向を、図の矢印のように左から右へ向けて過去3年間の数字を書き入れてきた。今度は矢印の方向を逆に右から左へ向けて今後5年間の数字を落とし込んでいく。こうすることで、配分に対する社長のポリシーが確実に投影された運営基本計画ができていくのだということを、ここで改めてご確認いただきたい。
 要するに、社長のポリシー、ビジョンを最初に明確に打ち出すことが重要なのだ。一つひとつの数字は、最終的に決定した数字と比べれば、まだラフであるかもしれないし、おぼろげであるかもしれない。それでいいのである。だが、数字の一つひとつはたとえまだラフであっても、すべての数字にわたって自分のポリシーが反映されているということが重要なのである。ラフでもいいから、付加価値造成にかかわる科目の配分に一つも落ちがない。これが大事なのだ。
 ところで配分比率を転記していくうえで一つだけ問題なのは、社会配分である。社会配分とは、いうまでもなく税金への配分だが、税金には事業税のように経費として認められる税金と、地方税や法人税のように益金から支払う税金の二種類がある。したがって、これを転記するときは、事業性引当の欄と納税充当金の欄の二つに分けて記入しなければならないわけだが、問題はその分け方だ。
 もちろん、これには方法がある。各都道府県によって税率が若干異なっているので、一概にはいえないのだが、大体全国を平均してみた場合、税金の合計を100%とすると、事業税がほぼ20〜25%、地方税と法人税でほぼ75〜80%となっている。したがって、二種類の税金をその比率で分ければ、おおむね間違いはない。つまり、仮に社会配分が10%だとしたら、そのうちの20%、すなわち2%を事業税に、残りの8%を納税充当金に回し、その数字をそれぞれの項目欄に借りに書き入れていくのである。

セキやんコメント:  社長のポリシー・ビジョンを明確に打ち出すことの大事さを繰り返し述べている。そして、それを具体的な数字に落とし込む手順について丁寧に説明している。ここは、じっくり理解したいところだ。

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